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【息子へ向けて】棋書で振り返る将棋倶楽部24高段タブまでの道のり

今日はがっつり将棋記事を書きたいと思います。

最近、小1の息子が将棋のルールを覚えました。早速、放課後の学童で、友達と将棋を指している様子です。将棋好きの私からすると、非常に嬉しい。そして、頻繁に私に向かって「将棋やろうー」と言ってきます。どうやら友達に負けて悔しいみたいなんですね。そこで、「よしきた!」と引き受ける。

息子はまだ「駒の動かし方を覚えた」というだけなので、本格的な将棋にはなりません。私の方は、玉と金が1枚だけでも勝ってしまいます。すると聞かれるんですね、「将棋ってどうやったら強くなるの?」って。

それを人に聞いているうちは強くなれないよ、という本心をぐっとこらえて、「それはね、棋譜並べをして、詰将棋をして、ネット将棋をして、感想戦をして・・・」と言っているうちに、息子はもう興味を失って、ポケモンの絵とか描いています。私としては、なんだか物足りないんですが、まぁこれが一般的な小学生でしょう。要するにまだ、”本当のスイッチ”が入っていないわけです。

でもいつか彼も本当に将棋と向き合う時が来るかもしれない。単なるレジャーの一つではなく、心血を注ぐ対象になるかもしれない。この記事は彼に”本当のスイッチ”が入った時のために書きます。

棋書で振り返る父親の将棋史


R7.3.1時点。今使っている24のアカウント
念願の最高5段を達成したのはつい最近。

私が本格的に将棋を始めたのは小学5年生の時です。ですので、今年で将棋歴24年ということになります。その時代を大きく分けると、

❶小中の独学時代
❷高校のネット将棋時代
❸大学将棋部時代
❹社会人時代

の4つになります。

何をして、何を読んで強くなってきたのか。何が不要で何が不足していたと感じているか、これから振り返ってみたいと思います。

❶小中の独学時代(初心者から1級まで)

初心者から初段手前まで何をやったか。

①初めての棋書

駒の動かし方を覚えてから最初の目標になったのは祖父でした。祖父はレジャー勢としては、かなり強かった。何回やっても勝てない。やがて、勝つためには、<ただ単に回数をこなして対局しているだけではダメだ>と悟るようになります。まずこれが大きな気付き。何かお手本のようなものはないか、と探すようになりました。たどり着いたのが、祖父の家にあった古びた「将棋入門」という本でした。

今はもうアマゾンでも売っていません。正式なタイトルもわからない。けれど学んだことは鮮明に覚えています。それは、「棒銀戦法」です。時代が変わっても、将棋は、棒銀を覚えることからだと信じています(笑)

銀をぐいぐい出していく。一つでも相手が受け間違えば、一気に優勢になる。こんなに初心者向けの戦法はありません。将棋を指す、とは何らかの戦法を採用すること、です。<駒の動かし方を知っているだけ>なのと<棒銀戦法で戦う>では、将棋レベルに雲泥の差があります。息子は、まずここを超えないといけない。というか、すべての初心者はここに向かう必要があります。漫然と駒を動かすところから、戦法を採用するところまで。

棒銀戦法の何が良いか、というと、相手がどんな駒組や戦法を使おうが、こちらはお構いなしに棒銀を採用できる点です。例えば、角換わり、矢倉、なんていう戦法もありますが、これらは相手が、いいよ!角換わり受けて立つよ、という了解がないと成立しない戦法なんですね。ところが棒銀はそんな了解は必要ない。オラオラオラ、と銀を突進させていける破壊力抜群の爽快戦法なんです。

振り飛車相手に棒銀

初心者用の棋書には必ず棒銀の紹介があります。まずは、棒銀をマスターして、初心者から抜け出すことです。

②名著「羽生の頭脳」との出会い

将棋好きのバイブルと言えばこれだと思います。「羽生の頭脳」。言わずと知れた大棋士の羽生善治様の棋書です。

ほぼあらゆる戦法の定跡を網羅したシリーズ物で、この内容をすべて覚えられれば、高段者にも勝てる、と信じられるシロモノです。定跡研究の奥の深さ、将棋の繊細さに気付かされる、本当になくてはならない本だと思います。例えば、金や銀の位置が一路違うだけで全く違う結論になる、とか、先手と後手でうまくいく指し方とそうでない指し方がある、などです。初心者のうちは気にしたこともなかった序盤の些細な差が、勝敗に直結することの怖さ、楽しさを肌で感じられるようになった時、<初段>という文字が見えてきます。ここまではかなり長い道のりになります。ですが、このシリーズと終盤の特訓さえあれば、初段までは他には何もいらないでしょう。絶対に通るべき棋書です。

