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50m走に挑む君へ
今日は、君にとって、初めての小学校の運動会だ。
開催できてよかったね。先生たちに心から感謝しよう。
ただ、今年は規模を縮小し、現地で応援できるのは、家族で1名だけとなった。
だから、僕は、今日、遠く離れたこの場所から、君にエールを送ろう。
*****
「50m走」
この種目に、ひそかに燃やしてきた君の闘志を、僕は知っている。
積み重ねてきた日々を知っている。
はじまりは、君が大好きな作家さんの「じょうずになろう はしること」という本を、たまたま図書館で見つけたときだった。
君は、その本を毎日繰り返し読んでいた。
そして、本に書いてあった走り方を試すべく、公園で、自発的に走る練習をしてきた。
すべては、今日、勝つためだったんだね。君が、人知れず走ってきた日々を僕は知っている。
僕が君に言いたいことは、ただ1つ。
『駆け抜けろ!』
それだけだ。
*****
スタートラインに立ったとき、君は緊張するだろう。手足が震えるだろう。
これまでの日々の想いがあるから、当然の感情だ。
自分が積み重ねてきたことを信じるしかない。
君が自分で考えた独特のスタートのポーズ。
両手のこぶしを力強くにぎり、腕をまっすぐに伸ばして左右に広げる。
片足を大きく前に出し、斜めに構えて腰をかがめる。
かっこいいと思う。僕は尊重する。
*****
目の前には、君がこれから走る道がある。
ひとすじのまっすぐな道がある。
50m先にゴールテープが見える。
簡単な一本道だ。
ただし、いいか、ゴールテープを見るんじゃないぞ。
ゴールのその先を見つめるんだ。
隣は見るな。
ライバルは気にするな。
ゴールのその先だけを見つめて、ただ一心に走るんだ。
スタートはフェアに行け。
ズルして勝っても価値はない。
ピストルが鳴れば、あとは全力だ。
力を振り絞れ。これまでの想いを込めろ。
すべてをぶつけて夢中で走れ。
決して、ゴールの手前であゆみを止めるな。
テープを切る瞬間までスピードを緩めるな。
全力を出し切れれば、もう、それだけでいい。
大丈夫、君ならできる。
いざ、この瞬間にすべてを賭けよう。
*****
さあ、行け!行ってこい!!
ゴールテープを
「駆け抜けろ!!!」
いいなと思ったら応援しよう!
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