まるまるの毬
表紙に惹かれて手に取った本。よく本を読む人なら著者をみるだけで時代小説だと分かるのだろうけれど、それも知らずに手に取った。
話は江戸時代の麹町で「南星家」という小さな和菓子屋が舞台。家を飛び出して諸国で身につけた各種のお菓子を作って売っている。父親、娘、孫娘の3人で作るので1日に商うものを物を二、三品、日々品目も変わる。これが評判を呼んでいつも行列ができている。近くには高僧となった弟がいて、少し歩けば、かつてのお屋敷がある。そこで繰り広げられる人情劇、となる。
章は
カスドース
若みどり
まるまるの毬
大鶉
梅枝
松の風
南天月
と和菓子に詳しい人なら、ああ、となるラインナップ。また、章の名前の菓子しかでない訳でもなく、どのお菓子の描写も美味しそうなのが良い。菓子職人の親父さんが、さまざまな材料から作る描写もなかなかに詳しく書かれているので、どんな物を作っているのか想像が進む。
話は途中からどんどんと大きな話になってからの展開が続き最後には、店独自の菓子を考案・売り出し皆で味わうこととなる。
日持ちがなかなかしないので、普段使いの菓子にはしにくいが、それでも口がどうしてもあんこだったり、あましょっぱいみたらしが恋しくなったり、季節の移り変わりに、ふとまんまるの団子が食べたくなったりすることがある。
今の街には、和菓子専門店というよりももう少し庶民的な、かつての街道筋にあったお茶屋が今に続いたような団子屋がある。そこの団子は、工場で大量生産される団子とはどこか違う気がする。
書いているうちに、みたらし団子が食べたくなってきた・・・
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街歩きがさらに楽しくなるものがあるといいな