おじいさんのスイカ
夏がきました。
早起きのセミが、お日様よりも早く、わいわいと鳴いています。
畑では、おじいさんが、うで組をして、立っていました。
「よし、よし、よし。」
おじいさんの畑には、ナス、ピーマン、トマト、キュウリ、トウモロコシ、夏の野菜たちが、いろとりどりに、そだっています。
「よし、よし、よし。」
おじいさんは、うで組をはずすと、うねの間をあるいて、野菜たちに声をかけて回ります。
「こりゃ、りっぱだ。」
「うん、そろそろ食べごろかな。」
「きれいだなあ。」
「たいしたもんだ。」
「ありがとう。」
野菜たちは、おじいさんがこうして、じぶんたちのそばに来てくれるのを、うれしそうに待っていました。
そうして、声をかけられると、ひかりのように小さく、ふるえてみせるのでした。
おじいさんの楽しみは、このようにして、そだてた野菜たちを、こどもや、まごたちに食べさせてやることでした。
けれども、こどもたちは、遠くに住んでいるため、おじいさんは、段ボールの箱に、畑の野菜をいれて、おくってやるのでした。
「さて、スイカは、どうかな。」
おじいさんは、スイカをひとつ、ひとつ、なでながら、言いました。
「うーん、もう少し。うちのまごは、ふたりと、ひとりと、さんにん。6にんぶんだぞ、もう少し、がんばって大きくなっておくれ。」
おじいさんの声をきいて、スイカは、『よし』と、気合をいれました。だって、大好きな、おじいさんからの、お願いですもの。
スイカは、ぐんぐん、ぐんぐん、じめんから力をもらって、そだちました。
お日様からも、夕立の雨からも、たくさんの元気が、丸いスイカにつまってきました。
そして、ある朝、セミよりも早起きして、畑に行ったおじさんの、びっくりしたこと!
なんと、スイカたちは、どれも、りっぱにそだち、中でも、とりわけ大きなスイカが、犬の小屋よりも大きく、どっかりと畑にすわっていました。
「わっはっはっはっはっ・・・スイカよ、がんばったなあ、こんなに大きなスイカは、はじめてだ!」
おじいさんが、おおよろこびして、わらいましたので、スイカはうれしくて、また、ぐんと、あまくなりました。
しかし、こんなに大きなスイカ、段ボールには、はいりません。
おじいさんは、こどもたちに、写真をおくりました。
すると、「ほんものが見たい!」と、まごたちが、おおさわぎをしまして、とうとう、数年ぶりに、遠くからやってくることになりました。
畑には、こどもや、まごたち、おともだちが、たくさん、集まりました。
そうして、大きなスイカを割って、食べました。
「おいしい!」
「あまーい!」
みんな、顔も手も、スイカの汁まみれになって、わらいました。
そしてね、あの、いちばん大きなスイカは、きれいにくりぬかれて、小さなまごたちの、プールになったんですって! そんなに、大きかったんですよ!
夕暮れの空に、一番星がかがやきはじめました。
おじいさんのよろこぶ顔と、みんなの笑い声に、畑の野菜たちも、しあわせそうに、ゆれていました。