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薔薇の咲いた日 徒然に

映画の開演前 携帯が震える

“11:00前には 電話入れます“
映画が終わったのは 11:00を
遥かに過ぎていた


電話口 大きな大きな声が聞こえる
”昼から 遊びに 寄ろうと思うけど 居る?“

“居ますよ どうぞ”

と言っても 指定の時間までには
一時間ほどしかない.....

座敷を片付け 茶器を見繕い
茶葉を 選ぶ....
煎茶 抹茶 珈琲....

しばらくしたら 白のオープンカーが
やって来た。
“どうも どうも お久しぶり”
大きな大きな 懐かしい声だった。

“へー ほー へー ほー”
目の前の 車達のカバーを開けると
目が点になる
根っから車好きなんだなって

“せっかくの絶好な オープン日和
ドライブに 行きましょう”

年に数日も無い 心地よい秋の青空

久々に車庫から出た車も 喜び 大きな屋根を
トランクに畳み込む

“さあ どうぞ”

直線の田舎道 
アクセルを 思い切って踏み込む
エンジン回転計は 赤いゾーンの手前

“F1みたいな 音色でしょ“

ピラーを握りしめた手に力が入っているようで….

アクセルを緩める



”天気良いから オープンテラスで
お茶をしましょ“

川を眺めるオープンテラス
テラスに 大きな大きな声が響く

“日本一の 会社創りたいから
手伝ってくれないか” そう言われた
25年ほど前...
いくつも いくつも扉を開けないと
辿りつかない 部屋に座っていた人。

“面白かったなー”

“面白かったですねー”

日本中を飛び回っていた頃の 
話が飛び交う

田舎の会社は いつしか 
日本中で 至る所で名前を聞く会社に育っていた

お互い 今だから言える話を
いっぱいいっぱいした。

今 
肩書きの無いおっさん二人
ニコニコしながら ケーキセットを
食べている。

“今から 我が家に家に寄ってよ”

“トンネル経由で”

空を見上げながら
田舎道をのんびり走る。
これが また気持ち良い

“F1みたいな 音色でしょ“
トンネルの中 機嫌良く 音色奏でる
エンジンは 20年も年を重ねている

一面の茶畑
その中に立つ洋館に 案内された

“どうぞ どうぞ.....”

平安な暮らしをする縄文人
浦島太郎な浮世雲

赤と白 美しいなって

“こんな日が来るなんて”


お茶の神さまに呼ばれて
真っ赤な 薔薇の咲いた日の徒然

続く….



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