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職業の大前提

山田ゆり
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「いやー、助かる。ありがとう。」

のり子より30㎝以上背が高い社長が、試算表を手にのり子の近くにわざわざお越しになりおっしゃった。

「明日の取締役会で、できれば〇月分の試算表が欲しかったんだ。
△月分(〇月分よりひと月前)で説明しなければいけないかなと思っていたが
直近の〇月分があれば、信憑性がぐんと高まるから。助かったよ。」


のり子はマスク越しに口角をあげて目じりに皺を寄せて思いっきり笑顔で応えた。
「そういっていただけると頑張った甲斐があります。ありがとうございます。」


〇月分の試算表の進捗状況は会計事務所から来る予定が一日遅れていた。
そしてやっと試算表の数字がかたまったのは15時頃だった。
この時間帯になると、会計事務所から試算表及び経営状況の書類は週明けになるのがこれまでの流れだった。

仕方ないよな。


しかし、諦めずに会計事務所にお願いはしてみようとのり子は思った。
そして、明日は取締役会があること。できれば〇月分の試算表があるととてもありがたいという旨の文章を書き、FAXを送った。

すぐにはお返事はこなかった。

そうだよな。
会計事務所だってそれぞれ事情がおありだ。わが社だけが顧客ではない。
無理なことをお願いしてしまったよな。
ま、仕方ない。諦めよう。

それに、今日、試算表が来たら明日の取締役会用の書類をこれから私が作らなければいけない。ということは残業しないと間に合わない。

つまり、試算表が来ない方が自分には都合がいいからそれでいいか。
何事も諦めが肝心かも。


のり子は複数のネットバンキングを駆使しながらその日の現預金の最終確認を進めていた。

16:30頃、会計事務所から、〇月分の試算表ができましたのでこれからお預かりした書類と一緒にお持ち下さるとの電話が入った。


たちまちのり子のエフィカシー(私は出来る、という感情)が上がってきた。

よしよし。ではネットバンキングの表は手早く終わらせよう。
そして、試算表が届くまでにあれとあれを準備しよう。

のり子の頭の回転が早くなってきた。
これこれ。
私の仕事が誰かのお役に立っていると思える瞬間。



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「職業とは自分がやりたいことであり、
社会に機能を提供できるものであることが大前提です。」
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苫米地 英人 著
「オーセンティック・コーチング」より抜粋



今の仕事が嫌な人はたくさんいる。
嫌でも生活の為などの理由で、嫌々続けている人はたくさんいる。


それに比べてのり子は経理が好きで、
そしてその最終目的である決算が大好きだ。



好きなことで社会に貢献できることは幸せだと思う。









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山田ゆり
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