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肩こりに効くのは針灸か? マッサージか?

はじめに
 一日の仕事がおわると、つい肩に手がいきませんか?
 私の場合、ほぼ毎日のルーティンになっています。
 鍼灸師にとって肩こり改善は専門分野ですが、自分のこととなるとままなりません。なにしろ、自分の背中のツボには手が届かないですから(笑)

 とは言え、本当に肩こりがひどいときは針灸かマッサージの治療を受けるのがおすすめです。すると、今度は針灸とマッサージのどちらを受けるべきかという問題があります。

 そういった点を踏まえ、肩こりについての説明や、針灸とマッサージの違い、どちらを選ぶべきかについて共有したいと思います。
 この記事が、肩こりの改善を目指す方が、針灸かマッサージを選ぶ際の参考になれば幸いです。


肩こりとは何か?

 いきなりですが、「肩こり」という病名は日本の保険制度上ありません。
 心臓や脳、内臓などの病気の他、外傷や筋肉や腱の損傷などでも、首や肩まわりに不快な症状がでることがあります。
 そうした医師から診断がつくような病気のケースを除いて、首や肩まわりの痛みや重苦しさを一般的に肩こりと呼んでいます。

 主な原因としては、もともとの姿勢の悪さ、長時間の同じ姿勢、目の使い過ぎなどがあります。
 こうしたことによって肩や首周りの筋肉に負荷がかかります。そして、筋肉の緊張が引き起こされ、血行が悪くなります。その結果、首や肩のあたりに痛みや不快感を感じるようになります。
 長い時間パソコンやスマホを見た後に肩がこるのは、誰しも経験したことがあるのではないでしょうか。
 また、ストレスや精神的な緊張も、交感神経を刺激し、肩周りの筋肉が過剰に収縮、緊張する原因となります。

 厚生労働省が行った「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」によれば、病気やけが等による自覚症状のうち、肩こりは腰痛とならんでトップ3入りをはたしています。しかも、この傾向はここ数年変わりません。
 こうなると、肩こりはもはや日本の国民病といってもいいでしょう。

 肩こりの治療のかなめは、いかにして首や肩まわりの筋肉の緊張を解くかにあります。
 この点について、針灸とマッサージにはそれぞれ一長一短があります。私の施術上の経験も踏まえて、それらを説明させていただきます。

針灸の長所と短所

針灸の長所

 比較的に長い治療効果を期待できます。
 針の刺激は中枢神経を介して体の他の部位に影響したり、筋肉にダイレクトに働きかけたりと様々に効果を発揮します。
 首や肩周囲の筋肉の緊張をほぐし、老廃物や発痛物質を血液とともに流し去ることで、より根本的な改善をめざせるのです。
 よほどひどい肩こりでない限り、一度の治療で2週間ほどは効果を維持できるようです。

針灸の欠点

 まず、針という人体にとっての異物を使用するために、恐怖感や不快感をゼロにはできません。幼い頃に無理やり予防接種などの注射をされたことのある人なら、なおさらでしょう。お灸も火傷のリスクをゼロにはできません。
 そして、病院で処方されるお薬の効き方に個人差があるように、針灸の効果にも個人差があります。
 これは、患者様によって薬に対する感受性や症状の重さなど違うためですが、針灸でも同じことが言えます。
 具体的には、針灸治療をする前の肩こりの不快感を「10」とすると、1回の治療で「0」や「1」に改善する人もいれば、そこまで行くのに2回か3回以上の治療が必要な人もいます。

マッサージの利点と欠点

マッサージの利点

 マッサージの一番の利点は、直接もみほぐされることにより、血流改善や筋肉の緊張緩和がすぐに感じられることです。
 また、手技による直接的な圧迫はリラクゼーション効果を高め、患者様によっては施術を受けている最中に寝入ってしまうこともしばしばです。
 さらに、針にくらべて比較的に恐怖感なく受け入れられることもメリットの一つです。

マッサージの欠点

 温泉などの入浴後にマッサージを受けるのは至福の時間です。このようにマッサージからは高いリラクゼーション効果を得られますが、根本的な解決にはならず、肩こりが再発しやすい傾向にあります。

年齢別の検討

20代~30代

 マッサージの方が適していることが多いです。
 この年代は若くて体力も旺盛なので、仕事やデスクワークによる肩こりも一時的なものが多く、たいていは筋肉の緊張を解消するだけで十分です。
 こうした一時的な肩こりには、即効性のあるマッサージの方が適しているかもしれません。
 ただし、慢性的な肩こりがある場合や、仕事やスポーツなどによる筋肉疲労が蓄積している場合には、針灸でしっかり治療を行う方が効果的でしょう。

40代~50代

 針灸の方が有効な場合が増えてきます。
 この年代になると、姿勢の悪さや生活習慣、ストレスが積み重なり、慢性的な肩こりが増える傾向にあります。
 根本的な部分にアプローチできる針灸の方が、より適したケースが増えてきます。
 また、マッサージがリラクゼーション目的であるならば、長期的な肩こり対策には針灸の併用がおすすめです。

60代以上

 針灸が優れているケースがより多くなってきます。
 年齢とともに筋肉や関節の柔軟性が失われ、肩こりもより頑固なものになってきます。
 針灸の全身的なバランス調整と血流改善効果が、身体の深層にアプローチできるため、より長期的な効果が期待されます。
 マッサージも適用なのですが、体の柔軟性や筋力、皮膚感覚などの低下に対する配慮が必要です。女性では骨粗鬆症のリスクがあがることなども考えると、人体を直接圧迫する手技では逆にダメージを与える可能性があります。そのため、針灸の方がより安全かもしれません。

まとめ

 20代~30代の肩こりなら、マッサージだけで十分な満足が得られそうです。症状が重いなら針灸も併用するといいでしょう。
 40代~50代になると、針灸がおすすめになってきます。マッサージがお好きなら、より長期的・根本的な効果をねらって針灸との併用を検討してもよいかもしれません。
 60代以上では、針灸の方が適しているかもしれません。マッサージを併用するなら、優しい手技を選ぶとよいでしょう。

 いずれのケースでも、専門家に相談し、症状や体質に合わせた最適な治療法を選ぶことが大切です。

 なお、針灸やマッサージの効果には個人差があります。また、人それぞれ体質も異なりますので、この記事でお伝えした内容が全ての方に当てはまらない場合もあります。何卒ご理解いただけますと幸いです。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

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ツキクマ
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