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別れの乗り越え方

「歴史が動きました!」

 ニュースでたまに聞くこの言葉。
 たとえば、ベルリンの壁がなくなったとき、スポーツの試合で大記録が出たとき。

 でも、個人のレベルでだって、歴史は動いていると思うのです。いわゆる個人史ですね。
 個人史のなかでも、人との別れはいくつになっても慣れません。

 先日、長年お世話になった整形外科の先生が病院を退職されました。定年退職なので仕方ないのですが、胸にぽっかりと穴があいたようです。
 なにしろ、20年間もずっと診てもらってきた先生だったのですから。

 まるで、自分の中から大事なピースがひとつ抜けおちてしまったかのようです。

 最後の診察でその先生に「長い間お世話になり、ありがとうございました」とお礼を言ったとき、こう思いました。

(ああ、先生にとって定年退職というのは大きな節目だろうな。でも、自分にとっても歴史が動いたような大事件だ)

 明日からは、長年お世話になった先生なしの生活が始まります。

 寂しいなあ。

 しかし、これもやがてはいつもの日常に変わっていくのでしょう。

 後任の先生には、カルテを通じて引き継ぎがされるでしょう。
 できることならば、新しい先生ともよい関係を築きたいものです。

 古いものが去る。
 代わりに新しいものがやってきたら、かつて築いたのと同じかそれ以上によいものを作っていく。

 これも別れの乗り越え方のひとつでしょう。

 春というのは、去る人、来る人が行き交う季節。

 お別れのあとには、どうか私にもあなたにも新しい素敵な出会いがありますように。

 最後まで目を通していただきありがとうございました。

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