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エゴってなんだ。 エックハルト・トール『ニュー・アース』

 好きなyoutubeチャンネルで紹介されていたので気になっていたエックハルト・トール『ニュー・アース』を最近読んだのだけれど、これがけっこうおもしろい。
 「もっとも有名なスピリチュアル本のうちの一つ」と謡われている本書の主張はシンプルで、「思考と自分を同一化するとエゴが生じて苦しくなるので、意識をいまここに置きなさい」というもの。このことを一冊かけて繰り返し語っているこの本の特徴は、エゴについてこれでもかというくらい詳細に語っているところだとおもう。
 たとえば、

 ほとんどの人は依然として、絶え間ない思考の流れ(大半が無意味な繰り返しである)や衝動的思考に自分を完全に同一化している。(略)頭のなかには片時も止まらずにしゃべり続けている声があると言われると、人は「それはどんな声か?」と聞き返したり、そんなことはないとむきになって否定する。聞き返したり、むきになったりするのはもちろん、その声、考えている無意識な心だ。(エックハルト・トール『ニュー・アース』サンマーク出版,p39-40,)

 自分が正しいという思いほど、エゴを強化するものはない。正しいというのは、ある精神的な立場——視点、見解、判断、物語——と自分を同一化することだ。(同上,p78)

 特定のエゴイスティックなパターンを誰かに発見して強く反応し、それが相手そのものだと誤解するときは、たいてい自分自身にも同じパターンが存在するのだが、自分ではそれを見分ける力もないし、その気もない場合が多い。(同上p85)

 「おおー」と唸る文言が次々に出てくる、格言のオンパレードである。たしかに怒りや不満がわいたとき、その裏には「自分が正しいのに」というおもいがある。いわれてみればまさにそうだということを著者が山のように語るので、1ページ1ページが妙に重たい。すっごい笑顔でバンバン鞭を打ってくる。
 また「エゴは集団的な機能不全」「大切なのは目的や行動ではなくてそのもとにある意識の状態」などのパワーワード()は、仏教の「無明」や「縁起」に通じるところがあるようで、違った角度から語るとこんな感じになるのかーと新鮮だった。
 本書はみんなが共通して抱えているであろう問題に直接アプローチしてくるし、主張がはっきりしているので学ぶところが多い。その分大振りになって「それほんと?」とおもうような箇所もあるが、それも含めてとてもおもしろく読めた。マインドフルネスや瞑想に興味のある人、あと「ふつうに人生しんどくない?」っておもっている方がいたら読んでみるといいかもです。



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