『花散る里の病棟/帚木蓬生』を読んで
九州で4代続く町医者の野北家の物語でした。
明治時代の終わりから大正時代にかけての初代は蛔虫退治、戦時中の2代目はフィリピンで軍医をし復員後も医院を開院、3代目は医院に老健と特養を併設して高齢者医療、令和の4代目は肥満医療に取り組む中コロナ禍に。
それぞれ、その時代に求められる医療があり、使命感を持って真摯に取り組む姿に胸を打たれました。
野北家の医者は時代が違っても傲慢さなどはどこにもありません。患者に寄り添う姿勢が脈々と受け継がれてきたのでしょう。
ただ、戦地での安楽死をさせなければならない無念と隠された人口中絶の話しは壮絶で、こんなことがあったのかという驚きと共に胸が苦しくなりました。
医者としての顔だけではなくプライベートの顔ものぞかせていました。小学生の孫の運動会の場所取りに行ったり、その孫がコロナ禍の医者になって彼女とデートしたり。親近感!
また、この家の医者はどの時代でも皆んな俳句を読むのです。それも良いアクセントになっていました。