山田 貴宏

一級建築士事務所 株式会社ビオフォルム環境デザイン室 代表取締役 パーマカルチャーの手…

山田 貴宏

一級建築士事務所 株式会社ビオフォルム環境デザイン室 代表取締役 パーマカルチャーの手法/考え方を背景に、環境と建築、エコロジカルな農的な暮らし、集まって住む、などがテーマ。 伝統的な木の家をベースに設計を行なっています。 https://www.bioform.jp

最近の記事

BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 『いい風景に出会う』 (NZ視察番外) 

旅をしていると日常では見ることのできない「いい風景」に出会うことがあります。それを見るために旅に出ている、とも言えるかもしれません。 ちょっと大きなことを言うと、生きていく上で、ひとの人生の価値はどれだけいい風景をたくさん見るか、にかかっているとも思うのです。 NZツアーの各所で、息を呑むような風景から、ほっこりするような風景まで、東京にいたら出会えないさまざまな風景に出会うことができました。 なにせ人口密度が日本の約20倍も違うのだから、自然の密度が濃いのは当然です。

    • BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係『微生物舗装』のワークショップ

      ビオフォルム環境デザイン室で設計を担わせていただいている『ちっちゃい辻堂』プロジェクト。 さまざまなテーマがあるが、大きな関心ごとの一つが「生物との共生」する場づくり。プロジェクトオーナーご自身が生態学を学生時代に学んできたこともあり、生き物が大好き、特に両性爬虫類が好き、という。 辻堂のプロジェクトは“お隣さん同士の健康的な関係性”と“環境配慮型の住まい” であるが、その二つのテーマは連関している。それを生物がつないでいるかもしれない。生物層が多い環境は人の幸せにつながって

      • BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 DAY3 240221 NZ視察報告 レインボーヴァレーファームとトリッシュの家

        パーマカルチャー界隈ではレジェンドになっている、オークランドの北方80Kmほどにある『レインボーヴァレーファーム』(RVF)を実に20年ぶりに訪ねた。 ジョーとトリッシュという類稀なる情熱とパワーを持ったカップルによって、1988年にスタートした、パーマカルチャーのデザインの原則を応用したモデル農園である。2000年前後にパーマカルチャーセンタージャパンで、毎年ツアーを開催しており、私も続けて4年ほどツアーの付き添いで通った。 私の中で、建築と自然、生態系をどうブリッジす

        • BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 建物の周りと協働する柔らかい技術

          住まいにとって、温熱環境と並んでとても大事なこと、かつクリティカルなことは、実は「水」である。 熱環境は厳しい環境でもなんとか凌げる可能性があるが、水の供給と人の「排泄」はその仕組みが成立していないとなんともならない。 それは災害が起こるたびにその必要性を痛感するが、どういうわけか、こちら方面の対策、対応というのは後手になっているような感じがある。 先日、排水の浄化や、コンポストトイレの研究者と話をする機会があった。 彼とはかつてあるプロジェクトで合併処理式浄化槽を作る機会

        BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 『いい風景に出会う』 (NZ視察番外) 

        • BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係『微生物舗装』のワークショップ

        • BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 DAY3 240221 NZ視察報告 レインボーヴァレーファームとトリッシュの家

        • BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 建物の周りと協働する柔らかい技術

          BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 NZ視察報告 DAY2 240220 オークランドのコハウジング事情

          二日目はアースソングをでて、エココハウジング プロジェクトを2つ見学させていただいた。  都市郊外型の集合住宅タイプのコハウジング。オークランドの都心からはいずれも車で15分ぐらいのところに位置する。 一つは「26Aroha」プロジェクト、4階建で13世帯が居住している。これはコーポラティブ方式ではなく、事業がいて賃貸スタイル。元々ここに土地を持っていて、土地の仕入れがなかったことが助かった、とオーナーさんはおっしゃっておられた。  ニュージーランドはここ数十年で経済発

          BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 NZ視察報告 DAY2 240220 オークランドのコハウジング事情

