BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 DAY3 240221 NZ視察報告 レインボーヴァレーファームとトリッシュの家
パーマカルチャー界隈ではレジェンドになっている、オークランドの北方80Kmほどにある『レインボーヴァレーファーム』(RVF)を実に20年ぶりに訪ねた。
ジョーとトリッシュという類稀なる情熱とパワーを持ったカップルによって、1988年にスタートした、パーマカルチャーのデザインの原則を応用したモデル農園である。2000年前後にパーマカルチャーセンタージャパンで、毎年ツアーを開催しており、私も続けて4年ほどツアーの付き添いで通った。
私の中で、建築と自然、生態系をどうブリッジするか、というようなテーマがぼんやり見えてきていた当時、パーマカルチャーというデザイン論に出会い、かなり衝撃を受けた。世界が一気に広がったような気がした。けれど日本で、教科書で読むパーマカルチャーは可能性は広く見えていたが、自分の体の中にまでは落とせていなかった。これは、本場(?)の実践の場を見るしかない、ということで、PCCJのツアーに参加したのだった。
で、腑に落ちた。
ジョーとトリッシュのセンスと熱意でできたモデル農場はあっという間に私を虜にした。これが自然と共にある暮らしであり、それを体現した住まいの建築と仕組みか、と合点がいった。それから気候風土はもちろん異なるものの、RVFを大きな下敷きにしながら、日本で設計活動をしてきた、といっても過言ではない。
2004年を最後に私はツアーに参加することから遠ざかっていたが、その後2008年に残念ながらジョーが亡くなる。RVFのその後を日本からもたくさんの仲間が心配していたが、残されたトリッシュはいよいよ一人では維持できなくなり、2011年にはとうとう人の手に渡ってしまった。
その後紆余曲折あり、いく人もの手に渡った、ということが風の便りに聞かれるだけだった。
が、昨年、パーマカルチャー農園として復活しようと、二組の若いカップルが手に入れ、継承を始めた。今回はその二組が奮闘している現場に出かけて行ったわけである。
正直、往時の豊かさや密度はなく、当時を知る私としては、抜け殻のようなファームを見るのはいささか辛いものがあった。
が、しかし、パーマカルチャーが生態系のメタファーとしての仕組みを想定しているのなら、パーマカルチャーが構築する仕組みや構造もまた生態系のリズムとフラクタルなはずである。つまり、全ての生命は始まりと終わりのリズムがあるのだと、理解した。
ジョーとトリッシュが始めた農園は二十数年という短い時間ではあったが、一旦その役目を終え、冬眠に入った。で、次の芽吹きを待っている。
次の若い人たちがその遺伝子を受け継ぎ、ここを再生しようとしている。
それは希望だと感じた。
現場は、というと、かろうじて食べられる風景、と森、果樹園、様々な環境の摂理にあった仕掛けの数々。まだそのかたちはなんとか維持されていた。
コンポストトイレ、はやはり基本。一番大きなコンポストトイレは途中のオーナーによって残念ながら撤去されていたが、まだ一つは残っていた。食べ物のコンポスト、堆肥化の仕組みはよくあるが、人の排泄物の循環は今ひとつだ。この輪が閉じればその土地での循環が成立するなかなか大事な仕組みであろう。
その後、トリッシュは近くの町、「マタカナ」に移り、新しい住まいを作って暮らしている。RVFのミニ版のような仕立てで、食べられる庭が充実し、いくつかの仕掛けも健在。RVFよりだいぶコンパクトであるがゆえ、むしろ日本の暮らしのスケールのお手本にするにはちょうどいいサイズ感だ。
一つ印象的だったのが、雨水タンク。日本ではせいぜい200リットルぐらいのものがなんとなく普及している。
こちらの田舎はまだ上水道が普及していない地域もあるらしく、それは必然的に死活問題のレベルで、雨水に頼らざるを得ない。なので、スケールが二桁違う。
トリッシュ宅にも上水供給はきていない、とのことで、敷地には20tのタンクが2基備えられていた。慣れない都会の人がこの町に移住してくるとうっかりタンクを空にしてしまい、給水車を呼ぶ羽目になるそうだ。
でも逆にいうと、水の使い方をうまくすれば、電気だけが自給できている「オフグリッド」ではなく、インフラフリーの紛れもない「オートノマス」な住まいができる。
日本は非常に降水量が多い場所であるから、天水をもっと積極的に使うことを考えた方がいい。(先日訪問した沖縄は天水をまだ利用しているところがあった。)
最低限のフィルターリングはしていると思うが、どんな技術を使っているか、は残念ながら聞きそびれてしまった。
トリッシュはコミュニティガーデンの活動などもまだ元気に取り組んでおられ、まだまだ色々とやりたいことがあるのだという。末長く元気でいて欲しい。
レインボーヴァレーファームのFacebookページは以下。ご興味のある方はぜひ覗いてみてください。
https://www.facebook.com/RVF.Matakana
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