日影を求めて
人生の厳しさが身にしみるようになってから本を読むようになった。最近は心理学の本にはまっている。心理学といっても難しい本を我慢して読むのではなく、心に響いて楽しく読める本を探して読んでいる。
自宅だと家族の気配とかテレビの音で気が散るから本に集中できない。本を持ってマックカフェに行ってみたけど集中できなかった。駅前のコーヒーショップは一杯のコーヒーで長時間の滞在は難しかった。
4月の穏やかな休日、海の見える公園に出かけて本を読む場所を探した。デッキの隅っこの木の下が日陰になっていたので、そこに座って本を読むことにした。
目が疲れたら海を眺める。
そうするとまた本に集中できる。
身体が堅くなったら散歩する。
また本に集中できる。
当面の休日の過ごし方は、このパターンを繰り返す予定だった。
気がつけば日差しは日を追うごとに厳しくなっていた。6月も上旬になると紫外線の量も半端じゃなさそうだ。
自分の指定席だと思っていたデッキの隅っこの日陰は他の人に占領されることが多くなった。公園には屋根のある場所もあるが家族連れですぐに埋まってしまう。
もうすぐここは海水浴客で賑やかになる。夏の間は人が増えるから日陰は確保できそうもない。日陰のある快適な居場所を見つけることが最優先課題になった。