出版社トゥーヴァージンズ(TWO VIRGINS)
トゥーヴァージンズ発の新たな連載メディアです。 本線(本来の道)とは別の“もうひとつの道”。 そんな脇道にふと入っていった先に、 まだ見ぬ言葉や文章、景色との新たな出会いがありますように。 エッセイ・散文を中心として、各連載、毎月1回更新していきます。 (メインビジュアルはカヤヒロヤさん作)
日本で唯一のブルース/ソウル/ゴスペルの音楽専門誌『ブルース&ソウル・レコーズ』の公式noteです。トゥーヴァージンズnoteへ移動しました!
本と仕事と人にまつわるあれこれを発信します。
トイレという、建物の中で一番小さい部屋には、いたるところにまだ見つかっていない優しさが散りばめられていることに気づいてしまった。 先日、コンビニのトイレの洗面台の配管がぐるっと一周しているのを見て、ふとこれは一体何のためにあるのだろうか?と考えこんでしまった。少しのあいだ考えて、あれは水を楽しませようとするためのものだろうという決断に至った。富士急ハイランドのド・ドンパを想像させるあのカーブが、最後だけでも楽しんでもらいながら下水道へ送り出そうという、設計者から水への最大
8月23日に発売しました、ブルース&ソウル・レコーズ No.179 特集はオルガン大熱狂時代。こんな特集今まであったのか!というコアっぷりを見せたこの号ですが、大好評いただいております。(すっかりご紹介するのを忘れておりましたが…)まだ読んでいない方は是非書店へ! 1950年代後半以降、ジャズをはじめとしてR&B、ソウル、ファンクと、ブラック・ミュージックに欠かせない楽器となったオルガン(ハモンド・オルガン)。60年代にはオルガン・ジャズやオルガンが主役のR&Bインスト・ア
のろくさとプールからあがり、ここも剃っておかないとだめだったか、と思いながら水の滴る自分の腹から視線を上げると、輪ゴムちゃんが先生に駆け寄ってなにかをお願いしていた。輪ゴムちゃんは背の低いスレンダーな女の子で、医学部の推薦をもらうために評定平均5.0をキープしており、ニュージーランドから来た金髪で長身のALT、ステファニーと仲が良かった。近所の国立大学の聴講生でもあったので、高校と大学両方の教科書と参考書を持ち運ばねばならず、毎朝大きな音を立ててスーツケースで登校していた。先
本と仕事と店主についての 8問8答 1 オープンから約1年、率直な感想は? 良くいえば試行錯誤、悪くいえば行き当たりばったりでしたが、お客さまや地域のみなさまに支えられて何とかやってこられたという感じです。何より、多くの方々と触れ合えるのはとても楽しく勉強にもなり、かけがえのない経験でした。 経営的には明確な利益が出るところまでは到底達していません。本屋をめぐる環境の厳しさを全身で感じる1年でもありました。中でも猛暑になり多くの人が外出を控えるようになってからは、厳しさ
本屋をやろうと思った理由ときっかけ 本屋をはじめようと思った理由はさまざまです。少しだけ整理すると、 ・定年後に地域で何かやりたいという思いが募っていたこと ・何かしら生きづらさを抱える人たちの拠り所あるいは逃げ場となるような居場所をつくりたい(本屋もそういう場になり得るのでは)と考えるようになったこと ・もともと本と本屋が好きで、勤務先を退職する3年くらい前から時間を見つけてはセレクト書店を回るようになり、いつか自分もやってみたいという思いを強くしていったこと ・本を媒
この連載ではエッセイを書くことになっている。実際に起きた出来事をもとに筆者の所感がまとめられた文章は「エッセイ」であり、その形式に沿ってわたしも連載の文章を書いてきたはずだった。でもさ、もう現実に書きたいことがなくなっちゃったんだよね。太ってきたこととか、うんざりすることもたくさんあるなかで、静岡までお墓参りに行って山中で迷子になって車にひかれかけたり、久しぶりに会った地元の友人がイタリア人みたいになっていたり、わたしは充実の夏を過ごしていた。しかし、だからといって書き残さな
夏の終わりが近づいてきましたね。皆さんは夏をしましたか? 夏を満喫しましたか? 夏だけなぜか満喫しないといけないみたいな脅迫じみたものを感じるし、人は他の季節に比べて夏にだけ異様に向き合おうとする。たしかに夏は「これ無料なの?」という瞬間が多くてヤバいが。 夏はこの世界の原液という感じがして好きだ。春も秋も冬も素晴らしいが、いざ夏が来ると、他の季節が「夏を薄めたもの」になってしまう。実は季節は横並びではなく縦並びで、四コマ漫画のように秋冬春の順に並び、オチの夏のために他の季
