本音は言えない(ショートショート)【音声と文章】
山田ゆり
00:00 | 00:00
※note毎日連続投稿1515日をコミット中!
1486日目。
※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、
どちらでも短時間で楽しめます。
おはようございます。
山田ゆりです。
今回は
本音は言えない(ショートショート)
をお伝えいたします。
ここは社長室。
今日は業務改善委員会の方との面談である。
最近、仕事の遅延が続いていて、その原因追及の為に事務係が業務改善委員からヒアリングを受けることになった。
上司と数人の担当者が一緒に呼ばれ、けい子も現状を聞かれた。
「なぜ、書類が滞っているのでしょうか」
改善委員の方が私たちに質問を投げかけた。
それに対し事務のトップである上司は「いろいろと仕事が立て込んでいて緊急なことの対処をしていて遅れています」とお答えした。
けい子はうんうんと頷く。
本心を言ってはいけないと自分に言い聞かせながら。
その後、これまで手作業でしていたことを電子化する方向も視野に入れてみましょうと改善委員の方から提案があった。
突然、席を外していた社長がノックして入ってきた。
「ああ、すみません。ちょっと探し物が…。あぁ、ありました。ありました。失礼いたしました」
社長は書類のヤマで散らかった机の上をごそごそ探し、その中の書類を持って出て行かれた。
その後、数分したのち、
「それでは、私がいると言いにくいこともあるかもしれませんので、私は退席します。
一人一人にお聞きしてみてください」
そう上司が提案し、その後、1対1の面談になった。
開け放した窓から見える木々は風でさらさらと揺れていた。
カッコウの声が響く。
時々、タイヤがジャリジャリと砂利を踏む音をたて、社長室の傍を車が通る。
2軒先のパン屋さんからは焼きあがったパンの香ばしい匂いがしてきた。
そうか、もうそんな時間かとけい子は思った。
けい子はつるっとした革張りの椅子を少し前に座り直した。
「なぜ、書類が滞っていると佐藤さんはお思いでしょうか」
と聞かれた。
改善委員の方の目が眼鏡の奥で優しく微笑んでいた。
けい子は考えた。
書類の遅れの原因は彼女(上司)にあるが、彼女を悪く言ってはいけない。
それは忘れないようにしようと何度も自分に言い聞かせた。
そしてけい子は言葉を選んで話し出した。
翌朝。
白い世界からけい子はふわぁっと現実に戻ってきた。
ベッドに横たわりながら昨日の会話を振り返ってみた。
あの会話の中で、つい、気を許してしまい、少しだけ彼女に対する愚痴を言ってしまった。
あれは言わなかったほうが良かったと反省した。
ま、いいか。
その場に彼女はいないのだから。
そう思い、目覚ましが鳴るまでの時間、もう少し寝ていようと目を閉じた。
しかし、突然、あることが閃き、心臓のドクドクが耳の後ろから聞こえ始めた。
けい子は両手で頭をさすった。
もしかして、あの時、ボイスレコーダーを仕込まれたかもしれない。
社長がお見えになったあの時。
最初からその手はずだったのかもしれない。
社長が来たらその後、業務改善員会と二人だけにさせて私たちの本心を探る…。
そうかもしれない。
そんなことを思いつく人である。
わが社には会議の記録用にボイスレコーダーが複数ある。
会議の音声はDVDで保存している。
ボイスレコーダーを管理しているのは彼女だ。
あぁ、やってしまった。
昨日、自分はどんなことを言っただろうか。
記憶を辿っていく。
極力、彼女をさげすむような発言は控えたような気がするが言葉は生き物だ。
こちらが意図しない受け止め方をされることはたくさんある。
残念なことにけい子は昨日のことについて
一字一句は覚えていない。
今日、彼女はどんな顔をするだろうか。
私の思い過ごしであってほしい。
私の思い過ごしだったら
私が会社を信頼していないということだ。
逆に、私の予想が的中していたら
私たちは信用されていないということだ。
どっちなのだろうか。
考えても仕方ない。
もう、過ぎたことはもとに戻せない。
覆水盆に返らず。
だから社内では本音は言えない。
今回は
本音は言えない(ショートショート)
をお伝えいたしました。
本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。
ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。
山田ゆりでした。
◆◆ アファメーション ◆◆
.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。
私は愛されています
