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1人でずっと小さな旅

NHKの「小さな旅」のテーマ曲。あの曲を聴くと、切ないような何とも言えない気持ちになるのは僕だけでしょうか。

子どものときからふとしたときに聞こえてきて、心の中に染み入っている曲だからかもしれません。

不思議です。

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帰り道。電車の中で座りながら、正面の窓の外を眺めていました。既に日は暮れていて、空は暗くなっていました。暗い空の手前には、過ぎ去っていく街路樹のシルエットだけがはっきりと見えました。

なぜか、脳内に「小さな旅」のテーマ曲が鳴りました。ぐるぐるぐるぐるループします。テーマ曲を心の中で口ずさみながら、過ぎ去っていく街路樹と暗い空を見つめました。

目を閉じると、夕暮れの里山の風景が浮かび上がってきました。段々畑と未舗装の道。等間隔に並ぶ電信柱と垂れ下がる電線。山々に囲まれ、空に浮かぶ雲は夕陽色に染まっていく。

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乗換駅に到着し、電車を降りて、エスカレータを上がると、駅ナカが賑わい混雑していました。

歩く通路は明るく照らされ、惣菜屋や焼き菓子屋が並んでいる。ところどころにクリスマスツリーが飾られ、イルミネーションが光っている。

さっきまでの里山とは真逆の世界。

雑踏の音が気にならないくらいの音量で、マライア・キャリーのクリスマスソングが流れていました。

そのリズムは、目の前のキラキラ光る景色に、とってもフィットしていました。

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僕は、ふと思い立って、通路の端に立ち止まり、ビジネスリュックのポケットからワイヤレスイヤフォンを取り出して、両耳に差し込みました。

絶対にこの景色に似合わないだろうなと思いつつ、スマホで「小さな旅 テーマ曲」と検索し、ヒットしたyoutubeの適当なサムネイルをクリックしました。

あの曲のイントロが流れ出しました。

スマホの画面から顔を上げると、なぜかさっきまで見ていた駅ナカの都会的な景色ではなく、行き交う人々に目が留まりました。

帰宅するサラリーマン、スマホをいじっている女性、大学生とおぼしきカップル。

みんなそれぞれにきっといろいろなドラマがあるんだろうなあと、なぜか、そんなことを想像しました。

そのリズムは、目の前を行き交う人々に、とってもフィットしていました。

不思議です。

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そういえば、里山の風景というのは、その土地に暮らす人々がつくりだしたものです。人々の息づかいを感じるからこそ、あの気持ちを呼び起こす風景になる。

「小さな旅」という番組も、よく考えれば、生きる人々にフォーカスしたものです。ということは、長年の間に気がつかぬうちに、テーマ曲のみならず、番組ごと、僕の心の中に刷り込まれていたようです。

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電車を乗り換えて、スマホの曲をクリスマスソングのプレイリストに変えました。

アップテンポな赤鼻のトナカイがはじまりました。

車内では、今日はずっと窓の外を見ていたのですが、なぜか、人々に意識が向きました。

帰宅するサラリーマン、スマホをいじっている女性、大学生とおぼしきカップル。

みんながうわついて見えました。楽しそうに見えました。

不思議です。

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帰宅して、このnoteを書いていたら、また「小さな旅」のテーマ曲が脳内にループし始めました。

しばらく旅は続きそうです。











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原井浮世
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