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映画「せかいのおきく」「パリタクシー」のこと、「ヘザウィック・スタジオ展」のこと、など、

5月×日
TOHOシネマズ日本橋で「せかいのおきく」(阪本順治監督)
江戸末期、貧乏長屋暮らしの武家の父娘と「おわい屋」の二人の青年の話。
「おわい屋」の話なのでかなりダイレクトに、そして頻繁に糞尿が映し出されるが、モノクロなので(一部カラー有り)そこまでキツくはない。
まあダメな人はダメだろうが。
設定が面白いし、役者がみな良い。
美術もロケーションも良いし、撮影も良い。

というわけで評価が高いのはうなずけるが、自分はノレなかった。
ノレなかった点は3つ。

1. メッセージ性
江戸の庶民の生活を描いて、それが環境問題とか持続可能性とかを考えさせる、っていうのは別にかまわないのだけど、それをセリフで(直接的ではないにしても)匂わせられるとちょっとなあ・・・、と。
  
2. 笑いのセンス
登場人物の一人がさして面白くも無いことを言った後で「ここ、笑うところだぜ」みたいなことを言うシーンが何度かあって、それは全然良いのだが、そうではなくて映画の中の笑いのシーン、ここ、笑うところだぜ、というシーンが面白くない、笑えない。

3. 言葉のセンス
時代劇の中で登場人物が、「その時代にそんな言葉は使わないだろ」というような現代っぽい言葉を使うことは、必ずしも駄目という訳ではない。映画のタイプによってはそれでいい場合もある。
ただ、この映画は江戸の庶民の暮らしをリアルに描く、っていうタイプの映画だからそういう言葉がいくつか気になった。
一番気になったのは、登場人物の一人が「青春」という言葉を、今私たちが使っているような意味で使っていたところ。
「青春」という言葉自体は昔からあるのだろうが、この時代の、しかも読み書きもできないような若者がそういう意味で使うかね、というのがちょっと不自然に感じた。

上の1~3は、かなり微妙なさじ加減で決まることだし、人によって受け取り方も違うだろうと思う。
「全然不自然に感じなかった」「フツーに笑えた」という人もいるだろう。
映画の芯の部分ではない、という考え方もあるだろうが、しかし作品に対する好き嫌いはこういう部分で決まるような気がする。

5月×日
六本木ヒルズ展望台東京シティビューで「ヘザウィック・スタジオ展」

なんかウネウネしたデザインが印象的な建築家と彼のスタジオの展覧会。
子供の頃にノートに書いた夢想をそのまま現実にしたような感じがあって、ああ、こういう仕事って楽しいだろうな、と思ったが、莫大な金が動く建築の世界は(全然知らないので想像だけど)、色々大変なことがあるんだろうな、とも。


六本木ヒルズの展望室が会場なので、眺めがとても良かった。

東京の街もけっこうウネウネしている。



5月×日
新宿ピカデリーで「パリタクシー」(クリスチャン・カリオン監督)
色々問題を抱えた中年の男性タクシードライバーが、90代の老婦人をパリの反対側まで送り届けることになったのだが・・・、というお話。
予告編を見て「まあこんな感じだろうな」と思った範囲から一歩もはみ出ることはない「想定内」という印象の映画なのだが、これがなかなか悪くなかった。
変に奇をてらったり、ひねったりしなくても、きちんと作れば良いのだよな。
観ている誰もが「ラストはこういう風になるんだろうな」と思っているラストにちゃんとなる、というのも良かった。

音楽が不満。
音楽自体は悪くはないが、ちょっとうるさい。

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