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一日一頁:長田弘『読書のデモクラシー』岩波書店、1992年。
書評でもエッセイでもない「備忘録」との出会いに図書館に感謝したい。
図書館には思いもよらぬ蔵書が秘められている。その宝探しが図書館通いの醍醐味だ。しかしながらその先が大事。すなわち一書を通して「コモンプレイス・ブックス」に仕立て上げ他者と共有することができるのかどうか。
それは読みの手の責任である。その責任がデモクラシーを不断に育んでいく。
本は、場所だとおもう。人と人のあいだにひらかれる共通の場所だ。みずからすすんで共通の場所をわけもつ経験がデモクラシーなら、デモクラシーが悦びであるのが読書だ。その読書のデモクラシーをささえるのは、読むこと、聞くこと、考えることの三つだ。読むこと、聞くこと、考えることをこころの鼎として、言葉がそこでそだつ共通の場所の記憶を、深くたもつようにしたい。
『読書のデモクラシー』は備忘録(コモンプレイス・ブツク)として書かれた。記憶にきざまれている言葉をいま、ここに引用して、二十世紀という時代の生きた文脈を、これからにむけて確かめなおすこと。引用とは、言葉のなかに、保守する力ではなく、浄化する力をみいだすことだ。思想家のヴァルター・ベンヤミンはそういったが、しかり、現在を浄化する力をもつ言葉をみいだすことができなければ、思考する悦びはないだろう。
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