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この夏のキャンプは雨でした

朝から降り続いた雨は、森の中のキャンプ場に着いても、止むことはありませんでした。

恐れていた夏の暑さは和らぎましたが、森の木と土から立ちこめる湿気に全身が覆われました。

幸いなことに、夜のバーベキューは決行できました。

吹き込む雨で、薪(たきぎ)の炎が消えることはありませんでした。


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すっかり暗くなってから、辺りを見渡すと、至るところにランタンが灯っていました。

それらたくさんの光たちは、何ものかに反射して、ゆらいでいました。

光を反射させたものが、木の葉に滴る雨粒なのか、土壌にできた水たまりなのかは、暗がりの中ではわかりませんでした。

ただ、森の景色は、幻想的でした。



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夜が深まるにつれ、雨足が強くなってきました。

テントの中で、ランタンを消し、横になって目を閉じていると、テントを打ち付ける雨粒の音が徐々に大きく重くなっていくのがわかりました。

いつの間にか眠っていたようです。



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夜更け頃、あまりの騒々しさに目が覚めました。

これは間違いなく「ひぐらし」の鳴き声です。まるですぐそこに幾千もの「ひぐらし」がいるようです。

雨は変わらず強く降っていますが、その雨音をかき消すほどの声量で、ひぐらしの大集団が、わめき散らしています。

しばらくすると、ホトトギスでしょうか。やはり甲高い声で叫び始めました。

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打ち付ける豪雨の中、彼らが必死に何かを訴えているようにしか聞こえません。

もはや、ここには、夏のホトトギス、秋のひぐらしから感じる「はかなさ」なんて、微塵も存在しない。

むしろ感じるのは、この豪雨の真夜中に、生きとし生けるものの凄まじい生命力です。

それは、全てを受け入れるようなやわらかいものとは真逆の感覚。

近づくことさえ憚れるような、見えない炎と対峙しているような感覚。

しかし、雨粒をしのぐ幻想の空間にいると、決して触れることのできない恐ろしさと同時に、見えない炎に向き合う勇気の在処(ありか)を教えてもらっているような気がするのです。



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この様子だと、明朝も雨でしょう。

どうぞ、それで構わない。

目が覚めて、テントの扉を開けたとき、
たとえ昨日と同じ場所でも、違う景色が見えることを知っていますから。





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原井浮世
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