レジャーから離れた<本当の将棋>を教えてくれる本だと思います。これを読む情熱がなければ、将棋は強くなりません。

1992年版はシリーズ10冊でしたが、2010年度文庫版はそれを5冊に編集しているようですね。私は、1992年版でした。

③終盤は結局、詰将棋だ!

将棋は、終盤が肝心です。詰将棋はパズル感覚でサクサクできるので、是非継続的にやってほしい。ここでも名著があります。

これも新版になっていますが、めちゃくちゃやりました。知らないうちに強くなっている魔法の本です。超絶おすすめ。初段までは5手詰めで十分すぎます。超手数ものをやっても意味がない。これだけでOKです。

❷高校のネット将棋時代(1級~二段)

①将棋倶楽部24との出会い

高校時代は、ネット将棋を良くやりました。そして、ここでも運命的な出会いがありました。

それが、将棋倶楽部24!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

今やネット将棋と言えば、将棋ウォーズなのでしょうが、一昔前は「ニーヨン」でした。このネット道場は、とにかく強いことが有名で、当時はプロ棋士もゴロゴロ混じって、指していた。ちなみに、私が五段だといったのも、ここでの段位です。この24で五段以上になる、つまり高段者入りする、というのが、当時は一種のステータスでした。(例えば、観戦者が一定数をこえるとチャット制限がかかるのですが、五段以上は”解説者”という枠でチャット制限がかからない、など特典があったのです。懐かしいぁ!)

さて、私が初めてここで指すと、それはもう、勝てない勝てない!あり得ない程負けました。勝てなさ過ぎて、「お前ら絶対過少申告だろ!」と叫んでいた。だって、6級とかに平気でボコられるんですよ?こっちはそろそろ初段だろう、なんて思っているのに。まぁそれもそのはず、当時24と言えば、鬼の住処だったんです。リアルな町道場の段位とはものすごい乖離が生じていました。

現在の目安です。昔はもっとひどかった。
24の段位は、正式に日本将棋連盟の段位として承認されます。

まぁとにかく、高校時代はここで指しまくった。発狂するくらい負けたけど、そういう経験をしてもまだ将棋をやめなかったのは、本当に将棋というゲームが好きだったからなんだろうと思います。将棋は負けるものです。負けて負けて、その上まだ負けて、さらに負ける。強くなる道のりはそういうものです。でも、その負けの中にも面白さ、気付き、反省がある。いわば、強くなるためのヒントが無数にある。そうやって負けに対して謙虚に向きあえるか。それは将棋に対する情熱だと言い換えられると思います。

②「終盤の鬼」と出会う

ネット将棋で勝てなさ過ぎて、彷徨っているとき、救いの棋書に出会います。それが、「終盤の鬼」。

”手抜き”という終盤の原理原則を教えてくれる、最高の棋書でした。これは、本当に強くなる。いわば、終盤の基本的な考え方を徹底的に鍛えてもらえる。初段を抜け出すのに最高の1冊です。安いし、絶対読むことをお勧めします。

③棋譜並べも並行する

この時代、戦型は固定していませんでした。特定の戦型の定跡本は読んでいません。気になれば、羽生の頭脳を読み返すくらい。その代わり、棋譜並べ、を導入しました。

とにかく羽生信者だった私は、羽生善治の棋譜ばかり並べました。居飛車も振り飛車も関係ない。羽生善治の将棋を並べていた。

お世話になったのは、これ。

羽生vs森内、といえば、当時のゴールデンカード。(今でも結構いいカードだよね)

100局収録されていて、それぞれの対局の勝者が棋譜解説をしている。この解説には、その手の選択に至った思考回路まで書いてあって、非常に面白い。

これを夢中になって並べました。まだPCの将棋ソフトもなかったので、パチパチと薄い将棋盤の上で駒を動かしていました。夢中になりすぎて、気づいたら深夜、なんてこともしばしば。本当に思い出深い一冊です。

