「SLY スタローンの物語」。その矜持から理解できた過去作の謎。
Netflixドキュメンタリー「SLY スタローンの物語」。
シルベスター・スタローン=通称スライが生い立ちから現在までを語る。
「後悔はあるか?当然ある。それが原動力だ」
「自分を磨けば失敗は怖くない。到達しなくても何もしないよりはいい」
「人間には長所と短所がある。だから長所を伸ばす」
とシンプル且つ一般人にも通じる人生訓に感銘を受けると同時に、スライ作品について抱いていた疑問点も解消できた。
まず当時完結編と銘打たれた「ロッキー5 最後のドラマ」。
ロッキーが引退。更に破産。最後はリングでなく路上の喧嘩。シリーズの最後にしては余りに寂しいラストに学生時代に見た当時は受け入れられなかった。実際、公開当時も同じ感想の人が多かったみたい。
それが息子を映画に出演させ、実際に出来なかった事をさせてあげようとした事。如何に世界的称賛と栄光を得ても一番大事なのは家族なんだと伝えたかったと聞いて納得した。悪く言えば私情を挟んだといえるし、良く言えば成功者になって知った後悔と学びを落とし込んだともいえる。
あと「ランボー ラストブラッド」。致命傷を負ったランボーが椅子に座り、過去の名場面が走馬灯のように流れる。そしてランボーが馬に乗って去っていく=つまり生きてたという。このカットは必要だったの?という話。
これは「ヒーローは死なない」という考えによるもので、撮影後に後悔から付け足して、ああいう風になったとか。「クリード」の1作目で癌が判明したロッキーが2で元気そうだったのと併せて腑に落ちた。
スタローンといえばラジー賞(最低映画賞)最多候補記録を持つ事で知られるが、評価されない理由もいくつか分かってきた。
まず、伏線回収の話を作るタイプでない。都度都度、台詞を書き加えたり実生活で体感した事(世の中の潮流含め)を組み込んだ結果、前作を書いた心境との変化した点が矛盾点となって出てくる。設定をド忘れする傾向があるのは、これが理由か。
あと、変なの含めて何でも試すとこ。ハルク・ホーガン、MTV路線の挿入歌、不向きなコメディ挑戦といったアイデアを異論が出ても押し切れる権限を持っていて、ハマれば「エクスペンダブルズ」みたいになるし、スベれば「大脱出2」のような珍品が出来てしまうという事なのだろう。
ただ根底にあるのは「希望を売るのが俺の仕事」というポリシー。幼い頃に映画に救われ、映画を職業にした彼だからこその、自分の作品で楽しんでもらって、生きる糧にして欲しいという気持ちがあるのだと捉えた。
「ロッキー2」が当初、ロッキーが酒と女に溺れて転落する粗筋だった事に異を唱えたスタローンが監督兼任になった件。恐らく批評家から評価されるのは前者の方なのだろうが、選ばなかったところにらしさがある。
実際のインタビューではボディランゲージを交えながら気さくに話してくれる好々爺で人格者である事が伺えるスタローン。今なお肉体を鍛えて人々を楽しませるエンターテイナー。尊敬の念が深まる。リスペクトな一本。