人類はルビコン川を渡った?NYタイムズがニュース記事などのAI学習利用を禁止!どうなる生成AI?
インターネットで飛び交う、今週1週間のIT・科学・経済のニュースを 独自の視点で振り返る「ITニュースウェブ2023/08/018(第073回)」さて今週は、、、
人類はルビコン川を渡った?NYタイムズがニュース記事などのAI学習利用を禁止!どうなる生成AI?
ニュース記事・写真のAI学習利用、NYタイムズが禁止(08/15)
今週衝撃的なニュースがネットを飛び交いました。NYタイムズが自社のニュース記事のAI学習利用を、事前に書面での同意がない場合禁じると発表しました。違反した場合には民事罰や刑事罰の対象になるとも。これまでもイラストや小説も含めたいわゆる「著作物」を無断でAI学習の対象とすることについては、さまざまな議論がされてきましたが、アメリカの主要情報メディアが「禁止」を掲げたことで今後の生成AIの行く末が不透明な状態になることは間違いありません。
生成AIと「著作物」の扱いに関しては、学習の対象が著作物の場合と学習後の生成されたものが著作物なのかという2つの問題が絡んでいます。因みに日本では
著作権の侵害?AIの学習データに著作物を利用しても問題ない?
この記事にもあるように、日本では「著作権法 第30条の4項」によって、AIによる学習のために著作物を利用することは、営利・非営利を問わず基本的に認められています。各国でも似たような法律の状況が多く、AIによる学習は「情報解析用に著作物を利用」することに当たり問題はないとされています。でもNYタイムズのような強行措置をとる背景には何があるんでしょうか?
生成AI「社会の動揺招く」、悪用で偽情報拡散容易に(06/16)
日本新聞協会による意見記事によれば、日本でAIが権利者の許可なしに著作物を学習できるようになったのは2018年、当時に著作権侵害を巡る大きな議論を欠いたまま「AI開発を優遇する法改正が実現した」と指摘。結果、米国の株式市場が偽画像の流布で大混乱したことも記憶に新しい。
“米国防総省近くで爆発”偽画像拡散 株価一時下落する騒動に(05/23)
さらには病歴や犯罪歴などの個人データが悪用される懸念もあり、「AI企業が倫理や責任を十分に考慮せずにサービスを提供すれば、個人情報保護法制が骨抜きになる」と指摘。
“生成AI”の便利さと危険性 AIによるフェイクを見破ることは難しく「規制が必要」(07/01)
人間の想像を超える勢いで広まる「生成AI」によって、法整備もままならない中で、国民生活の安全性が脅かされるのではないかという懸念があるわけです。そこにNYタイムズは世界に先がけ一石を投じたというわけなんですが、みなさんはどう思いますか?
【コメント】ニュース記事・写真のAI学習利用、NYタイムズが禁止(08/15)
多くの方々のコメントによれば、ニュース原稿は著作物であり重要なデータ資産。これを無断で使用できることは新たなビジネスシードを失いかねないのではないかと同調する意見が多く見られます。ここで文化の発展の鍵=著作権について改めて振り返ってみたいと思います。
著作権の歴史https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%91%97%E4%BD%9C%E6%A8%A9%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2
ウィキペディアによれば、14世紀から15世紀に渡って、楽譜の写譜の権利=コピーライツという概念が登場したことで音楽が世間に広まるきっかけとなりました。
グーテンベルクが発明した活版印刷術https://www.jfpi.or.jp/printpia4/part2_03-04.html
これを後押しするかのごとくグーテンベルクが活版印刷術を発明したことで、手でコピーしていたものが機械で大量にコピーできるようになったことで楽譜はもとより、聖書が全世界に広まったとされています。つまり文化の発展はすべて「著作物の広まり」であり、少数の方々の努力の結晶が多くの文化の発展を後押ししていくことは間違いないのです。
「人類はルビコン川を渡った」チャットGPT・普及拡大も拭えぬ懸念”(08/10)
インターネットが普及して我々は大量の情報を誰でも一瞬で得られるようになりました。まさに15世紀の印刷技術は現代のネットワーク技術にほかなりません。chat-GPTが出現したことで、もはやその状況から後戻りはできない、ルビコン川を渡るしかないというわけです。15世紀当時もこの「著作権」が出版社が独占してしまうなど大混乱が起きたそうです。いままさに我々にとって重要な著作物をどうAIで便利に活用するかを真剣に考えるしか進む道はないのです。
【参考】ルビコン川を渡るの意味とは?