1403
※note毎日連続投稿1414日をコミット中1403日目。
※音声・文章、どちらでも楽しめます。




おはようございます。
山田ゆりです。



今回は
人の話を鵜吞みにして痛い目にあった（妄想の世界）
をお伝えいたします。





「たかが事務の存在で何を言う！」


それまで温厚だった社長は
机の上にあった厚さ3㎝はあるファイルを持ち上げ、強く机にぶつけた。

のり子は自分がそれで叩かれているような気がして思わず背中を丸めた。


「私がたかが事務係が言ったことに対して、はいそうですかと従えばいいのか！」

社長の顔は真っ赤になりプルプル左右に揺れていて、
地肌が見える頭からは湯気が上がってきそうなほどに怒りは頂点に達していた。
そして

「もういい！終わりだ終わり！」
と一方的に社長室から出る羽目になった。


のり子は社長にお辞儀をして社長室を出た。

薄いガラスの扉一枚で事務所だったから
社長の怒鳴り声は事務所に筒抜けだった。

事務所の皆さんはのり子と目が合わないようにしてくれていた。



なんでこうなったのか。
自分のどこが悪かったのか。
僅か30分位前の事を振り返ってみた。




30分くらい前に社長の一番のお気に入りの男性社員が社長室をノックした。

そしてその人が社長室から出て行ってすぐにのり子の内線が鳴った。

のり子は社長室をノックした。

社長は目じりに何本ものしわを寄せながら嬉しくてたまらないというような顔をしていた。


聞くと、先ほどの彼が結婚することになり
まずは一番にその報告に見えたそうだ。

自分が目をかけてきた従業員が世帯主として新たな生活を始める。

こんなうれしいことは無い。
そのお気持ちは手に取るように分かる。


社長はのり子に言った。


「わが社には今まで結婚のお祝いの規程がないからその都度、
支給したりしなかったりだった。
今回、結婚祝いの規程を作ろうと思う。」
社内規程の書類作成はのり子の仕事だった。



社長は斜め上を見上げながらおっしゃった。

「結婚祝い金を、男性社員の場合は５万円、女性社員の場合は３万円とする」


その言葉にのり子はカチンときた。
結婚祝いに男女差があるなんて…。

のり子は
その気持ちを社長にお伝えして良いだろうかと一瞬迷った。


しかし、社長は常々
「人はイエスマンではいけない。
相手が自分より上の人でも
自分がこうだと思ったことははっきり言うようでなければいけない」
とおっしゃっている。

のり子はそのことを思い出し、恐る恐る社長に進言した。


「結婚祝い金に男女差を付けるのは…」
控えめにそこまで言ったら
社長はのり子の言葉を止めるがごとく突然怒り出した。

そして冒頭の「たかが事務の存在で」の場面になったのだ。



社長は怒り出すとしばらくはその熱は冷めない。
突然、やかんが沸点に到達し、ふたをカタカタ揺らしながらその煮えくり返ったお湯は冷めずにいる。


イエスマンではいけない。
自分の意見をはっきり言う人がいい。
社長のこのお言葉を鵜吞みにしていたのり子は落胆した。


この言葉は「たかか事務係」には関係のないことなのだとのり子は分かった。


のり子はお人よしだから
人をすぐに良い方に勘違いする癖がある。
そして、相手がおっしゃった美辞麗句を簡単に鵜吞みにしてしまう。


のり子の仕事は社長直結の仕事だ。
しかし、その日から、
社長からＡ上司に話が行き、Ａ上司からのり子へ、
そして、のり子からＡ上司へ行きＡ上司から社長へいくという風に変わった。


のり子はいつも社長直結の仕事をしていた。
依頼されたらすぐに仕事をしていた。
スピードと誠実性を高く買われていると思っている。
だから、間にＡ上司を挟むことによって
すぐ完結することでも、Ａ上司が忙しいとすぐには社長に行かず、その返事をまっていると日をまたいでしまうことも出てきた。


とにかく社長はのり子を徹底的に避けた。
これはパワハラとしか言いようがない。



この状態はその後、２年続いた。
耐えたのり子もすごいが、
人を恨み続ける社長の執念には驚くべきところがある。


人の話を鵜吞みにしてはいけない。

口では綺麗なことを言っても
腹の底では何を考えているか分からない人はたくさんいる。



軽々しく人を信じてはいけない。

人は本来、善人なのだと思っている世間知らずののり子には良い経験になった。



そして、私は絶対、この人のようにはならない。
そうのり子は自分に誓った。





今回は
人の話を鵜吞みにして痛い目にあった（妄想の世界）
をお伝えいたしました。

本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。　

ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。

山田ゆりでした。



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