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【読書メモ】『つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み』(著:猪谷千香)

能登半島地震の被災地で、避難所に賞味期限の切れた食品が届けられるなど、「迷惑な支援物資」が問題となっている。

そんな中、公益社団法人「日本図書館協会」(JLA)は「緊急支援物資などで、被災地、特に避難所に直接、本を送ることはやめましょう」と呼びかけている。日本図書館協会が、一般を対象にこうした呼びかけをするのは初めて。

日本図書館協会によると、阪神・淡路大震災や東日本大震災では、被災地に本が送られたが、置き場所に困ったり、読書ニーズのミスマッチなどが起こり、廃棄せざるをえないケースもあったという。

出典:「能登半島地震「被災地に本を送らないで」」
(『弁護士ドットコムニュース』2024年1月16日)

ライターの猪谷千香さんとのお名前になんか見覚えが、と思ったら、確か10年くらい前に『走れ!移動図書館:本でよりそう復興支援』とあわせて読んだ覚えのある、『つながる図書館:コミュニティの核をめざす試み』の著者さんでした。当時、ともに印象深く拝読したことを覚えています。

図書館は私の書斎だ

出典:『つながる図書館:コミュニティの核をめざす試み』

「図書館は私の書斎だ」、そんな風に言い切る猪谷さん、その方がただの無料貸本屋ではなく、あくまで「利用者に寄り添う情報サービス機関」として変化をし始めている図書館たちについて取り上げた内容となっています。

確かに「本」は古くから慣れ親しんできた情報資源(メディア)の一つですが、それが全てではなく、少し前からは新興のデジタルメディアもその収集対象となりつつあります。

私の基本的な考え方は、『知識は万人のものである』ということ。

出典:『つながる図書館:コミュニティの核をめざす試み』

その根底にあるのは図書館の社会的使命、「様々な情報資源を収拾し、必要とするすべての利用者に情報を提供すること」との点でしょうか。そして、それらを語るための題材として取り上げられているのは、「武蔵野プレイス」「千代田図書館」「小布施町まちとしょテラソ」「鳥取県立図書館」「武雄市図書館」「伊万里市民図書館」「国立国会図書館」「飯能市立図書館」、そして「島根県海士町の図書館」など、全国から多種多様に。

利用者目線からいえば、図書館にカフェや書店があり、夜まで開館していることは無条件にうれしい。

武蔵野プレイスでめざしていたのは、ひとことでいえば、『市民の居場所』です。

出典:『つながる図書館:コミュニティの核をめざす試み』

そういえば地元からも近い「武蔵野プレイス」は一度、息子を連れて言った覚えがあります。図書館だけではなく、生涯学習系のサービスを幅広く提供している公共施設といった方がよいかもしれません、敷地内には芝生もあって遊ばせたなぁ、、ともなんとなく。

四つの機能とは、「図書館機能」「生涯学習支援機能」「青少年活動支援機能」「市民活動支援機能」だ。

出典:『つながる図書館:コミュニティの核をめざす試み』

様々な生涯学習施設の機能が、上手く調和して、双方向での相乗効果として結実していくと面白いのですが、、年報とかで使用状況も出ていますが、利用率の目安とか個人的には気になります(年度またがりで比較してみようかな)。

この十年で全国に広がりつつある図書館による地域の課題解決のためのビジネス支援の一例だろう。 

出典:『つながる図書館:コミュニティの核をめざす試み』

佐賀県武雄市はTSUTAYAとコラボした図書館をつくったことで、賛否両論入り混じりながら話題にもなっていたので、ご存知の方もおられるかもしれません。個人情報の取り扱いや公共性の担保、商業施設との棲み分けなど、懸念点も多く指摘され、実際に問題にもなっていたようですが、それでも、まずはやってみないと分からないでしょうし、やりながら課題解決していくのも一つの手段ではないかなと、個人的には。

(武雄市図書館は)図書館でありながら、地域経済にも影響を与えています 

出典:『つながる図書館:コミュニティの核をめざす試み』

ちなみに、武雄市図書館の集客力は飛躍的に高まり、宿泊客や車での観光客などのシャワー効果で地域経済にも影響を与えたとのこと(試算で年間3-4億)。地元だけではなく、市外・県外からも多くの方が来られていて、これは非常に興味深い現象だなぁ、と思った事を覚えています(スタバもあるのはいいですよね、羨ましい)。

ただ、武雄市のこの成功は指定管理者制度の「功」の部分でしょうが、同時に、表に出てこない「罪」の部分、特に雇用が不安定であるがゆえにサービスの継続提供が不安定になりがちとの辺りについても、把握しておきたいとは、同じく指定管理者として公共施設の運営に携わっている身としての実感です。まぁ、この本を手に取った当時は、将来的に同じ指定管理者との立場に身を置くことになるとは予想だにしていませんでしたが、、人生はこれだから面白い、、閑話休題。

(図書館の新しい価値は)いろいろな人が訪れ、いろいろな情報が揃っています。新しい情報と人がクロスし、出会える。

出典:『つながる図書館:コミュニティの核をめざす試み』

人が情報を求めるのは、やや大仰に言えば「一人一人が、自分に自信と誇りを持って生きていくため」と思います。そのための「情報のハブ(本書ではコミュニティの核と表現されています)」となる施設が、図書館に代表される「生涯学習施設」に求められていくのかなぁ、特に地域に根差しての、なんて考えてもみたり。

図書館は結局、人じゃないですか? 

出典:『つながる図書館:コミュニティの核をめざす試み』

図書館に限らず、公共性の高い生涯学習系の施設には、楽しんで、喜んで帰っていただくような、居場所としていけるよう、それには設備等もですが、やはり、出迎える職員も利用者にとって心地よい存在でいないとなぁ、とも自戒を込めて(不機嫌な職員がでかい顔をしている所に行きたいとは思わないでしょうし)。そういや最近「サードプレイス」とのフレーズはあまり聞かなくなったような、、アンテナが縮こまっているのか、、「居場所」との言葉に転嫁されているのか、、少し気にしてみようかな。。

そいえば著者の猪谷千香さん、最近は、と思ったら、図書館ネタで興味深い一冊を出されているようです、、鹿児島か、今度手に取ってみよう。


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