パリオリンピックや高校野球で盛り上がった8月も終わろうとしています。高校野球ファンの僕は、県予選の一回戦から47都道府県すべての試合をインターネットで観戦することのできる世の中になったおかげで、この時期は完全に仕事どころではありません。高校野球に関して僕は甲子園よりも県予選のほうを面白く見てしまいます。全国には三千何百の高校の野球部が高野連に加盟しているそうですが、おそらくその大部分は甲子園で優勝することよりも、甲子園出場を目標にしている学校かと思います。喉から手が出るほど行
百円玉の乗った手が脳裏に焼き付いて離れない。男のものにしてはほっそりしていて、女のものにしては大きな、真っ白な手。繰り返し思い出すごとに、その手は輪郭に沿ってぼうっとした青白い光を帯びる。まるで性別を持たない観音さまのような手だった。極楽浄土からの遣いの手を差し出され、わたしは触れるのがためらわれ、なんてことない顔をして、光り輝く百円玉だけつまむようにして受け取った。本当はその手を両手で包み込んで、すがりつきたかったかもしれない。 スーパーの隅で回転するラックに並べて売られ
自身初の大規模個展(どこからが大規模?)の準備を理由に、ふた月ほどこの連載を休んでしまい申し訳ありませんでした。お詫びと言ってはなんだが(?)自身初の大規模個展のこれまた自身初の大規模振り返りをしようと思う。 まず、この本気の文化祭のような展示に12000人以上が来場した(どういうつもり?)。そのメイン理由として入場料が無料だったことがあると思うが、正確には「無料」や「タダ」ではなく「0円」にしていた。タダではなく、0円を払うという行為を皆様にはしていただきたいなということ
本と仕事と店主についての 8問8答 1 オープンから約1年、率直な感想は? 月に10日しか開けていないというのもありますが、本当にあっという間でした。オープンしたらだいぶ暮らしが変わってしまってストレスになるだろう、と思っていたのですが、逆に週の生活リズムが整ったようにも思います。とにかく無理をせず、細く長くやっていくというのを目標にしているので、お客さんには少々不便をかけてしまうと思うのですが、続けることを最優先に二年目も頑張りたいと思います。 2 仕事の必需品は?
数年前からインティマシー・コーディネーターという職種をよく耳にするようになりました。僕自身、勉強不足で大変恥ずかしいのですが、インティマシー・コーディネーターが詳細にはどういう仕事をする職種なのか、どんな勉強をしてその資格を得ることができるのかということを正確には知りません。それを知らずにその職種について触れるのは勉強不足をもっと晒すことになり、触れるべきではないかもしれませんが、個人的にはどんな分野に関しても勉強不足の人が発言できないのはあまり良いことではないような気もして
こんにちは、Zelt(ツェルト)の伊藤眸と申します。東京都足立区でZelt Bookstore(ツェルトブックストア)という小さな本屋を営んでいます。6月末でちょうど一周年を迎えました。 本屋を運営しているツェルトは、内装設計や家具デザインを行う柴山と、ペインターの伊藤による2人の会社で、月に10日ほど店を開けています。 Zelt(ツェルト)はドイツ語で、登山時の緊急避難用の簡易テントを指します。ステッキをポールがわりにして布をかぶせ、人ひとりが最低限身を休められるようにす
このたびWebコミックメディア「路草」は、新サービス「複製原画オーダーメイド」をはじめました。 本サービスは、「路草」上で連載されている作品の中から、読者の方が選んだ特定のページやコミックスのカバーイラストを、最高品質の用紙に高解像度かつ広色域のインクジェットで仕上げたジークレープリントでひとつひとつ制作し、お届けするサービスです。 本サービスは全作品一律でご購入金額の50%をその作品の著者に支払う取り決めとしています。 これにより、連載作品が書籍化される前でも、作家個人
みんな、休日はどう過ごしているの? ずっと気になっているよ。特に、わたしと仲良くないひとは、どう? わたしの話し方が悪いのかもしれないが、全く心を開いてくれないひとが一定数いる。「お休みの日は何をしているんですか?」と尋ねても、のらりくらりとかわされて、挙げ句の果てには嘘までつかれて、絶対に本当のことを教えてくれない。週末のすべてを賭したくなるほど、あんたが魂の奥底から愛していて、あんたの魂の奥底を愛してくれるものについて、ぶちかましておくれよ。ヘイ、カモン! バッチコイ!
本と仕事と店主についての 8問8答 1 オープンから 約半年、率直な感想は? 8ヶ月もよく続いてきたな、というのが正直なところです。それでも、こんなに見つけづらいお店でも通ってくれる方や、お店のテーマに共鳴して語りかけてくれるお客さんたちとの会話は楽しいですし、これによって自分が得られる知識や、お店自体が変化してゆくことを身をもって実感しているので「これがお店を運営するということなのか」と日毎に学んでいます。 2 仕事の必需品は? 書籍のスリップ挿しです。 京都の左京