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一日一頁:牧野富太郎『植物知識』講談社学術文庫、1981年。

読み終えた。

「たかが◯◯、されど◯◯」という言い方があるが、よく知っていると思い込んでいるものほど、実はよく知らなかったりする。

時間がなくても1日1頁でも読まないことには進まない。

 ミカンすなわち蜜柑は、食用果実として名高く且つ最もふつうのものであるが、世人はそのミカンの実のいずれの部分を味わっているのか知らぬ人が多いのであろう。そしてそのミカンは、その毛の中の汁を味わっている、と聞かされるとみな驚いてしまうだろうが、実際はそうであるからおもしろい。もし万一ミカンの実の中に毛が生えなかったならば、ミカンは食えぬ果実としてだれもそれを一顧もしなかったであろうが、幸いにも果中に毛が生えたばっかりに、ここに上等果実として食用果実界に君臨しているのである。

牧野富太郎『植物知識』講談社学術文庫、1981年、88頁。

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氏家 法雄 ujike.norio
氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。