~女子高デビュー~ 未来を知るためにネガティブな過去を洗い出す【音声と文章】
山田ゆり
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自分から人に声を掛けられず独りぼっちの中学三年間を過ごし、勉強するしかなかったののり子は地域でも有名な進学校に入学した。
そこは百数十年の歴史がある、地域でも有名な女子高だった。
その学校は自転車で片道45分位の「街なか」にあった。
これまで周りが田んぼだけの小中学校だったのり子にとって、「大人の世界」へ飛び込んだような気がした。
同じ中学からはのり子を入れて2~3人しか入学していない、難関校だった。
勿論、のり子はその人たちとは話をしたことが無い。
だから知り合いがいない巨大な学校に一人で入学したようなものだった。
伝統があるその学校は校則がとても厳しかった。
制服もきちんとした格好でいなければならず、恐らく窮屈な思いをするだろうが、小6から今まで、自分に我慢を与えることをしてきたのり子は、校則を守ることはたやすいことだった。
靴や重い学生鞄には、学校の紋章が刻印された学校指定のものを使った。
白い靴下は必ず三つ折りにして履く事と言われ、当時、スティック型の専用糊を足首に塗り、靴下を折らずに履くのが流行っていたがのり子は校則通りに三つ折りにしていた。
つまり、「こうでなければいけない」を絵にかいたような人間だった。
皮靴はいつも靴磨きでピカピカになっていないと落ち着かないのり子だったから靴磨きはいつも学生鞄に入っていた。
入学式には母親と行った。
その日ものり子の母は着物を着ていった。
しかし、髪までには気が回らなかったようで、パンチパーマが伸びきったような髪型だった。
のり子は教室に入った。
そこにはそれぞれの出身校ごとに丸い輪ができていた。
女子だけしかいない。
当たり前である。
みんなできそうな顔ばかりだった。
話す相手がいて、誰もが堂々としているように見えた。
クラスには同じ出身校の子はいない。
のり子はここでも独りぼっちだった。
入学してまもなく、クラス委員長を決める日があった。
のり子は自分には関係のないことだと思い、静かにその時間を過ごそうと思っていた。
誰もクラス委員長になる人はいなかった。
そりゃそうだ。
クラス委員長とは名前は恰好いいが、結局はみんなをまとめたり、雑用が多い役目だから、進学校の生徒にとって、やりたくないことなのだ。
のり子はやりたくないというよりも、自分にはできない役割だったから、誰か自薦でも他薦でもいいからしてほしい~と思っていた。
沈黙が続いた。
「誰か、やりませんか?他薦でもいいですよ。」
議長が言う。
するとある女子が手を挙げた。
「はい!山田さんがいいと思います!」
という声が上がった。
「えーっ!私-!なぜに私?」
のり子は声のした方を振り向いた。
工藤さん?だったかな。
彼女は市内で一番頭の良い人だけが通っている中学卒の子。
その周りには、同じ中学卒の子が何人もいた。
その子らもうんうんと頷いていた。
のり子は工藤さんやその取り巻き達と話をしたことがなかったのにどうして私を推薦したのか分からなかった。
「すみません。私、無理です、できません。」
すぐにのり子は立ち上がって議長に言った。
しかし、その後、誰も自薦・他薦がなく、多数決を取ったら、クラス委員長はのり子に決まってしまった。
のり子は落胆した。
友達もいないのに、どうやってクラス委員長をしていけばいいのか。
その後、クラス委員長として初めて議長をした。
のり子は人前で話すのが全く下手で、ましては議長なんて、どのように話をもっていけばいいのか分からなかった。
しどろもどろしていて議題は決まらない。
どうしよう。どうすればいいの?
ふと、のり子をクラス委員長に推薦した工藤さんを見た。
推薦してくれたのだから、何か助け舟を出してくれるかもしれないと淡い期待をして彼女を見た。
しかし、工藤さんは
「そんなこともできないの?」というような顔でのり子を斜めに見ているだけだった。
やっぱり。
この人たちは自分がしたくないから、何も反撃できそうもない人にそれをやらせようと思ってのり子を他薦したのだった。
その話し合いは、つまりながらあともどりしながら、何とか終わった。
その後、皆さんに連絡事項をのり子が発表した時、工藤さん達は話をしていてのり子の話を聞こうとはしなかった。
それからものり子は議長としての役割をしていったが、クラスの中で影響力が強い工藤さん達たちには何も助けてもらうことはなかった。
高校の授業はどの教科も初回は先生の雑談で終わっていた。
「高校ってそういうものなんだ」
のり子はここで油断してしまった。
大好きな数学の初日がやってきた。
中学の時は体格の良い朗らかな先生で、のりこはその先生が大好きだった。
だからのり子は数学が大好きになった。
それは高校も続くだろうと思っていた。
高校に入って初めての数学の時間が来た。
眼鏡をかけた小柄な細めの髭が濃い先生だった。
今までの教科の先生は、自己紹介をしたり人生観を語られていた。
しかし、その先生は違っていた。
「はい、では授業を始めます。」と自己紹介もなく言われ、
いきなり黒板に数式をバーッと書き出し早口で説明をし出した。
のり子達は慌ててその数式をノートに写し始めた。先生の説明はもう頭の中で素通りしていた。
とにかく早く書き写さなければいけない。
先生が黒板に半分くらい書いたところでこちらを振り向いた。
必死にノートに写している生徒達を見てニヤリとした。
長くなりましたので、続きは次回にいたします。
※note毎日連続投稿1800日をコミット中! 1778日目。
※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む。
どちらでも数分で楽しめます。#ad