          BIO+FORM考 自然と建築の幸せな関係 『ローカル+エコライフからの建築デザイン』(原稿再掲)

          総合環境情報誌『BIOCITY』の88号(2021年)に『ローカル+エコライフからの建築デザイン』というタイトルで寄稿させていただいた。このNOTEで書き綴っている内容とほぼ被るが、論考としてある一つのまとまっている文章になっているので、再掲させていただく。 (以下再掲 原稿)  ●山積する課題と都市の限界  環境容量の限界、それに伴う気候変動やマイクロプラスチック等の問題、資源枯渇、従来型のエネルギー源の限界などが喫緊の課題としていよいよ露呈している。現在の都市構造は過

          BIO+FORM考 自然と建築の幸せな関係 『ローカル+エコライフからの建築デザイン』(原稿再掲)

          BIO+FORM考 自然と建築の幸せな関係 #04 『自然の仕組みの理解:植物文明への移行とパーマカルチャー』

          ■植物文明への移行  自然の仕組みを非常に大雑把に煎じ詰めると、「流れ」と「循環」と「ストック」ではないだろうか。地球上のエネルギーと栄養と物質は、太陽のエネルギーをエンジン役とし、水を運び屋として、この地球という世界を回っている。水、風、栄養、熱が流れの中にあり、生命はその中でエントロピーを小さくする形でストックとして存在する。こうして地上でそれを固定化してくれるのは植物である。 現在の環境問題は、一方的な生態系からの収奪→利用、消費→廃棄→環境容量の限界 という仕組が破綻

          BIO+FORM考 自然と建築の幸せな関係 #04 『自然の仕組みの理解:植物文明への移行とパーマカルチャー』

          BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係「重い」建築と「軽い」建築

           建築士は三年に一度、公的機関が主催する定期講習なるものを受講し、試験を受ける義務を負っている。日々技術研鑽に励み、建築環境にまつわる情報をアップデートしなければならない、と言うわけだ。建築技術も日進月歩しているので、こうした機会が強制的にでもないと、どんどん置いていかれるので、面倒とはいえありがたい機会ではある。  さて、講習のことが主題ではない。先日、この講習を受講したのだが、気になることがテーマとしてあった。住宅ぐらいの小規模な建築において、耐力壁の壁量計算の係数がア

          BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係「重い」建築と「軽い」建築

          BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 生態的建築

          生態系のメタ構造としての建築 昨今、サーキュラーエコノミーが注目されるようになってきている。 かつては循環型経済と言われていたが、その深化と定義し直しがされている。「ゆりかごからゆりかごへ」などが謳われ、ようやく単なる「リサイクル社会」を目指そう、ということから発展が見られそうだ。 また同様に「Nature based solutions」という視点も注目されており、益々生態系の仕組みを手本にした仕組みづくりや方法論を模索する動きが加速している。サーキュラーエコノミーの議論

          BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 生態的建築

          BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 NZ視察報告 DAY1 240219     『アースソング』

            2024年2月18日から22日にかけて、久しぶりにニュージーランドのエココミュニティを訪ねるスタディツアーに参加した。   2000年前後にはパーマカルチャーセンタージャパンでは毎年1月から2月にかけて、ニュージーランドとオーストラリアのパーマカルチャーの先駆的事例を訪ねるツアーを開催していて、私はその案内、荷物運び、通訳などの役回りで毎年、都合4回ほど同行していたのだった。 最後に訪ねたのが確か2004年だったから、実に20年ぶりの再訪となる。 きっかけは、今回の主な

          BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 NZ視察報告 DAY1 240219     『アースソング』

          BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 #5 部分最適から全体最適へ

          生態系の仕組みが持つ全体調和性の視点から、改めて現代の技術や仕組みを俯瞰してみたい。 現代の技術が指向していることは、まさに目の前のその問題を解決するためのものであることが多く、個別の最適性を目指している。そうした単一課題の効率論は、問題を根本的に解決してくれるのだろうか? というモヤモヤ感がある。 現在、喫緊の課題になっているエネルギー問題は、「夢のエネルギー」が発明されてしまったら、果たして脱炭素の議論はおしまいになってしまうのか?原子力という技術がかつてそうであった

          BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 #5 部分最適から全体最適へ

          BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 金沢で考えた。ー伝統を未来へ繋げるには

          北陸へ出張となりました。金沢、氷見と石川県、富山県にわたる2泊3日です。 寒波がやってくる、ということで結構ヘビーな防寒仕様で出かけましたが、雪はなく、晴れていたので、ちょっと歩くと暑くて汗が出るくらい。ちょっと拍子抜けでした。 さて、お約束の「ひがし茶屋街」へ。金沢は何度か来ているので、初めてではないのですが、伝統的建造物群保存地区、ということもあって、ここは好きな所です。 伝統的な茶屋では残っていけなくて、色々な業態に変化しながらまちが生命力を保っています。 あるものは

          BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 金沢で考えた。ー伝統を未来へ繋げるには

          BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 閑話休題 トークセッション 「暮らしの場を自然に近づける」@益子/参考館 11/19/2023

          ■環境デザイナーの廣瀬俊介さんからお声がけいただき、2022年の11月19日に栃木県/益子の濱田庄司参考館にて、廣瀬さんとトークセッションをさせていただきました。 トークセッションのイベントは↓ 現在参考館にある長屋門の茅葺の葺き替えをおこなっていて、その一連の活動の一環として、このイベントに呼んでいただきました。 茅葺や藁葺きは、地域の農や自然との連環の中で成立する建築資材です。生態系的建築を語る上で、建築をどう風景と接続していくか、ということを考えていますが、その接続方

          BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 閑話休題 トークセッション 「暮らしの場を自然に近づける」@益子/参考館 11/19/2023

          BIO+FORM考 自然と建築の幸せな関係 #03 『自然の仕組みの理解:ゆく河の流れは絶えずして』

          自然に寄り添った建築を想起するには、その理解が不可欠です。私は生態学者、生物学者ではないので、専門的な見地から自然の仕組みを解説することはできませんが、生態系的建築をこれから考えるにあたって、その仕組みの大きな掴みぐらいは、なんとかスケッチできるかなと思います。 ■生態系の仕組み:植物の役割 中学、高校などで誰でも、「生態系の仕組み」を理科の授業で受けたことがあると思います。自然の仕組みを理解するためには、あらためて考えてみるとやはりそこに根本的な原理があると思われます。

          BIO+FORM考 自然と建築の幸せな関係 #03 『自然の仕組みの理解:ゆく河の流れは絶えずして』

          BIO+FORM考 自然と建築の幸せな関係 #02 『自然をどうみるか :生命環境主義』

          ■技術的環境主義 ここまで、環境問題への対応は技術による対処療法的な方法論で私たちは乗り越えようとしています。これまで引き起こされてきた環境の問題は人間の資源やエネルギーに対する飽くなき拡大指向に基づくものであり、そこは依然としてあまり顧みられていないように思います。エネルギーや資源が足りないならば、それを解決するためには、いわゆるその「効率」をもっと高めれば良いのでは、とする「技術的な環境主義」と言えるでしょう。 現代の技術は産業革命以降、飛躍的に進歩しました。とりわけ化石

          BIO+FORM考 自然と建築の幸せな関係 #02 『自然をどうみるか :生命環境主義』

          BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 #01 『自然をどうみるか:技術観の転換』

          ここまで「パーマカルチャーとバイオシェルター」に言及していましすが、そのご紹介はもうちょっと先にします。 大晦日ですので、少し大きな話を書いて、来年に繋げることにします。 ■いわゆる「環境問題」 現代は「環境問題」が喫緊の課題、となっています。これは今に始まったわけではなく、1972年にローマクラブ「成長の限界」を著したことに象徴するように、ずっと以前から警鐘が鳴らされていたことです。ですが、人々はあまりこれを深刻に受け取らず、現代の技術文明を謳歌してきました。 いよいよ抜

          BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 #01 『自然をどうみるか:技術観の転換』