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燃えていいのは声帯だけだ!『#プロメア』 #応炎上映 レポ inTジョイ博多(6.20)

 映画『プロメア』を最初に観たのは、公開2週間前に開催された試写会にて。『キルラキル』が好きすぎるゆえに限界まで上がりきった事前のハードルをホップステップで軽く飛び越え、未体験の映像表現と圧の強すぎる俳優陣の演技、そして中島かずき語録がひっきりなしに飛び交うクライマックスバトルは劇伴の力も相まって、笑いと落涙が交互に起こる凄まじい映画体験を得た。その後はムビチケカードを握りしめ初日に一回、我慢できずもう一回…回数を重ねるごとに欲求を募らせていった。この映画を静かに観るなんてもう無理だ。叫びたい、身体の中で煮え滾るマグマを絶叫として放出したい。それはさながら、燃やし尽くしたいという内なる声に支配されたバーニッシュのよう。

 その悲痛なる叫びに応えるかのごとく、応炎上映が決定。6月20日の全国6劇場を皮切りに、各地でも順次開催が決定した。発声やコスプレ、ペンライト等光り物の使用が許されたこの上映は、劇場で燃え尽きるには最高だ。公式も公式サイトにて「応炎上映指南書」なるものをアナウンスするなど、ノリノリの姿勢で全国のプロメポリス市民を煽っていく。『プロメア』に熱狂するファンはもちろん、公式にとっても念願の企画であったことが窺えるこの一夜、本noteでは博多での上映の模様をお伝えしたい。この熱が伝播し、第2回3回と応炎上映の火を絶やすことなく、今後も続いていくことを願うばかりだ。

 6月20日の夜、Tジョイ博多の劇場ロビーでは、Superflyが歌う劇中歌「覚醒」がリピートで流されていた。劇場の粋な計らいにテンションが上がったのか、上映一時間前の時点であちこちでペンライトの光が漏れたり、「クレイ・フォーサイトがいかにしんどいか」というトークで開場前から燃え尽きている婦女子の方々の姿が目立った。誰もが皆待ちきれないといった様子で、入場開始のアナウンスを待ちわびていた。

 筆者が選んだ席は前から4列目のD列中央。後ろが通路のこの列は、ペンライトを掲げる動作がしやすく、前方列のため声を伝播させるにはもってこいの位置。ペンライトに照らされた場内を見るためには振り向かなくてはならない難点はあるが、これが最初で最後になるかもしれないという不安から、どうしても率先して盛り上げたいという意思に惹かれ、あえてこの座席で挑むことに。

 晴れて満席完売となったプロメポリス博多のシアター8、場内を見渡すとほとんどが女性客で、その割合は男女比2:8といったところ。本編開始前から予行演習として各々がペンライトを振る様は、まるでアイドルのライブ会場を思わせる。そんな華やかな空気が漂う中、お土産のピザポテトを隣近所の方に押し付ける不審者がいた。私だ。マヒシュマティ王国民の血が抜けきらないのか、ついこういう仕掛けをしてしまう。この場を借りて、快く受け取ってくださった市民の方々にお礼を申し上げます。

 実のところ、このTジョイ博多では事前の前説や特殊なアナウンスがないハードモードな出だしで、本編前の予告編でも戸惑いの雰囲気を肌で感じられた。まばらに挙がる小さな声に不安を隠しきれなかったが、みんな大好き映画泥棒のマナーCMになると空気が一変!赤のペンライトをサイレンに見立て振り回す者が現れ、場内は笑いに包まれる!そのテンションを保ったまま、ついに本編が始まった。

 ここからはおなじみの光景。「東宝~!!」「エックスフラッグ~!!」「トリガー~!!!!!!!!!!」の順に、ありがとうの大声援が場内を包み込む。この!マークの量を声量として、やはり一番声が挙がるのは我らがTRIGGERへのラブコール。そのまま映画はシリアスなオープニングへと移行するのだが、最前列ではペンライト三本を三角形の形に掲げ、劇中のプロメアを再現したユニークな試みがなされており、ボルテージは最高潮に。それに続けとばかりに、OPのスタッフロールでも「今石さ~ん!!!!」「中島さ~ん!!!!」「澤野さ~ん!!!!!!!!!!」と黄色い声援が挙がっていく。驚くことにこの場面では音楽を担当した澤野弘之氏への声援が一番大きく、劇伴そのものの人気を物語っていた。

 次々と人々がバーニッシュに覚醒し、世界が燃え上がる緊迫したオープニング。それに対し博多の民は「やめてー!」「怒らないでー!」と宥める一方、いざ火を噴くと赤や紫のペンライトでその目覚めを祝い、「やっちまえー!!!」と強火な叫びが挙がる。手のひら返しが早すぎる。最高だ。

 続くアクションシークエンスでも、盛り上がりは尽きなかった。ボーカル曲「Inferno」は手拍子や歌唱で応えつつ、バーニングレスキューの面々が登場する度に大歓声。TRIGGERお決まりの字幕演出は、発声上映に適した大変ありがたい仕掛けである。大スクリーンがキャラクターのアップと名前の字幕で埋め尽くされると「バリス!」「隊長!」とコールが挙がる。

 すでに最高潮に思われたテンションも、ガロやリオの登場と共にさらなる天元突破へ。ガロには赤、リオにはプロメアの炎を模した紫やピンクの光が当てられ、「ガロー!!!!!!!!」「リオー!!!!!!!!」の大合唱が止まらない。とくに会場の空気はみなリオ推しであり、アクションシーンは拍手喝采だし、通常の何気ない会話シーンでも「かわいい…」という口から漏れ出たような悲鳴が次々に各所で挙がる。リオに対する共通認識は「カワイイ」であり、その熱は会場の男子(主に私)をも飲み込み「今日も可愛いよ!」だなんて彼氏面してしまう始末。

