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秋陽

家の近くの公園の広場に、ひときわ大きな1本の木があります。

もう、すっかり秋めいて、その木の葉っぱも色づいていました。

風が吹くと、まるで桜の花びらが舞うように、色づいた葉っぱたちは、秋風に乗って散っていきました。

*****

公園で遊んでいると、その大きな木の梢に、キラキラと光るものが見えました。近づいて見上げてみると、1枚の葉っぱでした。かろうじて枝にぶら下がって、落ちそうで落ちない1枚の葉っぱでした。

その葉っぱは、風が吹くたびに、くるくるくるくるとまわります。

そして、くるくるとまわるたびに、太陽の光が反射して、キラキラ光って見えました。

今にも落ちそうな葉っぱ。その1枚だけが光って見えていたんです。

*****

「何を見ているの?」

と、公園の子どもたちが集まってきました。

僕は1枚の葉っぱを指さしました。くるくるまわっています。キラキラ光っています。

風が吹いてもまわるだけ。強く吹いても落ちません。

「不思議だね。おもしろいね。」

しばらくみんなで眺めました。

*****

いつのまにか、1枚の葉っぱを見るのはやめて、風に乗ってひらひらと舞い落ちる枯れ葉たちを、空中でキャッチする遊びになりました。

僕はカッコいいところを見せてやろうと、ジャンピングキャッチを試みましたが、予測不能な枯れ葉の動きに、見事に翻弄されました。

さんざん遊んで僕はなお、あの1枚の葉っぱのことが気になったけれど、今を生きる彼らにとっては、それは遠い過去のことのようです。

もう、1枚の葉っぱのことなんてどこ吹く風で、次はサッカーをやろうということになりました。

*****

それでもやっぱり僕はなお、あの1枚の葉っぱのことが気になって、わざわざ葉っぱが見える位置まで戻ってみたら、葉っぱはまだ落っこちずに、くるくるキラキラとまわり続けていました。

(まだ、落ちずにまわっているよ!)と、彼らに言おうとしたけれど、既にサッカーは始まっていたし、彼らにとってはあの瞬間、くるくるキラキラがおもしろかっただけのこと。葉っぱがこの先落ちようが落ちまいが、そのことをわざわざ彼らに言うのはやめました。

高く蹴り上がった、逆光のボールに向かって走ってゆく子どもたちを、僕は慌てて追いかけました。

(先に行かないでくれよ。今度こそは、カッコよく、シュートを決めるからさ。)






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原井浮世
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