~女子高デビュー~
未来を知るためにネガティブな過去を洗い出す
※今回は、こちらのnoteの続きです。
↓
https://note.com/tukuda/n/n1ee829edbd77?from=notice
そこは百数十年の歴史がある、地域でも有名な女子高だった。
その学校は自転車で片道45分位の「街なか」にあった。
これまで周りが田んぼだけの小中学校だったのり子にとって、「大人の世界」へ飛び込んだような気がした。
同じ中学からはのり子を入れて2~3人しか入学していない、難関校だった。
勿論、のり子はその人たちとは話をしたことが無い。
だから知り合いがいない巨大な学校に一人で入学したようなものだった。
伝統があるその学校は校則がとても厳しかった。
制服もきちんとした格好でいなければならず、恐らく窮屈な思いをするだろうが、小6から今まで、自分に我慢を与えることをしてきたのり子は、校則を守ることはたやすいことだった。
靴や重い学生鞄には、学校の紋章が刻印された学校指定のものを使った。
白い靴下は必ず三つ折りにして履く事と言われ、当時、スティック型の専用糊を足首に塗り、靴下を折らずに履くのが流行っていたがのり子は校則通りに三つ折りにしていた。
つまり、「こうでなければいけない」を絵にかいたような人間だった。
皮靴はいつも靴磨きでピカピカになっていないと落ち着かないのり子だったから靴磨きはいつも学生鞄に入っていた。
入学式には母親と行った。
その日ものり子の母は着物を着ていった。
しかし、髪までには気が回らなかったようで、パンチパーマが伸びきったような髪型だった。
のり子は教室に入った。
そこにはそれぞれの出身校ごとに丸い輪ができていた。
女子だけしかいない。
当たり前である。
みんなできそうな顔ばかりだった。
話す相手がいて、誰もが堂々としているように見えた。
クラスには同じ出身校の子はいない。
のり子はここでも独りぼっちだった。
入学してまもなく、クラス委員長を決める日があった。
のり子は自分には関係のないことだと思い、静かにその時間を過ごそうと思っていた。
誰もクラス委員長になる人はいなかった。
そりゃそうだ。
クラス委員長とは名前は恰好いいが、結局はみんなをまとめたり、雑用が多い役目だから、進学校の生徒にとって、やりたくないことなのだ。
のり子はやりたくないというよりも、自分にはできない役割だったから、誰か自薦でも他薦でもいいからしてほしい~と思っていた。
沈黙が続いた。
「誰か、やりませんか?他薦でもいいですよ。」
議長が言う。
するとある女子が手を挙げた。
「はい!山田さんがいいと思います!」
という声が上がった。
「えーっ!私-!なぜに私?」
のり子は声のした方を振り向いた。
工藤さん?だったかな。
彼女は市内で一番頭の良い人だけが通っている中学卒の子。
その周りには、同じ中学卒の子が何人もいた。
その子らもうんうんと頷いていた。
のり子は工藤さんやその取り巻き達と話をしたことがなかったのにどうして私を推薦したのか分からなかった。
「すみません。私、無理です、できません。」
すぐにのり子は立ち上がって議長に言った。
しかし、その後、誰も自薦・他薦がなく、多数決を取ったら、クラス委員長はのり子に決まってしまった。
のり子は落胆した。
友達もいないのに、どうやってクラス委員長をしていけばいいのか。
その後、クラス委員長として初めて議長をした。
のり子は人前で話すのが全く下手で、ましては議長なんて、どのように話をもっていけばいいのか分からなかった。
しどろもどろしていて議題は決まらない。
どうしよう。どうすればいいの?
ふと、のり子をクラス委員長に推薦した工藤さんを見た。
推薦してくれたのだから、何か助け舟を出してくれるかもしれないと淡い期待をして彼女を見た。
しかし、工藤さんは
「そんなこともできないの?」というような顔でのり子を斜めに見ているだけだった。
やっぱり。
この人たちは自分がしたくないから、何も反撃できそうもない人にそれをやらせようと思ってのり子を他薦したのだった。
その話し合いは、つまりながらあともどりしながら、何とか終わった。
その後、皆さんに連絡事項をのり子が発表した時、工藤さん達は話をしていてのり子の話を聞こうとはしなかった。
それからものり子は議長としての役割をしていったが、クラスの中で影響力が強い工藤さん達たちには何も助けてもらうことはなかった。
高校の授業はどの教科も初回は先生の雑談で終わっていた。
「高校ってそういうものなんだ」
のり子はここで油断してしまった。
大好きな数学の初日がやってきた。
中学の時は体格の良い朗らかな先生で、のりこはその先生が大好きだった。
だからのり子は数学が大好きになった。
それは高校も続くだろうと思っていた。
高校に入って初めての数学の時間が来た。
眼鏡をかけた小柄な細めの髭が濃い先生だった。
今までの教科の先生は、自己紹介をしたり人生観を語られていた。
しかし、その先生は違っていた。
「はい、では授業を始めます。」と自己紹介もなく言われ、
いきなり黒板に数式をバーッと書き出し早口で説明をし出した。
のり子達は慌ててその数式をノートに写し始めた。先生の説明はもう頭の中で素通りしていた。
とにかく早く書き写さなければいけない。
先生が黒板に半分くらい書いたところでこちらを振り向いた。
必死にノートに写している生徒達を見てニヤリとした。
長くなりましたので、続きは次回にいたします。
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~女子高デビュー~
未来を知るためにネガティブな過去を洗い出す
※今回は、こちらのnoteの続きです。
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