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一日一頁:三木清『読書と人生』新潮文庫、昭和四十九年。
「ローマは一日にしては成らず」あるいは「もののふの 矢橋の舟は 速けれど 急がば回れ 瀬田の長橋」とはこのこと。
身体に染み込ませていくしかない。
時間がなくても1日1頁でも読みないことには進まない。
先ず大切なことは読書の習慣を作るということである。他の場合と同じように、ここでも習慣が必要である。ひとは、単に義務からのみ、或いは単に興味からのみ、読書し得るものではない、習慣が実に多くのことを為すのである。そして他のことについてと同じように、読書の習慣も早くから養わねばならぬ。学生の時代に読書の習慣を作らなかった者は恐らく生涯読書の面白さを理解しないで終るであろう。
読書の習慣を養うには関暇を見出すことに努めなければならぬ。そして人生において閑暇は見出そうとさえすれば何処にでもあるものだ。朝出掛ける前の半時間、夜眠る前の一時間、読書のための時間を作ろうと思えば何時でもできる。現代の生活はたしかに忙しくなっている。終日妨げられないで読書することのできた昔の人は羨望に値するであろう。しかし如何に忙しい人も自分の好きなことのためには関暇を作ることを知っている。
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