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僕らは「恋せぬふたり」に救われた
こんにちは、ゆげです。
先日ドラマ最終回を迎えた『恋せぬふたり』。大反響の本ドラマですが、これは僕らふたりにとっては、人生で外せないドラマとなりました。それもただ感動したとかそういう話ではなく、人生を変えてくれました、リアルに。
なぜ人生で外せないドラマになったのか、いったいどう変えてくれたのか、ドラマの紹介と合わせてお話します。
話題のドラマ「恋せぬふたり」
NHKにて放映されていたオリジナルドラマが「恋せぬふたり」です。
今をときめく俳優・岸井ゆきの×高橋一生 のW主演も注目されましたが、なにより注目されたのが「アセクシャル」をメインテーマで扱った日本で実質はじめてのドラマだからです。(アセクシャルについては↓の記事をご覧ください)
今までにないドラマということもあり、Twitter中心にネットでは毎話反響がすごくあり、盛り上がっていました。そして種々ネットニュースで記事になっていて、興味深く読んでいました。
では、どういった話なのか、簡単にご紹介します。
ドラマ「恋せぬふたり」あらすじ
―――恋愛しないと幸せじゃないの? 人を好きになったことが無い、なぜキスをするのか分からない、恋愛もセックスも分からずとまどってきた女性に訪れた、恋愛もセックスもしたくない男性との出会い。 恋人でも…夫婦でも…家族でもない? アロマンティック・アセクシュアルの2人が始めた同居生活は、両親、上司、元カレ、ご近所さんたちに波紋を広げていく…。 恋もセックスもしない2人の関係の行方は!?
『恋せぬふたり』とタイトルにあるよう、「恋愛をしない」「恋愛がわからない」ふたり兒玉 咲子(演・岸井ゆきの)と高橋 羽(演・高橋一生)のふたりが主人公のドラマです。
咲子はアロマンティック・アセクシャルの概念を知らず、同僚の恋愛話に違和感・不快感をもち、ネット検索を通じて、高橋のブログでその概念を知ります。そしてふとしたきっかけで、高橋と出会い、また不思議な縁で、一緒に住むことになります。
そこからの家族・友人・同僚の周囲とのバタバタが、描かれます。様々な考えの人とのやりとりを通じて、
「恋愛するってなに?」
「性交渉がないと、おかしい?」
「カゾクってなんだ?」
などの問いかけがあり、思わずしらず考えさせられます。性交渉や子どもの話など「単なる恋愛にまつわる云々」で終わらせないのがすごいです。
アロマンティック・アセクシャルを知らない、また当事者ではない人にとっても、必見のドラマになっています!
ではアロマンティック・アセクシャル、しかも主人公たちのようにアセク当事者二人が一緒に暮らす自分たち(ゆげともちょ)から見てどうだったのか。お伝えします。
アセク当事者が思う「恋せぬふたり」の3つのすごさ
※あくまで自分たちふたりの考えるすごさなので、アロマンティック・アセクシャルの人がみんなこう思うわけではありませんのであしからず。
1.アセクシャルの考証が非常にしっかりしている
ドラマを見て最初に思ったことは、引っかかるところがなかったことでした。
何事もそうですが、当事者がみると、ひっかかるところがないか見てしまうものです。安易に話題性のためにテーマを使ってないかなんて、かんぐってしまうわけですが(笑)、驚くくらい違和感がなく、共感しかありませんでした。
こういうこと言われるよね、こういうこと言ってしまう、行動してしまうよね、ということのオンパレードでした。
例えば、途中出てくる咲子の同僚である一くんとのやりとり。彼はアロマンティック・アセクシャルではない人なので、高橋に対して率直に聞くわけです、悪気なく。
*以下、一部性的な事柄について取り扱っています
カズくん「ついでに質問なんですけど……」
カズくん「咲子と一緒にいてムラっとこないんですか?」
高橋「そういう質問にはお答えしかねます。」
カズくん「そんな、隠さなくていいっすよ。男なら……」
高橋「最低ですね」
カズくん「で、さっきの質問はイエス?」
高橋「ノーでしょう」
カズくん「高橋さんってアレですか、アッチの方に問題が!?」
咲子「ちょっとカズくん、いい加減にして!」
このかんじめちゃくちゃあるあるなんですよね。コミュニケーションのすれ違いについては、こちらの記事でも書いてますので、未読のかたはぜひ。
ほかにも咲子と高橋が二人歩くとき、生活しているときの距離感がリアルなんですよね。つねに1メートルは離れています。アセクじゃない人からすると違和感ある距離だと思いますが、自分たちにとっては最適なんですよね。手が触れることを避けるシーンもありましたが、「それそれ!」と興奮しながら見てました(笑)
