琥珀色の檸檬

喘鳴。涙を噛み砕く。散らばった音楽で嗤う誰かを、私は好きになれない。ホールケーキをぐちゃぐちゃにした貴方は、どうしても嫌いになれなかったのに。雨に打たれまいと強く髪を縛ったあの日、貴方の鳥籠からいなくなれた気がして、ぴりりと痛む胸に目を逸らしながら。こころがかるくなった。境界線で夢を切り裂いて。貪欲に、笑顔で。明るいお話だけを掬ってつついて刺してわらっていたい。
涙に執着している自覚はある。最近いつ泣いた?なんて聞かれて何も言葉が出なかった。それが恥ずかしくて、恥ずかしいから内緒。笑って誤魔化した。自分を俯瞰することは出来ても、面と向かって自分を見ることが出来ない。
あなたの手も視線も届かない色のある鮮やかなところに行きたい。ここはなにもないところ。遠くから聞こえる救急車のサイレンの音と耳鳴りが重なって意識が遠のいていく。何かから許されていたいわたし。大丈夫?なんて言われてみたかった。今も過去もこれからもない。大丈夫なんかじゃない。わたし、許されなかったみたい。ごめんね。
あたたかくてふわふわできらきらしてたあのころの想い出を、綺麗なままに。ぶち壊したあいつだけは。
誰かの言葉を食べて咀嚼して自分のものにしてしまう病気。私は愛されたいの?不特定多数の誰かからの100パーセントの可愛いに包まれたいだけなのに。それを愛と呼ぶのなら、愛なんてこんなにも穢らわしいものなんだね。わたしはただ傷つきたくないだけでしたから。
やっぱり誰がどう否定したってわたしはあの子によく似ているから、それを隠すことに必死で。浅はかで単純な思考があの子みたく露呈してしまわないように、浅く、浅く水面で呼吸を紡いでいる。
高校生なんてもっと馬鹿で自分の欲求が1番で幼くて、でも勉強はできる。その齟齬が気持ち悪くてレールから外れたから、私だけがだめで私だけが醜くて私だけが汚い。
私はいつか、誰かと生きてみたい。喘鳴のような息ができない感覚を、ただ、享受し合いたい。ただ、激動より安寧を求めている。ただ。ひゅー。ひゅー。
うまく文字がかけなかった。うまく笑えなかった。うまく手を繋げなかった。うまく。上手く?うまく輪の中に入れなかった。うまくウインクができなかった。うまく、上手に飛べなかった?あの子たちの中で、素直に向き合うことが出来ない。あの子たちにならって巻いたコルセットに、ぎゅうぎゅう締め付けられて息ができない。イヤホンとモバ充を抱きしめている。自分の口角がどこにいるのかが分からなくて、どんな顔をしてるのかも分からなくて、知らない人が近くにいるだけで目線が沈む。私は普通にすることを許されていないのかもしれない。普通に生きることを悪いことだとおもう。普通、が分からない。けど、どうしたって私は皆と同じように皆の真似をするようには生きられなかった。もう、異質に溶け込むのは嫌だった。
無意識に傷付けられることを恐れている。傷付けたことは何度もあるのに。何も持っていないあの子に向けられる言葉が重りみたくのしかかってきて、愛おしさなんてどこにもなかった。
何も考えないでただ誰かに相手をして欲しい。わたしはらりってて、相手は適当にながしてくれて、たくさんよく分からないお話をしようよ。愛に飢えてるのかもしれない。相槌をうって、へらへらわらって、なんで、くるしくて。なんで泣いてるの。相手をしてくれる人が欲しくて、でもそれは相手に無理をしいてる気がして、やっぱり誰もいなくて、無条件で受け入れてくれる人なんてどこにもいないのが正解で、まして。
あの甘いふわふわには誰も逆らえたりなんてしなかった。誰かから奪ったマフラーをぐしゃぐしゃに握りしめて生きていく日々にはもう耐えられなかった。このまま死ぬのなんてごめんだ。ぽやぽやのひざしに抱きしめられてからがはじまりなんだよ。
それは甘やかな光とあたたかなべびーぴんくいろの音楽。

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