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毬衣
2022年11月13日 19:55
光る、光る。あなたは、両手に荷物を抱えて。深くて、少し輝く青の靴下を輝かせる。きっといつか失う輝き。擦れてきっと白くなる。しかも鈍い白。どこを歩くか、どう歩くか、あなたが内股なら靴の側面はきっとすぐに。あなたが土の道を歩くならきっとすぐに。そう思うと、ずっときれいでい続けることは、私なら諦める。あなたとともに歩くことを幸せに思うわ。
2022年9月4日 12:19
会社には誰もいなかった。 仕事をこなそうとする。 たまに持ってきた白湯を飲む。 キーボードをたたけば進む。 何もわからないなんて。 ご多用の中 オンスケ 恐縮ですが 承知しました 見えないように、できないように 恥をかき捨て 隠し、さらけ出し 情熱と燃える自分を 今日は日曜日
2021年1月6日 16:33
パソコン越しに、コーヒーの湯気が立っている。ここはカフェだ。 大声で子供が泣いている。目線の先にはもう一人の子供がいる。母はあやしている。静かだ。声は聞こえない。子供は振り返って、母を見つめる。そして叫ぶ。うらやましい。私もあれぐらい泣けたなら楽だな、などと思う。子供みたいに泣き叫ばなくていいくらいには、言葉を知ってしまった。 見つめられていた子供は、椅子の上に立っている。その母は、手を
2020年12月22日 15:44
恋をした。今日もその人に会いに行く。 話したことはない、が、目が合うことはある。いつも微笑んでいる。 私は耳を研ぎ澄ます。あの人から音が聞こえるわけではない。聞こえるのは雑踏である。雑音だ。ふたりだけの音になればいいのに、うるさい。 あの人はひとりだ。いつもひとりだ。紅茶を飲んでいる。必要というわけではない。なくても困らないものを、当たり前に飲んでいる。私は、のどが渇いている。 あの人には
2020年12月21日 19:29
図書館の隅の方。誰も座らない。そんな席がある。近くの窓から射す光には包まれず、ひっそりと佇んでいる。 ひとりが、その席を見つめている。寒そうな席だと思った。ゆっくりと歩きだす。もうその人はその席のことを忘れている。 しばらく経った。人が来た。地味な服を着ている。黒無地の靴下をはいている。5本の指には赤いネイルが塗られている。プラスチックを爪に塗る、この無意味さに笑いながら塗った。近くの本をと