あんときのフィルムカメラ 井上理津子『絶滅危惧個人商店』筑摩書房 + Nicca 3-F + NIKKOR-H・C 5cm F2
久しぶりにいい本に出会った
仕事柄、書物にはよく親しむ方ですが、「ひさしぶりにいい本に出会った」!
量販店やコンビニの拡大に圧されて、いつの間にか個人商店が次々と消えていったのがこの数十年の動向で、そんな光景に寂しさを抱いた著者が「個人商店が『絶滅の危機に瀕している』という思いに駆られたこと」をきっかけに本書の企画が始まったといいます。
東京を中心に「営業歴が長そうで、なんだか味があり、街に溶け込んでいると推察する個人商店」十九店を取材し、その様子を軽妙な語り口で綴った「いい本」で、中村章伯氏の描くイラストが立体的にその情景を浮かび上がらせてくれます。
確かにスーパーやチェーン店は便利ですが、「この文房具屋さんのような心意気」は「量販店やコンビニではこうはゆくまい」。
たかがカレー肉、されどカレー肉。
先の文房具屋さんにみられるように個人商店には、地域に根ざした専門店として、そして長年その地域で営業を続けている強みを本書はありありと伝えてくれます。
たとえばカレーに使うお肉ひとつとってもそう。「たかがカレー肉、されどカレー肉。見上げたものだ」という経験や知識に裏打ちされたアドバイスは一朝一夕に出来るものではないですよね。
細やかな相談にも親身になって応えてくれることは量販店やスーパーにはできない一種の職人芸のようなもので、この明りを灯す人たちを地域でまもっていくことが持続可能な社会を作っていくことに繋がるのではないか、などと本書を読みながら考えたりもしました。
さて、そんな本書を紐解きながら、今回使用したのは、ニッカカメラのnicca 3-F+NIKKOR-H・C 5cm F2 という組み合わせ。いわゆるバルナックライカの国産コピーで、発売当時の本体・レンズの純正の組み合わせというものです。
バルナックライカは僕にとって最も身近なカメラなんですが、今回は、お恥ずかしいことに、撮影し終えたフィルム巻き上げを途中で失敗しまして(涙 三分の二程度、駄目になっちゃいました。
僕も職人としては「マダマダですね」。
30年ぶりの邂逅
カメラとの付き合いは、小学生の時に、叔父さんから頂いたキヤノンのCanonet G-III 17から始まりましたので、どうしても僕にとっては、レンジファインダーカメラがデフォルトになってしまいます。
長じて大学生になってから再びカメラ熱が湧き、たぶん、それは1992年ぐらいの雑誌『サライ』(小学館)でバルナックライカの特集がされてい、その出会いで瞠目して、新宿駅近郊のラッキーカメラなどなどを渡り歩き、ライカIIIfとエルマー50mmf3.5を買い求めたのが、自覚的な趣味としてのカメラの始まりではなかったかと記憶しております。
IIIfとの出会いで、ほぼほぼライカ、コンタックスのカメラを手にしましたが、最初のバルナックライカとの出会いの時から、気になっていたのが、実は、国産のライカコピーカメラでした。
当時IIIfの本体は程度にもよるのですが、5万円前後ではなかったかと思いますが、2-3万円で並んでいたのが、niccaやLeotaxといったカメラだったように記憶していますが、leicaという書体とほぼ同じ書体でniccaと刻印されたniccaカメラに興味がそそられ、まあ、コピーライカだから、まあ、そのうちに使ってみようかと先延ばし先延ばししてなかなか出会うことがなかったカメラでもありました。
ちなみに、1990年代初頭の当時はロシアのコピーライカはそうそう流通していなかったように覚えています。
さて、興味がありながらも、なかなか邂逅することのなかったniccaカメラですが、先日といっても2021年の10月にヤフオクにてnikkorレンズ付きで1万円弱で出品されていましたので、
「買わない手はない」
などと思い、ポチッとな。
半月あまり使用して、最後にフィルム巻き上げに失敗するという情けないことになりましたが、使用感は非常に快適でグッド。シャッタースピードが大陸系列だったのにちょっと慣れが必要でしたが、キレの良いニッコールレンズとの組み合わせは最強ですね。
グッタペルカもライカに劣らない上品なものでした。
ちょっと今回はピンぼけと露出ミスも多いので、この組み合わせでもう一度撮影する他ありませんね。ぎゃふん。
以下、作例です。
撮影は2021年11月8日から11月21日にかけて。フィルムはKodakのネガフィルム「Pro Image 100(プロイメージ100)」を使用。香川県仲多度郡多度津町、三豊市、善通寺市、丸亀市で撮影しました。冬がそろそろと訪れようかという晩秋の讃岐路です。