有名なデザイナーの言葉よりも心に刺さった、 無名なデザイナーの言葉
いいプロダクトをつくろうと真剣に向き合う人ほど、「言葉」に向き合っていると強く信じている。課題を探し、情報を整理し、アイデアを考え、アウトプットをする、そのすべての過程において「言葉」が成功の鍵を握っている。したがって、いいプロダクトやプロジェクトの背景には、いい「言葉」を使って成功に導いた人間がいる。
特に、デザインと「言葉」が強い血縁関係で結ばれていることは、僕の体にしっくりと馴染んで信じられている。コミュニュケーションを起点にデザインの定義をするのであれば、「言葉」はコミュニケーションの原点であり、デザインの原点は「言葉」と言えるからだ。(デザインの定義で戦争をするつもりはありません)
だからプロダクトに向き合っているデザイナーの「言葉」はとても楽しい。佐藤可士和さんや原研哉さんのような有名なわけでもない、クックパッドという小さな会社の、小さなプロダクトをつくっている、1人の無名なデザイナーの体温を持った「言葉」がとても楽しく、心に突き刺さる。
この半年、僕の心に刺さった、僕にしか刺さらないかもしれない、そういった言葉たちに額縁を付けて飾っておきたい気持ちを記事にしました。
同じチームのデザイナーであるときぽんが、ある日突然、ミーティングでプレゼンテーションをしてきた。事業で未着手のブランディング関連の課題で、今それをやるべき理由と、彼女がやるべき理由を簡潔に説明した上で、『私に、この仕事をさせてほしい』という提案だった。
自主的な提案が推奨されるカルチャーなので、細かい改善や仕組みであればみんながやっているものの、彼女が提案したものは規模が大きく、僕自身もやらなければいけないと思いながらその大きさゆえに億劫になっている案件だった。彼女は役割上差し込み仕事が多く、忙しいことを僕は気にしたが「忙しいことは大した問題じゃない」と一蹴して、このプロジェクトを進めることとなった。
👆素敵と素数が入り乱れる反応
紆余曲折しながらも、そのプロジェクトはまもなく一区切りを迎えようとしている。その行動力に、視座の高さに、タフさに、感動した。見習わなくてはいけない。
ブランディングやデザイン基盤で活躍しているデザイナーのいっちーさんに、仕事をお願いした時の話です。その仕事が会社にとって必要であることや、いっちーさんがベストな人選であることにはすぐに納得してくれましたが、腑に落ちない顔して言われた言葉が『もちろん本気でやるんですが、なんかこの仕事、ときめかないんですよね』でした。
『ときめかない』。
ニュアンスは分かるものの、僕が仕事の選択基準をそう言語化したことはありませんでした。(青春と言語化したことはある)
そう言われてからいっちーさんのポートフォリオを見返すと、どれもいっちーさんらしく、品質も高く、影響範囲が大きいすばらしいものばかり。いっちーさんのアウトプットを高め、いっちーさんの成果たらしめているものは、この「ときめき」から来ているんじゃないか、そう思うようになりました。
👆作家性とは違う、いっちーさんらしい素敵なアウトプット
「ときめき」と言語化されたものがアウトプットに直結するのは、いっちーさんだけじゃないんじゃないか。どうすればいっちーさんにときめきを与えられるか。僕が今やっていること仕事のときめきポイントはどこか。ときめきがない仕事はなにか。
上手に言語化できずまだもやもやしている状態ではあるものの、いっちーさんは分かっている仕事に必要な大事なものを、もう少しで手に入れられるような気がする。
🎨 portfolio : @kozue.illust
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2月から倉光よりデザイナー統括マネージャーの大任を引き継ぎ、先日上期評価の面談をデザイナーと行った。デザイナーの評価面談には被評価者と、その成長と評価をサポートする師匠がつくルールにした。
この言葉は、被評価者であるデザイン戦略部で社内のデザイナーの基盤を整えているフジケンに向けて、師匠である須藤さんが言った言葉だ。
クックパッドでは「できる」「やりたい」「やるべき」が交差したところを仕事とするのがよい、と言語化されている。(表現は違っていても、多くの会社で同じように定義されているように思います。)フジケンの「できる」と「やりたい」が交差するところであるアイデアに、会社として「やるべき」を持って来て実施したことが素晴らしい動きである、というのが須藤さんのフィードバックでした。
この図を見つめていると、顕在化している「できる」「やりたい」「やるべき」の交差点はどこだろう、と探してしまうが1つが欠けても成り立つケースがあるのだなと学びになった。
