夜勤中、死んだ父に再会する
10分だけなら持ち場を離れて大丈夫だからと私は伝えていた
その相手は死んだはずの父だった
疲れたわたしを見かねて、何か買ってあげるよという感じだったと思う
そこは良いオフィスビル1階(しかも吹き抜けの)にありそうなコンビニというのだろうかすごく混み合っていて並んでたら優に10分は超えてしまうような賑わいを見せていた
父は何も買えそうにないことを残念そうにしていたが私はあと少しで退勤だから大丈夫だよと伝えたような気がする
「パパ仕事は?」
気になって聞いてみた、似たような職種の父はシフトみたいなものを見せてくれて次が最後の週休なんだよみたいな話をしてた、退職するのだろうか雰囲気も顔も夢の中でだからかもう会えなくなってから時間が経つからかぼんやりしていたけれどあの時よりもかなり時間が経っているような雰囲気だった
となるとやっと定年退職できるのかなとぼんやり思ってなんだかホッとした自分がいた
(実際のところ定年退職よりも前に亡くなったが、私のために65を過ぎるくらいまでは働くようなことを生前話していた)
じゃあまた後で頑張ってねといった感じで1度別れたが私はすぐに追いかけて力強くハグをした
この4月から新社会人となった私が夢見ていた、私も父も働いているという叶えられなかった姿がそこにあった
その日に会ったことを家族に話すことが小さな頃からの習慣なので、学校ではなく遂に職場での話が出来ることをとても嬉しく思って顔は自分でも分かるくらいにほころんでいた
この夜勤が終わって帰ったらまた話そうと自然に思った
なんだか次はいつ会えるのかと漠然とした不安に襲われて「これからどこにいくの?」と聞いた
返事がなくハッと仮眠から目が覚めた
そっか夜勤中だったのか
今はどこにいるんだろう、どこにいくこともなく近くにいてくれているから答えがなかったのかな
暖かい父を感じたのは久しぶりでひっそり涙を流したそんなある夜勤の日だった