雑誌『MEZZANINE』×紀伊國屋書店新宿本店|「本屋で都市を編む」対談レポ #04
2020年9月17日より紀伊國屋書店新宿本店4階でスタート、11月3日に大盛況のうちに終了した「本屋で都市を編む」ブックフェア。
「さまざま分野で活躍する総勢35名にも及ぶアーバンシンカーたちが選りすぐった70冊を展開する」という大規模な選書フェアは、どのようにして生まれたのか?
また、このフェアで伝えたかったこと、さらにはこれからの書店と都市の在り方についてフェアの企画者である『MEZZANINE(メザニン)』編集長の吹田良平さんと、紀伊國屋書店新宿本店 建築書ご担当の中西さんにお話を伺いしました。
お二人の対談を全4回のレポート形式でお送りします。
本屋の意義は失われるどころか、高まっている
―コロナのことも踏まえて、お二人が思う、「これからの本屋と都市の在り方」について教えてください。
中西さん:まずコロナの影響として、休業や営業時間の短縮など、営業する上でさまざまな制限がありました。
リアル空間が前提にあるので、当初これはかなり痛いことだと思っていました。
でも実際には本の需要自体は上がり、郊外の店舗は売り上げを大きく伸ばしていたんですね。
当店もウェブストアの注文はかなり伸びていて、本の需要はこうした状況でも衰えず、リアル空間の価値も高まっているんじゃないかなと思いました。
ウェブストアなどオンライン上のサービスを併用して売場を運営していくことが、私がこれからやりたいことです。
今回のフェアでもウェブストアと連携できたのはとても良かったと思います。
―これまでの本の売り方や、お客様の要望の変化に対応しながら、さらに本屋の付加価値を高める試みを考えていく、ということですかね。
中西さん:そうですね。本屋で本と出会う偶然性や、都市の中の居場所であること、そういう意義は失われるどころか高まっている。
それを理解して本屋の内容をつくっていくことが、自分の役割かなと思っています。
吹田さん:僕はパンデミック以降の都市について、「都心」を「ベッドタウン」から照射して考えてみることができると思います。
今回のパンデミックで、これまで基本的に「寝るところ・住むところ」だったベッドタウンに、新たに「働くところ」の機能が加わりました。
そうすると、これまで「働くところ」の専売特許であった都心がその機能をバージョンアップしないと、存在理由がなくなる。
一言でいえば、「消費文明」からようやく「生産・創造文明」にパラダイムシフトするタイミングかなと。
実はその鍵を、街のリアル書店が握ってるんですけどね……。
―それでは最後にいちフェアだけに留まらず「本屋で都市を編む」を通して、展望があればぜひ教えてください。
中西さん:「本屋は都市的なものだ」というお話をしていましたが、ここ紀伊國屋書店新宿本店の建築は、1964年に設計者の前川國男が「都市の中で一息つける建築であり、都市的要素を持つ建築」を目指してつくった建物なんです。
顕著なのが1階の「ひろば」。
働いている者のなかでは“ひろば”とひらがな表記で使われています。
1階正面入り口前にあるワゴン販売しているスペースや、1階店舗を通り抜けできるスペースは人が交差するまさに都市的な空間だと思います。
とても恵まれた建築なので、その建築としてのポテンシャルや本屋の持つ価値を生かして、もっと都市と混ざって働きかけ合うような、本屋の内容をつくっていきたいと思っています。
例えば今回選書してくださった方々を講師にお招きし、レクチャーを開いていただく。参加した方々と都市が関われるような、本屋の性格を生かした企画を考えていければいいなと考えています。
吹田さん:紀伊國屋書店新宿本店は、あらゆる本がきちんと分類・整理・網羅・陳列され、僕らのニーズに対して直線的に応えてくれる、かけがえのない場です。それを担保した上で、さらに大規模総合書店ならではの「ジャンルの組み換え」をフェア企画でやりたいなと考えています。
例えば「サイエンス meets 都市」だとか、「文学 meets 都市」というような、廻り道、遠回りの末にようやく都市の核心に触れられるような場づくりを。
紀伊國屋書店新宿本店のようなカチっとした書店だからこそ部分的、時限的にジャンルを創造的に破壊して、本同士を出会わせて、また新しいケミストリーを生み出す。そんな場と機会をつくりたいと思っている次第です。
最後に、ご来店くださったお客様をはじめ、企画に共感し、ご協力してくださった35名の著者の皆様に感謝を申し上げたいと思います。
ありがとうございます。
中西さん:ありがとうございました。
―引き続き、「本屋で都市を編む」の今後の展開を楽しみにしています。
本日はありがとうございました。
>>明日はフェアの選書と推薦コメントを一挙大公開!
【プロフィール】
吹田 良平
1963 年生まれ。
(株)アーキネティクス代表取締役。『MEZZANINE』編集長。
大学卒業後、浜野総合研究所を経て、2003年、都市を対象にプレイスメイキングとプリントメイキングを行うアーキネティクスを設立。都市開発、商業開発等の構想策定を中心に関連する内容の出版物編集・制作を行う。主な実績に渋谷QFRONT、「北仲BRICK & WHITE experience」編集制作、『日本ショッピングセンター ハンドブック』共著、『グリーンネイバーフッド』自著等がある。
●WEBサイト:https://www.archinetics-inc.com/
●Twitter:@Mag_MEZZANINE
●Instagram:mezzanine.mag
●note:MEZZANINE(メザニン)
【INFORMATION】
紀伊國屋書店 新宿本店
〒160-0022 東京都新宿区新宿3-17-7
●WEBサイト:https://store.kinokuniya.co.jp/store/shinjuku-main-store/
●Twitter:@KinoShinjuku
●「本屋で都市を編む」特別ページ
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吹田良平さんが編集長を務める雑誌『MEZZANINE』はこちら。
また、電子書店での『MEZZANINE』配信がスタートしました!
紀伊國屋書店さんの電子書籍サービス「Kinoppy」をはじめ、kindle、honto、楽天kobo、など各電子書店をご確認ください。
グローバルな雑誌なので、海外在住の方にもご高覧いただければなによりでございます!
ただ……
紙の質感にこだわった『MEZZANINE』、
できれば、できれば、紙で読んでほしい……!
もしご興味のある方は紀伊國屋書店さんはもちろん、お近くの書店でお求めいただければうれしいです。
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