【読書メモ】『馬と話す男:サラブレッドの心をつかむ世界的調教師モンティ・ロバーツの半生』(著:モンティ・ロバーツ / 訳:東江一紀)
『セカンドキャリア 引退競走馬をめぐる旅』の参考文献で知り、図書館で借りてみた一冊となります(カーリル、やはり便利です)。
アメリカの伝説的な調教師・モンティ・ロバーツさんの自伝的な半生の物語、冒頭はエリザエス女王への謁見のシーン(1989年)から、彼にとっての人生のピークから始まり、過去を紐解いていく構成となっています。
馬には先の大戦より前から、家業の一環で触れたのがきっかけのようです。1900年代前半のアメリカにおいての、当時の価値観(馬の育成方法の暴力性等)への反駁、父親との葛藤、そして自立、、ある程度は盛られてもいるのでしょうけど、日系人ネタなども入っていてなかなか興味深い内容でした。あと面白かったのは、かのジェームス・ディーンとも親交があったとの点かな、時代ですねぇ。
ロバーツさんが一番大切にされているのは、馬の気持ちに寄り添い、その自発性を信じること、決して暴力で支配することではなく。といっても、何も馬と人の言葉で会話をするわけではなく、相手の仕草や反応から、相手が望むことを読み取って、自然と自発性を発揮させるように、丁寧に真摯に向き合っていかれています。
ここ最近(といっても10年くらい前からでしょうか)、競争時のムチの使用回数制限などの措置(日本だと最大10回、連続だと5回まで)が設けられていますが、この時代はまだそこまでの意識はなく、馬を大事にするとの感覚が希薄であったことは想像に難くありません(と、1980年代のシリウスシンボリのエピソードを思い返しながら)。
それと興味深かったのは、ロバーツさんをモデルにした『ホース・ウィスパラー』との小説が書かれて、また『モンタナの風に吹かれて』との邦題で映画にもなったそうで、それなりにヒットしたらしいのですが、、
まぁ、どこでも、いつの時代でも、著作権等についての問題はあるのだなぁ、なんて風な考えを巡らせてみたりも。
今であっても、既存の価値観への挑戦は難しい側面があります、相手を納得させるだけの実績がなければなおさらに。特に家族(父親)とも対峙していかないといけない中で、一つ一つ実績を積み重ねながら、ご自身の道を貫いていかれます。決して、上っ面だけの言葉で惑わすのでもなく、丁寧に、確実に、馬たちに、そして周囲の人々にも寄り添って、時に向き合っていきながら。そういった意味では、ある種の教育論としても読んでみても面白いなぁ、とも。
「馬と話す男」なんてフレーズ、最初は『花の慶次』での松風を思い出したりもしましたが、慶次も別に人間の言葉で松風と話すわけでもなく、お互いに認め合い、尊重しあっているからこそ、自然と心が通じているとの描かれ方でした。現実でもそんな関係性を築くことができるのだなぁ、なんて風にも感じた一冊です。
余談ですが、今年はJRA70周年、記念サイトなるものが立ち上がり年度代表馬の壁紙ガチャが始まっていました、1日1回。(私にとっての推しの)エアグルーヴ、あたるといいなぁ(今日はモーリスさんでした)。
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