 すでに体力使い果たしたのではないかとも思えるアクションシーンを終え、ヴァルカン大佐登場時には一斉に静まるという無言の一体感も生まれ始める。この映画に限った話ではないが、応援(発声)上映の掛け声は悲鳴・再現・ツッコミだ。それも作品愛があって初めて成り立つものだが、博多の民はとても訓練が行き届いている。バーニッシュへの差別について議論するバーニングレスキューには「そうだそうだ!」と共感を示し、ガロとアイナの氷上でのやり取りにはヒューヒューとはやし立てる。後半のシーンになるが、瀕死のリオをガロが人命救助するシーンでは打ち合わせたわけでもなくみな静まり、祈るような空気を共有し、リオの復活を心から喜んだ。映画『プロメア』を何度も観て、理解した者たちならではの一体感は、これ以上なく心地いい。

 さて、今回の応炎上映におけるMVPは誰かと言われれば、ガロでもリオでも、あのクレイ・フォーサイトでもない。観た人にだけわかる表記になるが、場内の心を最も一つにしたのはあのジジイである。ジジイの人気たるや凄まじく、一瞬でも映ろうものなら「ジジイ!」と声が挙がり、彼がバーニッシュたちへの裏切りを明らかにするシーンでは「クソジジイ!!!」とピッタリ声が合った。まるでアイドルのライブ会場と評した手前申し訳ないのだが、博多の民の語彙が一斉に荒くれるこの瞬間の衝撃は、二度と忘れられない。

もう一つの忘れられない失敗談

 映画『プロメア』は鑑賞時の体感が早すぎることに定評があるが、こと応炎上映においては通常上映の1.5倍(当社比)の感覚で進み、あっという間にクライマックスになだれ込んでいく。以下、心に残った名場面をハイライトでご覧ください。

・クレイ「ついてきたまえ」
 みんな「はい!!!
・(氷上でアイナをポイしちゃうガロに)
 「そういうとこだぞー!!!
・「ビニー!」「ビニーかわいい~!!」
 (小声の低音で)「中身ケンコバやぞ
・ジジイが大佐に凍らされるシーンで拍手
・エリス「最期の晩餐よ」
 お姉さん「えっむり…」「ひじき…?
・ガロ「この炎…泣いてるのか…?」
 \ナカナイデー/   \カワイイー/
・クレイカイザーXに合せてペンライトを交差させる博多民
 「エックス!」「エックス!

 ノリと勢いそのままに、最終決戦は映画とこちらの体力とのガチンコ勝負へ。みんな大好き滅殺開墾ビームは、タイミングを合わせるのが難しく苦労するものの、その後の瞬砕パイルドライバーのキメ台詞「紙! 同然!」では完璧なシンクロを叩きだし、博多民のクレイ・フォーサイト化が深刻なものになっていく。やたらクレイの台詞への超反応が鋭く、「度し難いなァ!!!」「そーこーまーでーだァァー!!」「救世主だよォ!!じぃん↑るいのォーー!!!」が、完璧に揃った時は、恐怖さえ覚えた。みんな何回観てるの…。

 会場総クレイ化を果たしつつも、やはりガロとリオの人気は健在。ラストの地球大炎上シーン、再び流れる「Inferno」に合せて、緑の炎を模した光を左右に振る観客たち。折しも、先日開催された澤野氏のライブを彷彿とさせる光景に、目頭が熱くなる。

 楽しい時間もあっという間に過ぎていく。一切衰えることのなかったテンションの火は燃え盛り続け、ラストに流れるタイトルでは万雷の拍手が自然と鳴り響いた。また、エンディングを飾る名曲「氷に閉じ込めて」を歌うファンや、エンドロールの背景の色の変化に併せ黄色⇒赤へと変化していく劇場の光の一体感は、何度も後ろを振り返ってしまうほどに、美しかった。

 かくして、応炎上映は幕を閉じた。場内に灯りが点くころにはもう一度大きな拍手が鳴り、「ありがとー!!」「お疲れ様でしたー!!」の声援で、作り手と劇場、そしてお互いを称えあった。冷房の効き目を疑うほどに身体は熱く火照り、楽しさの余韻が抜けきれぬまま、博多のプロメアたちは完全燃焼を遂げ、劇場を後にした。

 『プロメア』応炎上映は、予想通り最高のイベントであり、いかに今までの鑑賞体験が不完全燃焼であったかと痛感させられた。試写会での初見時の最中、何度も声を挙げそうになるのを必死に抑えたが、その枷を解かれた瞬間に、映画『プロメア』は何倍もの大きな炎となって、心のエンジンに火を灯してくれる。もはや通常上映では満足できない身体にされてしまったし、翌朝になっても現実に帰還することが困難だったほどだ。

 今回の博多もそうだが、全国でも完売が相次いだという応炎上映。つまり、惜しくもチケットを手に入れられなかった、不完全燃焼なファンがたくさんいるはずだ。集客力はまだまだ衰えない。映画『プロメア』は単体でも最高の映画だが、応炎上映による体感性を得ることで、サイコーを超えてしまう。繰り返すが、このレポートは次なる応炎上映開催を願うものであり、あの会場にいた全てのファンがアンコールを望んだはずだ。その想いに応えてくれる公式や劇場のアツい魂に、これからも呼びかけ続けたい。

隣に座ってたバーニッシュも何か書いてます。


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