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一日一頁:斉藤幸平『100分de名著 カール・マルクス資本論』NHK出版、2021年。

サンデルの「それをお金で買いますか」と交差する話。格差の拡大や気候変動危機に注目したマルクス最晩年の思想を精緻に参照することで「社会の矛盾を突破し、共に明日を生きるために」なにができるのか提案する「実践の書」。

時間がなくても1日1頁でも読みないことには進まない。

 マルクスが目指した豊かさは、個人資産の額やGDPで計れるようなものではありません。GDPだけを重視する経済から脱却して、人間と自然を重視し、人々の必要を満たす規模を定常するという意味で、私はこれを「脱成長」型経済と呼んでいます。
 難しそうに聞こえるかもしれませんが、コモンを基礎とする社会の原理は、資本主義社会の下でも常にはたらいています。友達の引っ越しを手伝うような損得を抜きにした助け合いも、その一つです。子どもに食事を与えた保護者がその代金を子どもに請求したりしません。そうした実践を友人や家族に限定する必然性はないのです。
 マルクスは、プロレタリアート(労働者階級)のために「資本論」を書きました。プロレタリアートというと、工場労働者をイメージする人も多いと思いますけれども、資本主義のもとで負の影響を受けている人はみな、ある意味でプロレタリアートです。

斉藤幸平『100分de名著 カール・マルクス資本論』NHK出版、2021年、119頁。

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氏家 法雄 ujike.norio
氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。

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