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絵とエッセイ⑭「失敗嫌い」の覚え書き

「失敗した」

今日、手が止まってしまった。
水彩画を描いていて、ぴたりと手が止まる。
イメージで描いているので下書きは基礎程度とメモ書きのみ。
描いている内に色が浮かんでそのまま絵の具を置く描き方。
描く時には集中する。
最近はスマホのメール音やInstagramなど気になって集中力が切れやすくなっていた。
「よしやろう」
絵と向き合った時、あまり集中できない事に気が付いた。
Spotifyで最近一番集中できた再生リストを流して暫く制作。
そのうちに気になる箇所を見つけて修正。
また気になって修正・・
修正した場所が気になり、全体が気になり、イメージ自体が気になり手を止めた。
絵に対するダメ出しが始まると集中力がプツンと切れる。
たまにある事だが、その絵はもう少しで完成しそうだった。
「これで終えるのはちょっと嫌だな」
何色か色を足してみても浮かばない。
絵の具の重なりと水彩紙の模様で何か印象的なモノが浮かんでくるはずなのに、その絵だけは浮かばない。
色を足すほど気に入らなくなる。
失敗だけは嫌だ。
知らず気持ちが焦ってしまう。
「ちょっとまて・・せっかくここまで描いたのに」
F0という小さい作品だったけれど、そこに至るまで苦手な水張りを乗り越えてデッサンをして挑んだのに、手が止まるなんてありえない。
何とか、足掻いてみた。
同じテーマで描いた絵を参考にしながら向き合った。
イメージを描き留めた下書きを見ても、もう何も浮かばない。
足掻いた分だけバランスが悪くなった。
「色を足し過ぎた」
水彩絵の具は塗り重ねて修正が出来ない。
水彩紙の強度を考えて、今の自分ではこれ以上は出来ないと思った。
「失敗してしまった」
やはり失敗すると罪悪感が拭えない。

失敗する事に罪悪感がある。
学生時代から昨年まで知らずに、抱えていた気持ち。
そのお陰で「何かをやってみたい」と思っても行動できない事が多かった。

強迫観念ともいえるほど「失敗してはいけない」と自分に言い聞かせた。
「失敗するぐらいだったら動かない方が良い」
行動にブレーキをかけてしまう事が多かった。
「失敗してはいけない」と言われて育ったわけではない。
しかし、なぜか怖くて仕方がない。
行動する前に悪い事ばかり考えてしまうのだ。
「失敗を恐れず行動しよう」
何かを始めようとする時に声を掛けられたことがある。
笑顔で答えても内心は「それは無理」とフェードアウトする事もあった。
とにかく、何かが出来なかった事を想像すると足がすくむ。

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