多度津町議会選挙関連 書評:中島岳志『自分ごとの政治学』NHK出版、2021年。
NHK出版の「学びのきほん」シリーズは、第一線の識者がそれぞれの分野をわかりやすく解説した入門書で、時々手に取り、自分自身の凝り固まった考え方をリフレッシュしたり、新しい知見を手に入れたりすることができたりもしますので、大いに活用しています。 若い方にぜひ、手にとってほしいシリーズです。
さて、こちらのブログでも書評を載せていこうと思い、執筆し始めましたが、まず第1回目は、気鋭の政治学者中島岳志さんの『自分ごとの政治学』(NHK出版)を選んでみました。
本書は、私達の生活全てに関わってくる政治について、最低限知っておくべき基礎知識を紹介しながら、政治が生活と無縁ではないこと、政治への関わり方と、よしあしを見極めるポイントを論じた、「政治参加」への最良の入門書です。
第1章、2章では、政治の前提となる、例えば、右派や左派といった基本的な政治用語や概念を解説し、左右対立が現代ではもはや有効ではない状況を紹介しています。
ここで興味深いのは、日本は税金の高い、公務員の多い大きな政府であるというイメージの過ちが紹介されていることです。OECDの他の諸国と比べれば、日本は「小さすぎる政府」でリスクの個人化の方向へ傾斜している現在社会は、「社会に穴が開いている」状態であると危惧されています。
では、是正などめぐってどのように政治参加していけばよいのでしょうか? 第3章では、政治を特別な営みと見ず、日常生活のなかに政治の芽があると見るマハトマ・ガンディーの実践が参照されています。塩の行進はその最良の事例であり、塩を作るという抵抗に日々の「歩く」という行為を接続させることで、毎日の実践のなかで政治の実践の芽を育んでいったそうです。
終章は、民主主義と立憲主義の問題です。前者は多数決でものごとを決める仕組みで著者はその主語を「生きている人」といい、後者はいくら多数決でこうしましょうといってもやってはいけないことがあると歯止めする憲法の立場です。「やってはいけない」と言うのは「死者たち」で、死者たちが積み重ねた失敗の末に導き出されてきた叡智といってよいでしょう。
「死者の存在を無視して、生きている人間だけで物事を決定しようとする。それは生者の驕りに過ぎません。民主主義は常に、死者によって制約された民主主義、立憲民主主義でなければならないのです」。
社会という空間軸、そして歴史という時間軸の交差するところに私たちは立っています。その立ち位置を自覚しながら、歴史を背負い未来を展望しながら、現在を生活の中から開拓していくことが「政治」なのかもしれませんね。
政治は自分に関係ないと諦めている方や若い人におすすめです。