なんだかんだで高校3年生の時には、24で二段まで到達していました。

❸大学将棋部時代(二段~四段)

まぁここが一番本気で将棋と向き合った時代です。大学将棋というのは、本当に特殊な世界で、異常な熱気がありました。強い人に揉まれながら、どんどんいろんなものを吸収していきました。

特に、以下を意識しました。

・終盤を徹底的に鍛えた
・戦法のより細かい変化を研究した

②終盤について

将棋は終盤です。将棋の強さとは、つまるところ、終盤の強さです。

一番棋力向上に貢献したと思われるのがこれ。

これは、プロの実戦を題材とした棋書で、最難関の終盤書だと思います。有段者が高段者になるための棋書だと言えます。時間をかけてじっくりと。ここまでくれば、将棋が強い、と言っても一般的にはウソでないはず。

補強するものとしてはこれ。終盤術シリーズ。でもやぱり↑の本がメインです。

③戦型の固定を超えて

大学将棋レベルになると、かなり突っ込んだ序盤研究が必要になります。矢倉は矢倉でも、この形、とか。角換わり腰掛銀のあの変化、とか。かなりピンポイントになります。つまり、戦型の固定からもう一歩突っ込んで、<この戦型のこの変化を選択する>というような感覚になってきます。

例えば、一口に四間飛車対抗型といっても後手44銀型なのか、54銀型なのかで全く異なる将棋になります。こういう詳細を詰めていく作業になります。ここまでくると本だけでは間に合わなくなって、部員同士の研究会とか将棋ソフトとかの利用が必要になります。

あくまでイメージですが、

こういった本(ちなみにめっちゃ良書)でおおまかな変化を調べて、あとは仲間内で検討したり、実際に対局して相手の対策を見てみたり、と試行錯誤する必要があります。

④大会に出て学ぶ

大学生は暇なので、将棋の大会にもたくさん出ました。やっぱり大会に出ると一皮むけるというか、強くなった実感が得られます。ネット将棋では得られない何かがあります。

こんな貴重な体験も増えます。
※当時の大学将棋界で一番強い人と対局した感想記です。

❹社会人時代(四段~五段)

圧倒的に将棋に使える時間が減りますが、ネット将棋は続けました。そして今も続けています。疲れているときは、観戦だけ、なんていう日もたくさん。

大学時代に比べて将棋ソフトの性能が格段に上がったので、序盤研究は、本ではなくソフト一本になりました。

でも終盤はやっぱり本ですね。最近出会った良書を2冊紹介。

※これ自力で全部やれば高段者になれます。それくらい難しくてやり応え抜群。

それからもう一冊。

界隈では有名本。これもめちゃムズイ。終盤力がゴリラになれます。

気が付けば五段

気が付けば、将棋歴24年でした。楽しかった。将棋に打ち込んできて、幸せでした。これからも将棋を楽しみたいと思っています。


★大事なこと

社会人になってから特に感じるのですが、強くなるうえで大事なのは、将棋に飽きないこと、ですね。どこまでいっても上には上がいます。それを楽しむメンタリティこそ、将棋の本質なのだろうと思っています。

負ける→改善点を見つける→努力→試行錯誤→実戦→勝つ→負ける

この流れに飽きないかどうか。それはまさしく将棋というゲームに魅力を感じ続けられるかどうか、にかかっています。

将棋における才能は、読みが早いとか、記憶力が良い、とかではありません。ずっと将棋を好きでいられるかどうか、だと思います。

将棋が好きな人ほど強い、将棋に打ち込んだ人ほど強い、ただそれだけです。さんざん本を紹介しましたが、実は、どの本を読もうが、どの棋譜を並べようが、そんなことはたいしたことではないんです。どれだけ夢中になったか、それだけです。

私は、20年以上、波はあれど、結構夢中でやってきました。それでもまだまだです。もっと夢中の人がいて、もっともっと本気の人がいます。どこまでいっても上には上がいる。

これから将棋に本気向き合う人には、是非、安心して夢中になってほしいと思います。深いですよ、このゲームは、この世界は。そして、最高にエキサイティングです。

いつか、息子と本格的な将棋がしたいです!!(笑)


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