言えばいいのに(ショートショート)【音声と文章】
山田ゆり
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※note毎日連続投稿1700日をコミット中! 1681日目。
※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、
どちらでも数分で楽しめます。
おはようございます。
山田ゆりです。
今回は
言えばいいのに(ショートショート)
をお伝えいたします。
けい子とヒロシは黙々と食べていた。
「鮭、焼きすぎたかな?」
けい子は鮭のゴツゴツを口の中に感じながらそう思った。
「この卵焼きも美味しい。けい子の料理は最高だ」
しっとりした卵焼きを食べながらヒロシは心の中で思った。
「ヒロシはいつも食事の時は黙っている。まずいのかなぁ。
そうしてみればこの卵焼きは少ししょっぱいかもしれない。」
けい子は心の中でそう思い、残念な卵焼きの存在を打ち消すように噛みしめた。
「う~ん。この味噌汁も昆布の出汁がきいてえのきと大根の組み合わせは最高。けい子の料理は世界一だ。」
そう思いながらヒロシは味噌汁の香りを楽しんだ。
「味噌汁、イマイチかもしれない。どうしても昆布を煮すぎてしまうのよね。大根は拍子切りよりもさいの目の方が良かったかな。」
けい子は心の中でそう言って味噌汁を吸った。
食事が終わり、ヒロシはごちそうさまも言わずに席を立った。
何も言わないのはそう育ってきたからであり、食事に対しての不満があるのではない。
けい子の食事はいつも美味しい。
ヒロシは歯磨きをして鏡の前でヘアスタイルを整え、家を出ていった。
ヒロシは「食事中は話をするものではない」と親から厳しく躾けられて育った。特に厳格な父にはよく注意されたものだ。
だから食事中に黙って食べるのはヒロシにとっては当たり前のことだった。
ヒロシは胃のあたりを軽くさすりながら
「今朝の料理もおいしかったなぁ」と満足しながら駅に向かった。
ヒロシを見送ったけい子は
「ヒロシの皿や茶碗は綺麗に全て食べられているが、美味しくなかったものを無理やり食べたのかもしれない。」
そう思った。
けい子は自分の料理を喜んで食べてもらえないことに毎日自信を失っている。
どこがいけないのだろうか。
ヒロシに聞いてみたいが、そんなこと聞かれても、と言われそうで聞けない。
私たち、いつからこうなってしまったんだろう。
付き合っていた頃は何でも話していたのに。
美味しいものを食べた時「美味しいね!」って二人で目を見開いていたのに。
この人とならうまくやっていける、そう思って結婚したのに。
毎回の食事の時、ヒロシはいつも無口になる。
やっぱり私の料理が口にあわないのだろうか。
けい子はワイワイと話しながらご飯を食べる家庭で育った。
特に博学な父はけい子達にいろいろな考え方を食事中に語ってくれる人だった。
普段けい子が読むこともない孔子や孟子の話も聞くことができた。
食事は楽しむものだとけい子は感じながら育ってきた。
会話のない食事の時間はけい子にとって息が詰まる時間だった。
特に美味しくもない料理を毎日食べさせられるヒロシは、もしかして地獄の時間なのかもしれない。
優しさゆえにそれをけい子に言えないのかもしれない。
優しいヒロシをこれ以上苦しめていいのか。
私から身を引いた方がいいのではないか。
けい子は引き出しに忍ばせておいたその用紙を取り出し、しばらく眺めていたが引き出しの奥にそれをまたしまった。
今回は
言えばいいのに(ショートショート)
をお伝えいたしました。
本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。
ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。
山田ゆりでした。
◆◆ アファメーション ◆◆
.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。
私は愛されています
大きな愛で包まれています
失敗しても
ご迷惑をおかけしても
どんな時でも
愛されています
.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。゚+..。*゚+
※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、
どちらでも数分で楽しめます。
おはようございます。
山田ゆりです。
今回は
言えばいいのに(ショートショート)
をお伝えいたします。
けい子とヒロシは黙々と食べていた。
「鮭、焼きすぎたかな?」
けい子は鮭のゴツゴツを口の中に感じながらそう思った。
「この卵焼きも美味しい。けい子の料理は最高だ」
しっとりした卵焼きを食べながらヒロシは心の中で思った。
「ヒロシはいつも食事の時は黙っている。まずいのかなぁ。
そうしてみればこの卵焼きは少ししょっぱいかもしれない。」
けい子は心の中でそう思い、残念な卵焼きの存在を打ち消すように噛みしめた。
「う~ん。この味噌汁も昆布の出汁がきいてえのきと大根の組み合わせは最高。けい子の料理は世界一だ。」
そう思いながらヒロシは味噌汁の香りを楽しんだ。
「味噌汁、イマイチかもしれない。どうしても昆布を煮すぎてしまうのよね。大根は拍子切りよりもさいの目の方が良かったかな。」
けい子は心の中でそう言って味噌汁を吸った。
食事が終わり、ヒロシはごちそうさまも言わずに席を立った。
何も言わないのはそう育ってきたからであり、食事に対しての不満があるのではない。
けい子の食事はいつも美味しい。
ヒロシは歯磨きをして鏡の前でヘアスタイルを整え、家を出ていった。
ヒロシは「食事中は話をするものではない」と親から厳しく躾けられて育った。特に厳格な父にはよく注意されたものだ。
だから食事中に黙って食べるのはヒロシにとっては当たり前のことだった。
ヒロシは胃のあたりを軽くさすりながら
「今朝の料理もおいしかったなぁ」と満足しながら駅に向かった。
ヒロシを見送ったけい子は
「ヒロシの皿や茶碗は綺麗に全て食べられているが、美味しくなかったものを無理やり食べたのかもしれない。」
そう思った。
けい子は自分の料理を喜んで食べてもらえないことに毎日自信を失っている。
どこがいけないのだろうか。
ヒロシに聞いてみたいが、そんなこと聞かれても、と言われそうで聞けない。
私たち、いつからこうなってしまったんだろう。
付き合っていた頃は何でも話していたのに。
美味しいものを食べた時「美味しいね!」って二人で目を見開いていたのに。
この人とならうまくやっていける、そう思って結婚したのに。
毎回の食事の時、ヒロシはいつも無口になる。
やっぱり私の料理が口にあわないのだろうか。
けい子はワイワイと話しながらご飯を食べる家庭で育った。
特に博学な父はけい子達にいろいろな考え方を食事中に語ってくれる人だった。
普段けい子が読むこともない孔子や孟子の話も聞くことができた。
食事は楽しむものだとけい子は感じながら育ってきた。
会話のない食事の時間はけい子にとって息が詰まる時間だった。
特に美味しくもない料理を毎日食べさせられるヒロシは、もしかして地獄の時間なのかもしれない。
優しさゆえにそれをけい子に言えないのかもしれない。
優しいヒロシをこれ以上苦しめていいのか。
私から身を引いた方がいいのではないか。
けい子は引き出しに忍ばせておいたその用紙を取り出し、しばらく眺めていたが引き出しの奥にそれをまたしまった。
今回は
言えばいいのに(ショートショート)
をお伝えいたしました。
本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。
ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。
山田ゆりでした。
◆◆ アファメーション ◆◆
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