【映画】悪意がすごい『ウォンカとチョコレート工場の始まり』を見る
今更どころではないのだが、まさかの100円でレンタルできたので『ウォンカとチョコレート工場の始まり』を見た。
なおこれが前作の『チャーリーとチョコレート工場』とはちょっと違う系譜の物語であることはレビューを見て知ってはいたので、その変化に関しては特に文句はない。
だが見終わった感想は、自分には色々合わない作品だったなという感じだ。
そんなわけでこの映画が大好きな方は、これ以降の文章は読まずにお引き取りいただいたほうがいいかもしれない。
自分は世間で大好評なゴジラマイナスワンも「なんだかなぁ」という感想を持った人間なので、多くの人とは感想が違ってしまうのだろう。
※なおネタバレもありますのでご了承ください。
【悪意に満ちた世界】
この映画、わりと最初から最後まで世界が悪意に満ちている。
始まりは主人公のウォンカがチョコレートを売り出すために街にやって来るところから始まるのだが、いきなり無一文になるし、宿屋で騙されて強制労働する羽目になる。
その後色々あって街でチョコレートを売ろうとするウォンカだが、ウォンカが作り出す世界一美味しいチョコレートが広まることを妨害するために、街のチョコレートカルテルの社長三人組と警察署長がウォンカの敵として立ちはだかることに。
そしてその妨害ぶりがもう普通に犯罪レベルなのだが、この映画はその悪意ある妨害描写が全体の8〜9割だと自分は感じた。
もちろんこういう悲惨な描写があることで、最後の大逆転で客はとても爽快な気分になるという手法はわかっているのだが、いかんせん気分の悪いシーンが多すぎる。
途中でミュージカルシーンが挟まったときは、「なんか良い話かも♪」と思える瞬間があったりもするが、その後にはまたすぐに悪意でひっくり返されるので、結局「なんだかなぁ」である。
(ウォンカ、もう他の街へ行こうぜ?)
なんだろう……自分は最近よくある「悪い人がいない世界」的な作品にどっぷり浸かっていたせいか、久々に感じるこの映画の凄まじい悪意の連続には非常に気が滅入ったのだ。
(『チャーリーとチョコレート工場』だって工場の悪意100%だっただろという話ではあるのだが、あれはそういう映画だから別に……)
まあとにかく、人間の悪意という意味でなかなかすごい映画なのである。
【魔法が使える強者】
そういえば主人公のウォンカだが、まさかの魔法が使える。
なんで使えるのかは映画を見てもよくわからなかったが、とにかく魔法のおかげで世界一美味しいチョコレートも一人で量産できるし、店も作れるのがウォンカである。
(なろう系定番のアイテムBOXみたいな四次元帽子まであるし…)
街にいる人達が魔法を使える描写などは存在しなかったので、少なくともこの街において「魔法」はウォンカしか使えないユニークスキルだと言える。
ちなみにこの映画のレビューを見ると、「ウォンカはあんな酷いことされてもめげなくて凄い!」みたいな意見があるのだが、「そりゃ魔法使えるからねぇ…」と思ってしまうのは自分の了見が浅いからなのだろうか。
そう、自分はウォンカから強者の余裕を感じているのだ。
……みたいな感じの強者感を。
敵から何をされようが、彼は彼だけが持つ『魔法』によって、常人には出来ない対処法で解決を図ることができる。
やはりこれは圧倒的な強みである。
そういう『余裕』があれば、人はめげないものなのだ。
……いやまてよ?
でもウォンカは終盤普通に諦めて、島流しされそうになってたか……?
(あと普通に死ぬ寸前の場面もあったような?)
うーむ、強いんだか弱いんだかよくわからないキャラクターである。
まあでも、ラストのアレは確実に社長三人の命は奪ったよね?
【翔んで埼玉2が良すぎた】
そもそもの話だが、この映画を見る前に、『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』を観ていたのが一番の問題だ。
この映画、ネタかと思いきやあまりにも良すぎたのである。
どのくらい良すぎたかというと、普段映画は2〜4倍速が普通な倍速厨の自分が、終始面白すぎて観る速度を1.5倍に抑えたくらいだ。
……いや、これは別の映画を使って作品を叩きたいとかそういうわけではなく、「翔んで埼玉2」というギャグ映画の後に、悪意満点の『ウォンカ〜』を見たのは確実に映画チョイスを間違えてしまったなということである。
埼玉に染まった頭をリフレッシュして、ウォンカを別の日に見ていたとしたら、確実に初見の感想は変わっていたことだろう。
タイミングって大事。
まあそんなわけで、辛いシーンも特に問題ない心に余裕のある状態の方は観てもいいんじゃないかなと思う。
この映画は「凄いチョコを作れる魔法使いが妨害を受けつつも権力者に勝利する話 (〜ミュージカルを添えて〜)」みたいな感じである。
だが前作のような奇妙な世界観を存分に楽しむのが目的なのであれば、この映画にその要素を期待しないほうがいいと思う。
そしてなにより、映画というものは視聴するときの自分の状況も大事なんだなという学びを得た。
今後は気にしていかねば。
なお『翔んで埼玉2』には、『チャーリーとチョコレート工場(前作)』でのウンパルンパのシーンをオマージュした場面がある。
というかそれを見たからこそ、ちょうど安くなっていた『ウォンカとチョコレート工場の始まり』を速攻でレンタルしたのだ。
だが残念なことに、『ウォンカ〜』ではウンパルンパが単体での登場のため、あの奇妙で魅力的なシーンは存在しないのだった。
(今思えばそれも悲しかったな…)
しかしなんだか久々に映画をレンタルした気がするが、今や映画館で映画を観たら料金は2000円くらいだというし、自分は今後もレンタル勢なんだろうなと思う。
部屋でのんびり自由な姿勢で、自由な速度で、気に入ったシーンを見直したりもできて、料金も安いレンタル映画。
やはり自分はこのスタイルが性に合っているようだ。
早く来い、映画公開と同時にオンラインレンタルを開始する時代……!!