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一日一頁:ベンジャミン・クリッツァー『モヤモヤする正義 感情と理性の公共哲学』晶文社、2024年。
合理的に考えることが躓きの石になれば、感情はややもすると対立を助長してしまうモヤモヤに雲在するのは事実だからこそ、「あえていうなら、主観や感情を批判するならまずはその矛先を自分に向けることからはじめるべきだ」(529頁)に尽きるのよね。
「物事について客観的に把握することの大切さや合理的に考えることの大切さを繰り返し説いてきた。その一方で、自分自身の主観や感情を切り離して客観的・合理的になることの難しさも強調してきた」著者はそれでもなお次のようにまとめるが、然りである。
結局のところ、ここでも、わたしにできるのは良いかたちの公共性を最善の方法で発揮することだ。世界や国内で起こっている問題について、できるだけ事実を調べたりしっかりと考えたりしたうえで、自分がすべきだと思った発言をすること。また、リベラリズムや理性の価値、そして複雑な問題に取り組むための支えとなる哲学やその他の学問の価値を、粘り強く説き続けること。
世の中をより良くしたいという思いを持ちながら、他の人々の理性に訴え続ける営みは、いつか必ず実を結ぶはずだ。
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