玉手箱を開けない浦島太郎 浮世雲の呟き
朝目覚めれて
凍える朝
季節は秋から冬へ
“持久力を試したいから
渋滞の中通勤をして来てください”
真顔で言われる
田舎から都会への一時間半の大渋滞
耐えれないのは わかっている
“疲れると動けなくなるから”....と
呟くも...
あさぼらけの頃 家を出る
三年三か月ぶりに 職場へ向かう朝
いつもの神社
神殿にて大祝詞を奏上して
ギランバレーに恋をして
スパルタリハビリを重ねながら
三年三か月も田舎で静かに静かに暮らしていた
新しい扉を開く朝
目の前の景色は 全く変わっている事を夢見ていた.....
え? え?
全く何も変わって居ない....
皆が呟く
“疲れた 疲れた
お前が居なくなってから大変だったと”
“それは大変でしたね”
皆は 不調を訴える
不満も嫌味も乗せて....
あれあれ?
なんだか浦島太郎のストーリーと違う
“三年三か月大変だったねー”とは
聞こえては来ない
動かぬ顔を眺め
“お前 やっぱりおかしいな”
指差し🫵
“お前 邪魔”と....は言われるが...
想定内
“五回も死にましたからね”
と呟くと 誰も何も言わない
長年連れ添っているギャラリーの招待状
デスクマットに挟む
名刺を一枚取り出して その下に重ねる
“我を視ているようで”
データや資料 全てが詰まっていた
パソコンは処分されて無くなっていた
やっぱりな....
“立てない歩けない寝たきり
手も動かずまともに
水も呑めない
話も出来ない”
何度か死んだと......
そんな人が 戻って来るなんて
誰も思わず....,
想定外だったと
三年三か月 誰とも関わる事は無かった
“だから 自ら戻って来たんだと”
此処に戻って来るために
スパルタリハビリを重ねて
来ましたと...
産業医に呟く....
前例が無いと....困った顔をされる
先ずは 通勤に耐えれるか?
次は......
次は.......
少しずつ ステージは上がって行く
渋滞を避ける為 土日休日の出勤を
願い出る
平日の五日間
渋滞の中 通勤して来る事....
........
土日を挟み五日連続勤務
久し振りの休日
三年三か月寝太郎だったから
超絶スパルタ勤務であっても
ギランバレーの序章にも満たない
ぼちぼちやって行こう...
朝目覚めれて
御軸を眺めて呟く
季節は 秋から冬へ
久々に 漁場を覗く
瀬張り漁の網は 無くなっていた
家に戻り いくつもの網達を眺め
水が出るのを今しばらく待とうかと...
片付けるのはやめた
玉手箱を開けない浦島太郎
日常と非日常の狭間で
生かされている
それでいい
ギランバレーに恋をして
浮世雲拝