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一日一頁:前田恭二編『関東大震災と流言 水島爾保布 発禁版体験記を読む』岩波書店、2023年。
読み終えた。
検閲発禁と歴史修正主義は地続きである。
時間がなくても1日1頁でも読まないことには進まない。
「車屋のカツさん」の言葉、「つまり何だ。朝鮮人が今に何かしやしめぇか、しやしめぇかって、さういふ事を年中腹に思つてビクビクしてゐた者があるとするね、それがこの際ビーンと来たんぢやあるめぇかと思うのさ」である。水島は関東大震災の経験を通じ、流言を生み、信じさせるのは、集団的な潜在心理にほかならないと痛感していたのである。
そうした潜在心理がある限り、いつどこであれ、流言は生まれると言えるかもしれない。近年は同質的な意見が増幅される情報環境が広がり、陰謀論などの温床となっている。局所的であれ、ふだんから極論が正当化されうる危うさがあり、そればかりか、まことしやかなAI生成画像まで流布するようになった。そこに災害などで社会が混乱に陥る事態が出来した場合、何が起こるのか。その意味でも「愚漫大人見聞録」の伝える流言は必ずしも昔話とは言えず、むしろ生々しい。
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