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「あっ」と言うまもなく心惹かれた アルフォンス・ミュシャの版画

何度となく目にしたことがあったのに
なんとなく気にはなっていたのに

なぜか一度も見に出かけたことがなかった
ミュシャの版画。

先日府中市美術館で開催されている
『アルフォンス・ミュシャ ふたつの世界』で
実際に目にすることができたのだが
「あっ」と言うまもなく
心が惹かれてしまった。

見ているとやはり描かれている女性に
目が奪われやすいが

実際目にしてみるとミュシャの版画は
それだけではないことを実感できる。

*展示品の写真撮影は禁止されていたので
 記事の写真は
 『アルフォンス・ミュシャ ふたつの世界』の
 公式図録を購入し撮ったものになります。


1.トーンの統一

トーンとは色の明るさと
色の鮮やかさを表す色調のことで
淡い色に統一されたものが多い。

左がモエ・エ・シャンドン  
インペリアル・クレイマン 

右がモエ・エ・シャンドン  
ホワイトスター・シャンパン


2.対のバランス

2つを組み合わせることで
ひとつの作品にしていて
対比することによって関連性を強めている。

左がアイビー 右がローレル


3.組みのストーリー性

季節や花など
つながりを持たせ
時の流れをイメージさせる。

左から順に
《朝の目覚め》《昼の輝き》《夕べの夢想》《夜の安らぎ》


4.さまざまな書体

書体によってポスターの情景や
見る人の印象が変わることを考え
雰囲気に合った書体を作り出している。


5.背景のデザイン

余白のシンプルさではなく
「自然から学んだ」草花などの模様を
工芸品のように加えている。

装飾の組み合わせ


ミュシャは全体の雰囲気を大事にして
描いていたことがわかる。

ダンス(「四芸術」)


目に飛び込んでくるような
鮮やかさではないのに
ふと目に留まる。

生活の一部に馴染み
彩を添えてくれるようなそんな絵。

主張をしすぎない絵は心が和み
いつまでも「そこにあっていい」
と思わせてくれる。

もし私ならこれらの絵を見るために
きっと足しげく見に通っただろう。

そんな気にさせられてしまう
ミュシャの版画。

舞台の世界を街に出現させる
女神が夢を売る広告
街角の芸術から部屋を飾る絵へ

『アルフォンス・ミュシャ ふたつの世界』の
公式図録から

「民衆のための芸術に関われたことが
うれしかった」とミュシャは後年
語っていたと言われているが

描く女性は女神や聖母のようでいて
身近にあって話しかけたくなるような
そんなイメージを感じるし
見る人の心のよりどころにも
なっていたと思う。

『アルフォンス・ミュシャ ふたつの世界』
府中市美術館
2024年9月21日(土)〜12月1日(日)まで

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