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【感想】上流階級 富久丸百貨店外商部

太客相手にどれだけ買わせるかを日々会議し目標達成を競うのが外商の仕事かと思っていた。
江戸時代から続く高級小売商の越後屋のソレ…
成金相手に手を揉み揉み近づく人たち。

だが違っていた。
才覚がなければ出来ない仕事で、小売でなくサービス業だった。

なんてひどい勘違いをしてたんだろ。

確かに百貨店は楽しい。
ワクワクして目移りして
気分が上がる。

外商の様子をテレビでみた時
「特別なお客様」にアレを買わせよう、コレを買わせようとしている風に見えた。
えげつないと思った。

でも違うのだ。
あの人達は信用とサービスを売っていたのだ。


以前、雑誌で誰かが言った。
女性作家さんだったかもしれない。

彼女曰く
「百貨店で高級カバンは買えないけど、大根なら買える。私は百貨店で大根を買うのが好き」

それを読んで
当時はこれだ!と思ったっけ。
忘れてた。

私も百貨店で大根を買おう!
そう思った。

なのに外商のあの番組を見て
すっかり興ざめしたのだった。


百貨店には特別感があるのに。
ちょっと高い大根には
間違いないという信用もあるのに。

そう。価格の差は【信用】

この本には別次元の世界があった。

上流階級にはなれないし
成金にもなりたくもないけど
せめて品格だけは持ちたいと思わせた。

本に登場するお客は
単なるわがままなお金持ちではない。

わがままにそれなりの対価を払う
財力と知識と教養があった。

変な馴れ合いもしない。
長年尽くす家族同然の外商も
キチンと線引きする。
互いに良い付き合いをする為だと知っている。

デキル外商もヘコヘコするだけの人間ではない。
必要な時は毅然とした振る舞いをする。


この本はすっかり外商の見る目を変えてくれた。
新しい世界を教えてもらった。

読了感はディズニーのお姫様アニメや英国貴族の物語を見ている気分に近い。


高価な物は無理だが
たまには百貨店で買い物するゆとりを持とうと思う。
それこそ大根。
いや、もやしでもいいよ。


精神性の高い登場人物たちに
とても影響を受けたことは間違いない。

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