考えてみれば、須藤さんは2つの交差点どころか、「やりたい」1つをベースに「できる」「やるべき」を引き寄せて、アウェイをホームにして戦う働き方をしているような気がする。クックパッドで1番古株のデザイナーが、自分の得意をベースにせずに戦っているなんて、めちゃくちゃかっこいい。僕もそうありたい。
📘 note : https://note.com/sudokohey
💬 twitter : @sudokohey
Komercoのリードデザイナーである上野さんは、アプリのデザインをする際に、まずは実現可能性を考えずにリッチなものをデザインし、そこからコストを考えながらMVPに着地させていくというスタイルと哲学があります。
僕自身を含め多くのUIデザイナーが経験があり、共感できるものだとは思います。
👆上野さんのFigmaにはいつも、理想を諦めない哲学が溢れている
そのスタイルに至ったのは、上野さんが以前一緒に働いていたエンジニアから『デザイナーが想像できることは、エンジニアは実装できる(だからデザイナーができないと決めつけてデザインをしないでくれ)』と言われたという経緯があったそうです。
そのエンジニアさん、めちゃくちゃかっこいいですよね。
僕は仕事のスタイルとして工数、特にエンジニア工数に対してものすごくケチで、いかにして余計なものを削ぎ落とせるだけ削ぎ落としてリリースできるかというところにこだわっています。
もちろん上野さんと同じように理想を描いて削っていく進め方もよくやるのですが、はじめから「これはエンジニア工数がかかるから駄目なデザインだ」と決めつけているところがあります。エンジニアを尊重している気持ちではいたのですが、上野さんの言葉を聞いて「これってもしかしてエンジニアのできることを決めつけてしまって、めちゃくちゃ失礼なのでは?」と思うようになりました。
そんな中、進行中のプロジェクトでまさにエンジニア工数がかかりそうな、リッチなデザインをつくってしまいました。もし実現可能であればとてもよいデザインだと思うのですが、サーバーでやるのかクライアントでやるのかすら想像ができない。忙しさにかまけて代替案も用意できないままエンジニアに共有したところ、エンジニア間でどう実装するのかその場で議論になり、なんと翌週には理想の形で実装できていたのです。
上野さんの言葉と、上記のプロジェクト内でのできごとで、これからの僕のデザインの仕方が変わりそうです。素早くリリースすることと、エンジニアができることを僕が決めてしまうのは、まったく違う。エンジニアができることを、僕が決めてはいけない。
📘 note : https://note.com/mueno88
ずんこはカメラが好きで、プライベートで写真の個展をやっていた。これは小さな個展の入り口においてある、小さなコンセプトブックに書かれていた言葉だ。
職業柄、写真やカメラマンと一緒に仕事をすることはあるが、僕は写真にあまり関心がない人間だった。好きな写真家なんていないし、仕事に必要なのは写真がもたらす効果で、1つのファンクションとして捉えていた。
あえていえば、被写体やカラーやレイアウトをどのように計算すれば、どんな写真になるのかというテクニックには興味があった。でもずんこの写真は、意図的にそういったものを意識せずに撮影された、ドキュメンタリー感のある、生々しい写真ばかりだった。
👆「小さな神さまのいる方へ」@Inheritgallery
個展でみた写真は、たぶんこの言葉がなければ「よくわからない」で片付けていたと思う。この言葉と、よく知っている人がカメラマンであるということで、個展の写真はとてもおもしろく、ずっとみていられるものになった。
それから、ずんこの写真じゃなくても、写真を楽しめるようになっているきがする。
💬 twitter : @Junko33
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多くの人を動かすよくできた著名人の名言よりも、もしかしかしたら自分しか知らないかもしれない言葉が、僕を動かしている。ここにかけていない僕を動かした言葉もまだいっぱいある。機会があれば、メモにたまった言葉をまたnoteに書こうと思います。
最後にときぽんさん、いっちーさん、須藤さん、フジケンさん、上野さん、ずんこさん。noteに掲載することを許可いただき、また、佐藤可士和さんや原研哉さんと比較して無名よばわりをする無礼をお許しいただき、ありがとうございました。
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