あんときのデジカメ 深まりゆく讃岐の錦秋 with SONY Cyber-shot DSC-W5
(はじめに)僕のインスタグラムを見て、都市に住む知人は「田舎は風光明媚でいいですね」と素直に喜んでくれますが、そう単純なものでもないんですよね。そしてその逆もまた然り……。そんなことを考えながら、SONYらしくない無骨なカメラで深まりゆく秋の様子をスケッチしました。
錦秋の青い鳥
意外と言えば意外でしたが、今年の秋は冷え込みが厳しく、うだるような夏の暑さと対照的でした。
そのおかげでしょうか?
今年の紅葉は、昨年などと比べるとその色合いが一段と深まりのあるものです。寒暖の差の激しい晩秋から、朝晩の冷え込みの厳しい初春にかけてのロードバイクライフは過酷なものがあります。しかし、それでも山々が美しく錦秋するのを間近に感じることができるのは、その特権と呼んでもいいのではないかと考えています。
錦のように秋が深まっていくさまを「錦秋(きんしゅう)」と言いますが、『大辞林』(第三版)によると、それは「紅葉が錦(にしき)のように色鮮やかな秋」とのことです。
「錦」を『大辞林』でひいてみると「①種々の色糸を用いて華麗な模様を織り出した織物の総称。」とあり、「②色や模様の美しいもの。「紅葉の ─ 」「みわたせば柳桜をこきまぜて宮こぞ春の ─ なりける /古今 春上 」」とあります。
(出典)三省堂 辞書ウェブ編集部による ことばの壺
その様子を先日、SONYのコンパクトデジタルカメラでスケッチしてみました。
日本の何処にでも転がっているような身近な里山ですが、改めてカメラを構えてみると、実に見事なものです。
これは僕自身の世界認識の基本的な構えになりますが、永遠に繰り返される日常生活のなかには、振り返るべきことなど何も存在しないというのは大間違いで、実にその何も代わり映えのない暮らしの中にこそ、振り返られてしかるべき契機が潜んでいるのではないかということです。
メーテルリンクの『青い鳥』とでも言えばいいでしょうか……。
田舎はのんびりしていて風光明媚でいいのでしょうか?
しかし、メーテルリンクの青い鳥を生活のなかに見出そうと努力はしていますが、なかなか難しいものです。そしてどこに住んでいようとも青い鳥はその当地に住まうものですが、都内に住む知人からはよく「田舎はのんびりしていて風光明媚でいいですよね」と言われてしまいますと、
「ちょっと待ってよ」
と言いたくなってしまうのも事実です。
なぜなら、「そんなによいものでもない」というのは偽らざる事実だからです。便利と不便というモノサシで判断するわけではありませんが、田舎暮らしの人間が都会に憧れることが虚妄に過ぎないのと同じように、都会暮らしの人間が美化するほど「のんびりしていて風光明媚」というわけもありません。
そして僕の場合、田舎で暮らすことに対応したライフデザインを積み重ねてきませんでしたので、そこが暮らし辛い原因にもなっているようにも思えます。
ただ、都市部の人間が田舎を憧れ、あるいはその逆である事例に事欠かないことは非常に興味深い現象です。
私は思うのだが、人間には本来自然的なものから脱出したい欲望と、そこへ回帰したい矛盾した本能とが同時にそなわっていて、他の社会的な諸矛盾よりもはるかに奥深く、人間存在の中で、それが格闘しつづけているのではないだろうか。土から離れたがる心と、土にまみれたい、ほとんど官能的な思いと。
(出典)高橋和巳「自然への讃歌と挽歌」、高橋和巳『高橋和巳コレクション5 さわやかな朝がゆの味』河出文庫、1996年、197頁。
高橋和巳さんの指摘に従えば、それは、相反する矛盾を同時に抱えているのが人間ということになるのでしょう。
常用したくなる、SONYらしくない無骨なデザインの本格派デジカメ
今回、「あんときのデジカメ」として使用したのは、2005年に発売された SONYのCyber-shot DSC-W5 です。SONYのサイバーショットといえば、スタイリッシュなデザインのコンパクトデジタルカメラの代名詞といってよいのですが、今回使用したDSC-W5はそうしたラインナップとは異なるデザインであることにまず驚きます。
2005年から2010年にかけてのコンデジとは、小型化・薄型化が時代の潮流であったと記憶しますが、ぼってりと大きな本機は、SONYの伝統とも時代の潮流とも逆行するようなモデルのように感じてしまったからです。当時のフレコミとしては、フルオート撮影から凝った撮影技法へと移行したい中上級者向けの「持ち歩きカメラ」として設定さたとのことで、マニュアル撮影モードやコンバージョンレンズなど拡張性が採用され、普及型のコンデジと差別化が図られたそうです。たしかにボディは大きめですが、かえってホールディングがよく、腰を据えて撮影するにはぴったりのカメラではないかと思います。
では、簡単にスペックを紹介します。撮像素子は510万画素1/1.8インチCCDで、コンデジとしては大きめのセンサーを搭載し、入門機とは一線を画しています。レンズは、35mmフィルムカメラ換算で38mmからの光学3倍ズームで、望遠端の114mmではf5.2とやや暗めですが、使用感としては、不自由を感じることなく撮影できます。
カメラ軍艦部のシャッターボタン周囲のモードダイヤルで撮影モードを切り替え、背面部の十字ボタンとの組み合わせで設定変更するのですが、これが実に使いやすく、本体前面の突起のおかげで良好なホールド性が保たれています。全体として無骨な印象のデザインですが、撮影するための設計工学としては実にすぐれた合理性に貫かれたカメラというインプレッションになります。
面白いなあと思ったのは、専用の充電池ではなく、単3電池を電力として採用していることです。いわゆる電池採用のコンデジとは入門機に多いのですが、このアンバランスには少々驚きました。しかしながら、起動は高速かつバッテリーのもちは非常によく。確かにエントリークラスの入門機とは一線を画した中上級者向けのカメラであることが理解できます。
ということで以下作例です。丸一日、撮影しましたが、撮影しながら感じたことは、もう少し使い込んでみたいということです。撮影することが楽しく感じられたカメラは久しぶりで、近いうちに「あんときのデジカメ」で再登板するかも知れませんね。
拙い写真ですが、ご笑覧下さればと思います。
↑ 光学広角端38mmで撮影(A)。
↑ (A)を光学望遠端114mmで撮影。
↑ 光学望遠端38mmで撮影(B)。
↑ (B)を光学望遠端114mmで撮影。
↑ 強烈な逆光ですが、意外に耐性に強い優れたレンズです。
今回の撮影ポタリングの終着地は、うどんやの「たまや」さん(香川県善通寺市生野本町2-4-14)。てんぷらうどんをちょうだいしましたが、昔懐かしい素朴な讃岐うどんが僕は割と好きです。
ということで撮影データ。プログラム撮影、ISO100、ホワイトバランスオート、露出補正なし。画像は2,592×1,944で保存。撮影は11月30日。撮影場所は香川県善通寺市。