大きな愛で包まれています
失敗しても
ご迷惑をおかけしても
どんな時でも
愛されています
.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。゚+..。*゚+
1486日目。
※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、
どちらでも短時間で楽しめます。
おはようございます。
山田ゆりです。
今回は
本音は言えない(ショートショート)
をお伝えいたします。
ここは社長室。
今日は業務改善委員会の方との面談である。
最近、仕事の遅延が続いていて、その原因追及の為に事務係が業務改善委員からヒアリングを受けることになった。
上司と数人の担当者が一緒に呼ばれ、けい子も現状を聞かれた。
「なぜ、書類が滞っているのでしょうか」
改善委員の方が私たちに質問を投げかけた。
それに対し事務のトップである上司は「いろいろと仕事が立て込んでいて緊急なことの対処をしていて遅れています」とお答えした。
けい子はうんうんと頷く。
本心を言ってはいけないと自分に言い聞かせながら。
その後、これまで手作業でしていたことを電子化する方向も視野に入れてみましょうと改善委員の方から提案があった。
突然、席を外していた社長がノックして入ってきた。
「ああ、すみません。ちょっと探し物が…。あぁ、ありました。ありました。失礼いたしました」
社長は書類のヤマで散らかった机の上をごそごそ探し、その中の書類を持って出て行かれた。
その後、数分したのち、
「それでは、私がいると言いにくいこともあるかもしれませんので、私は退席します。
一人一人にお聞きしてみてください」
そう上司が提案し、その後、1対1の面談になった。
開け放した窓から見える木々は風でさらさらと揺れていた。
カッコウの声が響く。
時々、タイヤがジャリジャリと砂利を踏む音をたて、社長室の傍を車が通る。
2軒先のパン屋さんからは焼きあがったパンの香ばしい匂いがしてきた。
そうか、もうそんな時間かとけい子は思った。
けい子はつるっとした革張りの椅子を少し前に座り直した。
「なぜ、書類が滞っていると佐藤さんはお思いでしょうか」
と聞かれた。
改善委員の方の目が眼鏡の奥で優しく微笑んでいた。
けい子は考えた。
書類の遅れの原因は彼女(上司)にあるが、彼女を悪く言ってはいけない。
それは忘れないようにしようと何度も自分に言い聞かせた。
そしてけい子は言葉を選んで話し出した。
翌朝。
白い世界からけい子はふわぁっと現実に戻ってきた。
ベッドに横たわりながら昨日の会話を振り返ってみた。
あの会話の中で、つい、気を許してしまい、少しだけ彼女に対する愚痴を言ってしまった。
あれは言わなかったほうが良かったと反省した。
ま、いいか。
その場に彼女はいないのだから。
そう思い、目覚ましが鳴るまでの時間、もう少し寝ていようと目を閉じた。
しかし、突然、あることが閃き、心臓のドクドクが耳の後ろから聞こえ始めた。
けい子は両手で頭をさすった。
もしかして、あの時、ボイスレコーダーを仕込まれたかもしれない。
社長がお見えになったあの時。
最初からその手はずだったのかもしれない。
社長が来たらその後、業務改善員会と二人だけにさせて私たちの本心を探る…。
そうかもしれない。
そんなことを思いつく人である。
わが社には会議の記録用にボイスレコーダーが複数ある。
会議の音声はDVDで保存している。
ボイスレコーダーを管理しているのは彼女だ。
あぁ、やってしまった。
昨日、自分はどんなことを言っただろうか。
記憶を辿っていく。
極力、彼女をさげすむような発言は控えたような気がするが言葉は生き物だ。
こちらが意図しない受け止め方をされることはたくさんある。
残念なことにけい子は昨日のことについて
一字一句は覚えていない。
今日、彼女はどんな顔をするだろうか。
私の思い過ごしであってほしい。
私の思い過ごしだったら
私が会社を信頼していないということだ。
逆に、私の予想が的中していたら
私たちは信用されていないということだ。
どっちなのだろうか。
考えても仕方ない。
もう、過ぎたことはもとに戻せない。
覆水盆に返らず。
だから社内では本音は言えない。
今回は
本音は言えない(ショートショート)
をお伝えいたしました。
本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。
ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。
山田ゆりでした。
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