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一日一頁:中畑正志『アリストテレスの哲学』岩波新書、2023年。

読み進めている。

アリストテレスの倫理学(と連続する政治学)は新みのない保守的なものという印象はイメージでしか過ぎない。現実への沈潜こそ革新の出発点となりえる。

時間がなくても1日1頁でも読まないことには進まない。

 アリストテレスの知的営みは、全体としてみれば、それ自体が革新的であった。彼は、すでに述べたように、哲学だけでなく人間の知の歴史に大きな変革をもたらしたのである。この試みは、受け入れられている見方を手がかりに考察するという知の行程の一般的枠組みにもとづくものだった。しかし、受容された見解から考察を始めることは、それに裏書きを与えることであることではない。到達する結論がその出発点と一致することも、またその結論が受容しやすいものであることも、何も保証されていないからだ。アリストテレスも「探究の出発点はある意味でその終着点とは相反する関係にある」と語っている。
 そもそも、手がかりとすべき受容された見解や情報も。実はあらためてそれを明確なかたちで記述し、相互につきあわせるなら、しばしばその自明性は失われ、むしろ当惑や驚きを生み出す。

中畑正志『アリストテレスの哲学』岩波新書、2023年、88-89頁。

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氏家 法雄 ujike.norio
氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。