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それで番組最後の制作一覧をみていると、やはり考証がしっかり入っていました。このあたりは公式ブログにも詳細があって、感動しました。当事者や専門家の声が丁寧に反映されている様子がわかります。すばらしいですね。よければぜひ。
アセクかどうかのアンケートシートが出てきたときは、思わずやってしまいました。こういったところもより関心を高める工夫があっていいなと思います。
(こちらにあるアンケートシートは、皆にやってもらいたいし、一人ひとりどれだけ違うのかを知ってもらいたいですね)
2.反応のリアルさを最大限演出できている
2番目が1とも共通しますが、演出面表現面の話です。考証に基づいた正確なアセクへの理解はもちろんですが、それをどう表現するかはまた別問題です。
しかし、このドラマその点も見事にできています。
まず第一にあげられるのは、俳優がいい!これはシンプルです(笑)
私は映画「シン・ゴジラ」が好きで5回くらい見ていますが、中でもいい味を出しているのが、恋せぬふたりでも主演の高橋一生。もうすごすぎる。アセクであるがゆえの戸惑い、拒否といった反応がうますぎて、入り込んでしまいました。役名と同じということもあって、いろいろ考えた人は私だけではないはずです(笑)
そして咲子を演じられた岸井ゆきのさんもよかった。ほかにも……。大根役者がいると、スッと冷めてしまう自分ですが、その点は文句は一つもありませんでした。
その俳優さんの表情、目線、配置などが本当によく考えられているなと、毎話感動しきりでした。制作秘話が公開されていてそのこだわりも明らかになっています。目や表情の変化は特に印象的でしたが、それも演出側で意図されていたものとわかります。
ほかにも色、音、比喩などなど、五感に訴えかける、巧みな表現が多く、引き込まれていきました。そしてアセクに寄り添った心情表現で、安心してみることができました。いかに巧みであっても、傷つけるような表現であればとても見れませんからね。。
3.落とし所がうまい
先日最終話も見終わり、感動しきりでした。結末は大満足!詳しいことはネタバレになるので言えませんが、当事者にとってもとても納得感あるものでした。
種々のアセクにまつわること、友人や家族・恋人(元も)などなど様々な関係性の課題を出しながら、うまく整理された形で着地したなあと思います。(偉そうですが)
最後もそうなんですが、いいなあと思ったのはキャラクターの好感度が全体的に高いんですよね。主人公ふたりが好きになるのはもちろんなんですが、それをとりまくキャラクター誰かしらにはヘイトがいきそうなものです。しかしそういった人はほとんどありませんでした。
さきほどの例にあげたカズくんなんかは、最初はだいぶKYで「近くにいてほしくないわあ」と思っていましたが、ドラマ最後ではだいぶ好きになって、むしろ出てきてほしいくらいでした(笑)
アセク説明のため人に紹介するのに最適すぎる
ほかにもよいところはたくさんありますが、とにかく「アセクってなに?」「どんな苦労をしているの?」ということを説明するに、最高のドラマであることには違いありません。ほかに本当にありません。
自分も両親や兄弟に話をするときに、非常に苦しみました。どう説明しても理解されないんじゃないかという恐怖。
そして一番想像できたのが、それに対して自分が感情的になってしまうこと。そうすれば説明することもままなりません。
普段割と冷静なタイプなんですが、自分のセクシャリティについては人は繊細です。そこを否定されると、どんな人間も感情的になってしまうと思います。
そういう恐れをもっていたなかで、このドラマの存在を知ったわけです。
自分で話をする前に、まずこれを見てくれないかとドラマをすすめたことで、その後の話はスムーズだったと思います。
こちらもドラマを見るなかで、イメージができたので、その点もよかったですね。
今後も最強の”武器”として活用していきたいと思います!
まとめ:万人に見てほしいドラマ
ということで、「恋せぬふたり」全体のいいところをご紹介しました。全然語りきれないので、1話1話また紹介できればいいなと思ってます。
アセク当事者の人にとっては、自身のためにと、周りの人に紹介しやすい”武器”として、見ておくべきドラマです。それは心から勧めたいものです。
そしてアセクではない人にとっても、見ていただきたいものです。それはアセクということを知ってほしいということもありますが、それ以上に「家族とはなにか」「恋人とはなにか」こんなに考えさせられるドラマもないからです。
このドラマを通じて、幸せなカゾクのカタチを、一人ひとりが考えられればいいなと心より思います。
また再放送もあると思いますが、すぐ見たいという人はNHKオンデマンドから見ることができます。ぜひご覧ください。
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