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課題の分離と共同の課題(ショートショート)【音声と文章】

山田ゆり
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アヤカと母親は名前を呼ばれて診察室へ入った。

内科医はチラリとこちらを見たがすぐにPCのカルテ画像を見た。

「特にどこも悪いところはありませんね。」

「先生、それではアヤカはどうしたら学校に行こうと思えるでしょうか。私はそれが心配で夜も眠られません。」

「う~ん。学校に行くか行かないかを決めるのはお嬢さんです。
学校に行ってほしいというのはお母さんの課題であり、
学校に行くかどうかはお嬢さんの課題なのです。
だから、お母さんは気にする必要はないのです。」


銀縁の眼鏡の医師は相変わらずPCを見ながら話をした。

それで診断は終わった。


アヤカが学校に行かないのはアヤカの課題であり親の課題ではない。
だから親はそのことに一喜一憂する必要はない。
先生はそうおっしゃっていた。


学校に行ってほしいという親の課題と
学校に行くというアヤカの課題。

アヤカにはアヤカなりの考えがある。
だから親は心配してもそれは意味のないことだと先生はおっしゃった。
少しは気持ちが楽になったような気がするが
それでもモヤモヤは晴れなかった。

精神安定剤と胃薬を処方されて病院を後にした。





ある日、別の病院へ行ってみた。
40代くらいの若い医師は首に聴診器をぶら下げ、
問診の際は身体をまっすぐこちらに向けて話を聞いてくれた。



そして、
アヤカが学校に行ってほしいというのは親の課題であり、
学校に行くかどうかはアヤカの課題だから、
親は過度に心配する必要はないと言われた。

ここでも親の課題とアヤカの課題を切り分けられた。
あぁ、この先生も同じかと少し落胆した。

しかし、
「それではどうしたらいいのかを一緒に考えてみましょう。」
と先生は優しいまなざしで話された。




その後、何度もその先生と会い、
どうすれば気持ちが楽になるかを話し合った。



数か月後、アヤカは学校に行けるようになり
桜の花びらが舞い散る季節に、友達と一緒に卒業することができた。






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課題の分離と共同の課題(ショートショート)
#66日ライラン

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山田ゆり
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