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レジの話② 「現金のみでございます」本業邁進病が始まる
前回はレジに、哀しき「バカヤロウ」たちを育てた小売業界の思考論理を紹介した。今回は経営層にはびこる「バカヤロウ」たちを紹介したい。
👉前回はこちら
クレジットカードがご利用いただけます
デビットカードもご利用いただけます…
90年代から徐々に、クレジットカードが使える店が増えていった。2000年には銀行口座から即時引落するデビットカードも登場した。
ただバーコードをスキャンして現金の受け渡しをするだけだったレジに、決済方法に応じた処理が増えていき、多能工化が始まった。
決済機能の増加に伴い、多くの場合はレジ周りに後付けの端末が増えていった。小型の端末と配線コードが増え、決済方法に合わせてそれぞれの端末を操作して決済をし、レジ本体とデータを連動させて会計を済ませた。
それだけでは済まない。クレジット支払いの場合は領収証がどうだとか、デビットカードで購入し返品された場合はどう処理をするだとか、商品券とカードを併用する場合は処理する順序がどうだとかいった、操作方法の習得や決まりごとが増えていった。
顧客を囲い込め、ポイントカードの大流行!
「顧客の囲い込み」
「安売りからの転換」
「ストアイメージづくり」
などという名目で各社でポイントカードも林立していった。
インターネットの普及により、ホームページやオリジナルのデザインチラシ、広告が作れるようになり、「自社オリジナル」がアイデンティティになりつつあるとともに、スピーディーな判断力が経営陣に問われた時代。
バブル崩壊の不景気に反比例して起きた、生活小売りの好況がそれを後押しした。
バブルに浮かれず地道な商売をしていた我らに時代は微笑んだ。
ここからは我ら庶民派の時代だ。
取って代わったIT時代にしっかり乗っていくのは我らだ。
そう信じ、次なる時代の浮かれ者たちとなっていった。
ポイントカードは、来店客をポイントを餌に固定客化し、商品の安売りだけではない常態性のある来店動機を醸造しようというものだ。
この局面にあった私はというと、客の利便性に直結しないところでの現場作業数の増加は好むところではなく店員としては冷めた目で見ていた。
価格やサービス構造はできるだけシンプル明快にして、その分を売価へと落とし込み、客と店とで利益を折半すべきだというのが私の考え。
店側の謀略を張り巡らさずに、その分の浮いたコストは折半すればよい。
余計な販促費や、設備・施策投資に売上比で20%かけるのであれば、
販促費を10%引き下げて、
その分、売価を5%引き下げ、
利益率も5%引き上げればよい。
決済手段の増加は少なからず客の利便性に繋がるであろう。
確かにポイントも貯めれば割引やサービスを受けられることで客の利益につながるのであろうが、それを餌に「繰り返しの」来店を求めていることが透けて見えると、目の前に人参をぶら下げられているような無粋さを感じる。
幸い、私の勤務先はポイントカードを作らなかった。
ポイントカードは早くも過去の遺物となる
この頃に流行った各企業のポイントカードは、そう遠くない後にハウスカードと呼ばれ、現在主流のポイントカードとは区別されるようになる。
「Tポイント」の登場だ。
これは間違いなく時代の変革を引き起こし、日本の産業構造にも多大なる影響を与えた。
出版業界との法廷闘争や他業種業態とのアライアンスなど、奮迅の勢いで既得権に挑戦し続けたのだが、音楽業界はCDセールスが絶頂期を迎え、レンタル業界も激変した時代背景に目を奪われ、Tポイントの衝撃はそれほど世間の記憶に残っていないようだ。
この話題はまた別の機会に。
これを機に、現在に繋がるポイントシステムの時代を迎え、どの陣営に加わるかが業界全体を巻き込んだムーブメントとなった。dポイントや楽天ポイントなどは早々にこのムーブメントに目をつけて参戦し、Tポイントの独走優位を阻止することとなる。
ポイントカード導入に急ぎ、トラウマを抱えた
自社独自のポイントカードづくりをはじめた企業はあっという間に方針転換を迫られることになった。
その潮流の変化の速さに対し、「自社で立ち上げたばかり」との理由で経営陣の判断が出遅れた企業は、そのポイント戦略において後塵を拝することとなり、そのトラウマから新しいことを受け入れることに臆病になる。
彼らはこれ以降、誰にも響かない「本業に邁進」「商品本来の価値」などをお題目にクレカ導入にも、さらには2018年からさらに急激な変化を迎えた「キャッシュレス時代」にもいつまでも尻込みし、社会の変化に目をそらし続けた。
死に体のまま生き永らえた彼らが社会復帰を果たしたのは、コロナ禍を経てようやく自らが少数派に属することに気づき、キャッシュレス導入に腹を決めた時だった。
ポイント政策に浮かれ、落胆した日から約20年間、
Tポイントのトラウマに侵された企業たちだった。
企業の判断力が明暗を分けた。その判断基準は?
「これは違う」と、ポイント争いに加わらなかった企業の多くは、ポイントカード時代には「どこ吹く風」と人事システムや組織戦略、物流システムなどへの投資を続け力を蓄積していった。
そして「これは客の利便性を高める」と判断した、キャッシュレス時代には先陣を切って導入し普及の推進役となった。
クレジットカードやデビットカードにポイントカード、プリペイドや電子マネーにQRコード決済、キャッシュレス。
自社の利益と顧客の利益、
何のために導入を決めたのか。
明暗を分けてきたのはそこにあったと思う。
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